2022-23ラ・リーガベストイレブン MF&FW編  GK&DF編はこちら>>

今シーズンのラ・リーガは、昨夏、1億5000万ユーロ(約225億円)以上の資金を投じて大型補強を敢行したバルセロナが4季ぶり、通算27回目の優勝を成し遂げた。そこで今季を振り返り、過去にスペイン紙ASやMARCA、Goal.comに所属、現在は米スポーツサイトThe Athleticで執筆するスペイン人記者・マリオ・コルテガナ氏にリーガのベストイレブンを選出してもらった。

まずはMF&FWの6人から。

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リーガ得点王らと並び久保建英も選出 スペイン人記者が選んだ今...の画像はこちら >>

スペイン人記者が選んだ、今季ラ・リーガのベストイレブン

【セルヒオ・ブスケツの後継者】

MF/マルティン・スビメンディ(レアル・ソシエダ/24歳/スペイン)

 スビメンディは中盤でタクトを振るい多くの人々を魅了し、チームを来季のチャンピオンズリーグ出場へと導いた。

 チームで2番目にリーガの出場時間が長く、1得点3アシストを記録したが、中盤の底でプレーしてチームに安心感を与えるスビメンディにとって、目に見えるデータはあまり重要なものではない。

 パス成功数やリカバリー数だけでなく、空中戦にも優れ、攻守に渡り貢献度の高い選手になっていた。

 スビエタ(※レアル・ソシエダの練習場)育ちのスビメンディが、さまざまなクラブからひっきりなしに興味を持たれているのは全く驚くことではない。

 今季終了後に退団するセルヒオ・ブスケツの後釜として、以前よりバルセロナのシャビ・エルナンデス監督に気に入られているが、最近ブスケツ本人からも後継者候補のひとりに指名され、さらにアーセナルからも狙われている。しかし昨年、2027年まで契約延長し、契約解除金が6000万ユーロ(約90億円)と高額に設定されているため、獲得は容易にはいかないだろう。

 今季好調だったチームでのパフォーマンスが高く評価され、今年3月にスペイン代表に初招集された。その時は出番がなかったため、今月開催されるネーションズリーグ・ファイナルフォーが代表デビューに向けた新たなチャンスとなる。

MF/エドゥアルド・カマビンガ (レアル・マドリード/20歳/フランス)

 カマビンガのような選手をカテゴライズするのは難しいが、"オールラウンドプレーヤー"と表現したら一定の同意を得られるだろう。実際、リーガ2季目を迎えた今シーズン、そのことを改めて証明した。

 フェルラン・メンディが2度に渡って長期離脱したことで、左サイドバックとして10回ほどプレーしたが、その高い能力により素早く適応した。本人は中盤でプレーすることを望んでいるが、左サイドからピッチを広くカバーするそのマルチな才能で、最終的に昨季から倍近く出番を増やしていた。

 躍動感溢れるプレーや献身的な姿勢でカルロ・アンチェロッティ監督を助け、チームメイトとうまく連携し、パス成功数でリーガトップ30入りした。加入からわずか2年でチームにとって欠かせない選手へと成長し、サポーターやクラブから愛されており、すでに数カ月前に契約更新の話が持ち上がっていた。

久保建英はその才能がついに開花した】

MF/久保建英(レアル・ソシエダ/22歳/日本)

 久保は昨夏のレアル・ソシエダ加入以降、急成長を遂げ、今季のリーガで特に目覚ましい活躍を見せた選手のひとりとなった。ラ・レアルは3回目のトライでようやく久保との契約を実現させたが、今季の結果を見れば、なぜそこまで獲得にこだわったのかは容易に理解できる。

リーガ得点王らと並び久保建英も選出 スペイン人記者が選んだ今季ラ・リーガのベストイレブン【MF&FW編】

久保建英はスペイン人記者からも今季のベストイレブンに選ばれたphoto by Getty Images

 まるで適応期間が必要なかったかのように最初からレギュラーの座を掴むと、前線や右サイドで存在感を発揮し、最終的にリーガでチーム6番目に長い2452分出場した。その間、チーム得点王のアレクサンデル・セルロート(12得点)に次ぐ9ゴールを決めただけでなく、チーム3位タイの4アシストを記録。また、持ち味のひとつであるドリブルも鋭さを増し、幾度となくファールを誘発した。

 これらの成績はレアル・マドリードからの完全移籍を正当化するものとなったが、奇しくも先月、この古巣相手に初得点を挙げ、勝利の立役者のひとりになるという特別な夜を経験することになった。

 バルセロナを離れて何年も経つが、久保はラ・マシアで育った選手としてのエッセンスを持ち続けている。チームメイトとの連携やパスを出す時の判断力に優れ、献身的な姿勢でチームに貢献。

 ドリブルを多用するためボールを失うことも多いが、リスクを冒すだけの価値が十分ある。昨季まではゴールとアシストの両面で、アタッキングサードで違いを生み出すことがほとんどできていなかったが、その才能が今季ついに開花し始めた。

FW/アントワーヌ・グリーズマンアトレティコ・マドリード/32歳/フランス)

 アトレティコ・マドリードがシーズン序盤で低迷したのち、最終的に3位にまで迫った要因は、グリーズマンの圧巻のパフォーマンスに支えられたことが大きいだろう。

 序盤、バルセロナとの契約問題により出場時間に制限があったにもかかわらず、ディエゴ・シメオネ監督にリーガで2番目に多く起用された選手となり、15得点16アシストを記録。これはリーガの得点ランキングで4位、アシストランキングで1位という非常に立派なものだ。

 さらにペナルティーエリア外から4得点というのは、ガブリ・ベイガ(セルタ)、フェデリコ・バルベルデ(レアル・マドリード)と並びリーガトップ。さらに枠内シュート数は3位と、シュート精度の高さを大きく物語るものになっている。

 ピッチを縦横無尽に動き回り、ゲームメイクからフィニッシュワークまでの役割をこなし、リーガでトップレベルのプレーを披露したグリーズマンだったが、今季終了後、「自分のパフォーマンスには満足しているが、タイトルを獲得する必要がある」と現状に甘んじることなく来季を見据えていた。

【すべてのプレーを完璧にこなした】

FW/ヴィニシウス(レアル・マドリード/22歳/ブラジル)

 今季のリーガでゴールとアシストの合計が19と、先日退団したばかりのカリム・ベンゼマ(ゴールとアシストの合計22)を下回ったが、約150分ごとにゴールに絡み、チームの攻撃で最も違いを生み出す選手と評価された。

 ドリブル数(265回)、ドリブル成功数(112回)はリーガトップ。さらに被ファール数(122回)は欧州5大リーグ(スペイン、イングランド、イタリア、ドイツ、フランス)で最多と止めるのが非常に難しい存在になっていた。

 またヴィニシウスはボールをキープして長い距離を移動し、相手の守備を破壊できるその類稀な能力によって、チームの勝利に大きく貢献。さらに今季は連係面やゲームに対する理解度を高め、チームメイトのゴールチャンスをお膳立てし、リーガで2番目に多い9アシストを記録した。そして今後も改善の余地はあるが、シュートテクニックにも磨きがかかっていた。

 しかし今季のリーガは特に、ヴィニシウスに対する人種差別問題が人々の記憶に残ることになってしまった。

5月にメスタージャで行なわれたバレンシア戦は、一部のサポーターから差別的な発言を受け続けたヴィニシウスが抗議したことで中断され、世界中に波紋を呼んだ。この出来事はスペインサッカー界から悪しき習慣をなくすため、各機関が真剣に対策を講じるきっかけとなっている。

FW/ロベルト・レバンドフスキ (バルセロナ/34歳/ポーランド)

 昨季、センターフォワード(CF)に問題を抱えていたバルセロナだったが、あらゆる面で高い能力を備えたレバンドフスキが加入したことにより、再び攻撃の核を手にすることができた。

 シャビ監督の期待に瞬く間に応え、ショートパスでチームメイトと連係する必要がある時、ゴールを決めるためにペナルティーエリアに進入しなければならない時、そしてポストプレーで相手DFを引きつける必要がある時、そのすべてのプレーを完璧にこなし、世界有数のCFであることを証明した。

 その結果、スペイン初年度にかかわらず23ゴールを挙げ、ピチチ賞(リーガ得点王)に輝いた。それだけではなく、シュート数(112本)や枠内シュート数(58本)などでもリーガトップとなっていた。

 これらはレバンドフスキが生粋のストライカーであることを示すデータであるが、連係面でも高い能力を発揮した。その証拠にリーガで5番目に多い7アシストを記録し、スペインで今シーズン最も際立つ活躍を見せたFWとなった。