今週から夏の小倉開催がスタート。そのオープニングを飾る重賞は、サマー2000シリーズ第3戦のGIII小倉記念(8月13日/小倉・芝2000m)だ。

 過去10年の結果を振り返ってみると、ハンデ戦ということもあってか、1番人気は2勝、3着2回とやや苦戦傾向。その分、波乱となることが多く、3連単では高配当が何度となく生まれている。2020年には10番人気のアールスターが勝利し、2着に6番人気のサトノガーネット、3着に13番人気のアウトライアーズが入って、130万円超えの高額配当が飛び出している。

 そうした状況ゆえ、デイリー馬三郎の吉田順一記者は、昨年の勝ち馬で今年も上位人気が予想されるマリアエレーナ(牝5歳)に懐疑的な目を向ける。

「マリアエレーナにとっては連覇を目指す一戦となりますが、昨年は54kgだった斤量が今年は56.5kg。小柄な牝馬としては、酷量と言っていいでしょう。

 それに、前走のGIII鳴尾記念(6月3日/阪神・芝2000m)では、好位2番手を追走しながら、逃げて2着に粘ったフェーングロッテンを捕まえきれずに5着。そのレースぶりからして、正攻法で横綱相撲をしていい(結果が出る)タイプではなさそう。そうなると、人気を背負って同様のスタイルでレースを運びそうな今回も盤石とは言えません。

 そうしたことを踏まえると、前走よりもメンバーが緩和されるとはいえ、期待よりも不安のほうが大きいです」

 人気馬の死角が浮き彫りとなるなか、今週は台風の影響も心配される。馬場次第では一段と波乱ムードが増すが、吉田記者はその辺りについてはどう見ているのだろうか。

「週中に九州の西側を通過した台風6号の影響は思ったほどなく、レース当日については台風7号がどう影響するか、といったところ。

ただ、その状況は読みづらく、現状では思ったほどの雨量はないのではないかと踏んでいます。

 第3回開催ということもあって、例年以上に使用されていて、オール野芝の馬場は不ぞろいな面もありますが、好コンディションで迎えられると思います。芝自体の強さは、中京競馬場と同様、やってみないとわからない部分がありますが、野芝の根っこの部分と路盤の硬さからすれば、時計の出る軽い芝で施行されると判断していいでしょう」

 そんな馬場状態も加味して、好走が期待できるのはどんなタイプなのか。吉田記者はこんな見解を示す。

「馬場状態を考えると、やはり好位で立ち回りそうなマリアエレーナの出方がレースの行方を左右するポイントとなりそうですが、同馬が動ききれなかった時には、好枠発走からいい位置をとって、速い脚が使える馬が優勢と見ます。コーナー4つの競馬という点を踏まえても、逃げ&先行馬の粘り込みが"穴馬券"につながるのではないでしょうか」

 そこで、吉田記者は大逃げも期待できる馬を、その有力候補として挙げた。

小倉記念は荒れる。高配当を演出するのは、逃げ宣言の「大穴」と...の画像はこちら >>

小倉記念での一発が期待されるテーオーシリウス

「陣営が『ハナを主張して、自分の形に持ち込みたい』とコメントしているテーオーシリウス(牡5歳)が面白そうです。同馬がタメても伸びないことは、陣営も、騎乗経験のある鞍上の西村淳也騎手も重々承知しています。

 3戦2勝と相性のいい小倉・芝。適度に上がりがかかるような流れに持ち込んで、2番手以下のプレッシャーが少しでも甘くなれば、ひと踏ん張りがあってもよさそうです。

 持ち時計がないことを考慮すれば、ラップの推移はうまくやる必要がありますが、ハンデ55kgならこの馬の機動力を十分に生かせるはず。一発の可能性は大いにありそうです」

 吉田記者はもう1頭、気になる馬がいるという。

ゴールドエクリプス(牝4歳)です。逃げにこだわるテーオーシリウスとは違って、好位で運んでも結果が出ているのは心強い限り。速い時計勝負になった際には、面白い存在になると思います。

 良績があるのは全3勝を挙げている1800m戦ですが、時計の速い軽い馬場なら2000m戦でも持ち前のスピードが生きるはず。さらに、51kgという軽量ハンデを利する競馬ができれば、格上挑戦をする意義はありそうです」

 重賞初挑戦となった前走のGIIIマーメイドS(6月18日/阪神・芝2000m)でも、ハンデ51kgを生かして後方から追い込んで4着と善戦している。

「1週前追い切りも速いラップをあっさりとマークして、状態のよさは特筆もの。

直前まで陣営は、自己条件に出走するかどうか迷っていましたが、こちらに挑戦してきたということは、それだけ出来がいい証拠でしょう。楽しみです」

 夏の"荒れる"ハンデ戦。今年、高配当を演出するのはどの馬か。ここに挙げた2頭であってもおかしくない。