フィジカル面に問題を抱えた久保は、ラ・リーガ第35節バルセロナ戦でまたもやベンチスタートとなり、際立つ活躍はできず。今季も残り3 試合となった。

今回はクラブの地元紙『エル・ディアリオ・バスコ』で、レアル・ソシエダの番記者を務めるイケル・カスターニョ・カベージョ氏に、そんな久保の今季全体のパフォーマンスを採点してもらった。

【スーパーサブとして出場のバルセロナ戦】

 久保建英はシーズン終盤に差し掛かり控えに回ることが多くなっているが、それは激しい4大会を戦った、過酷なシーズンによって蓄積された消耗の表われだ。

久保建英の今季は「10点中7.5点」とレアル・ソシエダ番記者...の画像はこちら >>
 残念だが、久保がチームメイトとの違いを見せて"トップレベル"であると示した前半戦のような輝きを放つのは、シーズンを終えるまでないだろう。残りの試合で 、これ以上調子を上げられないと思われる。

 久保は2カ月前にシーズンを終えたかったはずだ。特にこのシーズン終盤は蓄積された疲労やケガの影響を受け、しばらくの間、主役の役割を演じられなくなっている。

 13日のバルセロナ戦は、下部組織育ちの久保にとって大きな意味があったが、直近10試合で6回目のベンチスタートとなった。

そのうち2試合はパリ・サンジェルマンとのチャンピオンズリーグ(CL)を考慮され、出番なく終わっている。

 イマノル・アルグアシル監督は攻撃的なDFジョアン・カンセロの背後を狙う目的で、久保を後半25分に投入した。スーパーサブとしての役割を担っていたが、その起用が正しかったことをすぐさま証明してみせた。

 久保はピッチに入るとすぐに、カンセロ相手に決定機を作り出す。右サイドからカットインして強烈な左足のシュートでファーサイドを狙い、同点に迫るが、惜しくもGKマルク=アンドレ・テア・シュテーゲンにキャッチされた。それ以降も悪くない動きを見せたが、カンセロを苦しめることはできなかった。

 かつてバルセロナでメソドロジー(メソッド部門)ディレクターを務め、久保が少年時代に加入した時にその動向を見守っていたジョアン・ビラ氏は、今回の対戦前、「バルサはタケに対して重大なミスを犯した」と久保が18歳になったタイミングで連れ戻さなかったことを非難し、そのすばらしい資質を賞賛した。

「タケは非常に優れた選手で、どんなシステムやプレースタイルでも順応できる。主にボールポゼッションで優位に立ち、攻撃的な特徴を持ちたいと思っている バルセロナ、マンチェスター・シティレアル・マドリードといったビッグクラブであってもだ。現在、すでにヨーロッパのいくつかのビッグクラブに関心を持たれており、レアル・マドリードでも完璧に自分の居場所を確保できるだろう。例えばブラヒム(・ディアス)やアルダ・ギュレルがいるが、タケもそこにいられるかもしれない。彼は間違いなくトップチームの一員になれる」

【10ゴールの大台には届きそうにない】

 久保の今季のパフォーマンスを総合的に評価すると、徐々に悪くなっていったのは明らかだ。シーズン半ばにアジアカップに参加したが、それは久保にとってもラ・レアル(レアル・ソシエダの愛称)にとっても、間違いなくプラスになっていない。

 ここ数試合のスタメン落ちは、フィジカル的な衰え、自信の喪失、ほかに好調な選手がいることを考えれば理解できる。久保からポジションを奪っているシェラルド・ベッカーはここ5試合で2ゴールを決めており、監督は自分らしさを取り戻せていない久保に警鐘を鳴らしていた。

 私の久保に対する今季の総合的な評価は、10点満点中7.5点だ。シーズン開幕から半ばまでのパフォーマンスは際立ち、多くの試合で決定的な働きをしていた。

 特にCLでの活躍は重要だった。久保はいい形で大会デビューを飾り、8試合中7試合に先発出場して563分プレーし(1試合平均70.38分)、得点こそなかったものの、ブライス・メンデスのゴールを演出し、欧州のビッグクラブから注目されていた。

 一方、アジアカップと重なったため国王杯での出番は少なく、ラ・リーガでは徐々に調子を落としていった。最初の2カ月間で5ゴールを決めた一方、10月から現在までわずか2ゴール。今季10ゴールの大台には届きそうにない。

 来季を見据えた場合、久保に対する私の見解は明確だ。彼はラ・レアルに残留するだろう。6000万ユーロ(約102億円)という契約解除金(※2月に契約延長したが、この金額は据え置き)の支払いに興味を示しているクラブはいくつかあるが、彼はラ・レアルでプレーを続け、来季も重要な役割を果たしてくれるはずだ。

 また、久保がパリ五輪に出場することをラ・レアルは望んでおらず、参加するかどうかは宙に浮いた状態にあるものの、今夏のプレシーズンはおそらく、キャリアで最も試合数の多いタフなシーズンを終えた自身のコンディションを取り戻すのに役立つだろう。得意のドリブルを武器にほかの選手と違うところを証明してきた選手なので、シーズン序盤のような調子を取り戻すことができれば 、必ず先発復帰できると私は確信している。

【来季もラ・レアルには久保が必要だ】

 現在、彼のポジション争いの主なライバルはベッカーだが、ふたりは異なるタイプの選手だ。久保はドリブルと突破力、ベッカーはスピードと得点力を武器にしている。久保は本調子になれば、レギュラーの座を問題なく取り戻すことができると思うが、我々が注目しなければならないのは、攻撃的な選手が夏に加入する可能性である。

 今季のセンターフォワード3人(カルロス・フェルナンデス、アンドレ・シウバ、ウマル・サディク)はうまく機能せず、ほとんどゴールを決めていない。

レンタルのアンドレ・シウバは今季終了後に所属元のライプツィヒに戻り、ほかのふたりは今夏レンタルに出される可能性がある。

 イマノルは獲得する選手次第で新たな システムに変更するかもしれず、それによって久保の重要度が増すこともあれば減少することもある。しかし、はっきりしているのは、久保はどんなシステムであろうともプレーでき、すぐに適応できる選手だという点だ。

 現時点では唯一、獲得候補としてセルタのノルウェー代表FWストランド・ラーセンの名前が挙がっている程度だ。

 以上が 、久保に対する私の最終的な結論である。彼は今季、自身の可能性を下回る結果で終わることになるだろうが、来季は再びチームの重要な選手のひとりとなり、多くのビッグクラブの注目を集め、サポーターは再び愛情のしるしとして彼の名前を歌い、叫ぶだろう。ラ・レアルには久保が必要だ。

 両者は美しい関係を築いており、3年連続でそれが維持されることが期待される。おそらくラ・レアルは再び3大会に出場するだろうが、来季はシーズン半ばに代表の大会が開催されることはない。そのため、久保は今季以上のパフォーマンスを発揮できるはずだ。
(髙橋智行●翻訳 translation by Takahashi Tomoyuki)