NPB新外国人選手の過去を紐解く(投手編)

◆新助っ人・野手編>>「バケモノと呼ばれるパワーの持ち主は?」

 2月からNPBの各球団はキャンプをスタートさせ、自主トレで調整してきた選手たちの仕上がり具合も徐々に報じられている。この時期に気になることのひとつが、今シーズンからNPBの舞台でプレーする「新助っ人」の存在だ。

 彼らの実力はいかほどのものか──。NPBでの実績がないぶん、未知なる部分に期待も大きく膨らむ。日本にやってくる彼らがアメリカでどんな活躍をしてきたのか、過去の成績や評価を振り返りながら新助っ人の能力を探る。

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2024年プロ野球「新助っ人」投手たちの実力は? 161キロ...の画像はこちら >>
 今シーズンから日本プロ野球でプレーする投手のうち、アンダーソン・エスピノーザ(右投/25歳)のオリックス・バファローズ入団はサプライズと言ってもいい。エスピノーザはプロ入り前からトップ・プロスペクトと目されていた。年齢は今年3月で26歳だ。

 10年前の夏、エスピノーザは180万ドルの契約金でボストン・レッドソックスに入団した。それまでのベネズエラ出身選手の最高額は、1998年にフランシスコ・ロドリゲスがアナハイム・エンゼルスに入団した際の90万ドルだった。ロドリゲスは奪三振(K)の多さから「K-ROD」と呼ばれ、歴代4位の通算437セーブを挙げた。2008年の62セーブは現在もシーズン最多記録だ。

 ロドリゲスもそうだったように、エスピノーザは先発投手として将来を嘱望されていた。『ベースボール・アメリカ』による開幕前のプロスペクト・ランキングでは、2016年が19位、2017年は21位に挙げられていた。

 どちらか言えば小柄な6フィート(約183cm)の身長と、当時レッドソックスに在籍していたことから、よく比較されたのはドミニカンのペドロ・マルティネスだ。1997年~2000年の4シーズンでサイ・ヤング賞を3度受賞した名選手で、2015年に殿堂入りしている。

 だが、エスピノーザは2度のトミージョン手術などにより、ブレイクできずにいる。2022年にシカゴ・カブスからメジャーデビューしたが、リリーフ7登板で防御率5.40に終わった。メジャーリーグで投げたのは、この年だけ。昨年はサンディエゴ・パドレスのAAAで131.2イニングを投げ、防御率6.15だった。

もっとも、まだ若いだけに、ここから開花の可能性はある。

 エスピノーザほどの高順位ではないが、アルバート・アブレイユ埼玉西武ライオンズ/右投/28歳)も『ベースボール・アメリカ』のプロスペクト・ランキングに登場したことがある。こちらは2018年の77位だ。メジャーリーグ4年目の昨年はニューヨーク・ヤンキースで59.0イニングを投げて防御率4.73。1イニング4与四球や3与四球など安定感を欠いたが、最速100マイル(約161キロ)を超える。

 新助っ人のなかでドラフト順位が高かったのは、アンソニー・ケイ横浜DeNAベイスターズ/左投/28歳)だ。

2016年に全体31位でニューヨーク・メッツに指名された。2019年にケイがメジャーデビューした当時、あるスカウトは『MLB.com』のアレクシス・ブラッドニッキー氏に「ローテーションのトップになるチャンスがある」と語っていたという。エースの資質あり、と目されていたということだ。

 また、100マイルボーラーはアブレイユだけではない。公式な記録に限らないが、アニュラス・ザバラ北海道日本ハムファイターズ/右投/27歳)、ジミー・コルデロ千葉ロッテマリーンズ/右投/32歳)、ジュニオール・フェルナンデス(ロッテ/右投/26歳)、ジェームス・ダイクストラ(ロッテ/右投/33歳)、ジェフリー・ヤン(西武/左投/27歳)、テイラー・ハーン広島東洋カープ/左投/29歳)、ハビー・ゲラ阪神タイガース/右投/28歳)らもそうだ。

 こうして見ると、ロッテはハードボーラーを揃えている。

『NJ.com』のランディ・ミラー氏は昨年2月に『この春にヤンキースのスリーパー(掘り出し物)となる投手は誰? スカウトが目をつけているのは?』と題した記事でコルデロを紹介していた。実際、スカウトの見立てどおり、コルデロは31登板で32.2イニングを投げ、防御率3.86と8ホールドを記録。ドメスティック・バイオレンスの規定違反により昨年7月初旬からシーズン終了まで出場停止となったことが、来日の理由と思われる。

『ジ・アスレティック』のロブ・ビアテンフェル氏によると、ハーンはピッツバーグ・パイレーツのマイナーリーグにいた2010年代の終盤、チームメイトから「アロルディス・チャップマン」と呼ばれていたという。チャップマン(現パイレーツ)は球史に残るハードボーラーだ。

 パトリック・マーフィー(日本ハム/右投/28歳)とトーマス・ハッチ(広島/右投/29歳)はゴロを打たせる投球を持ち味とする。

アンドレス・マチャド(オリックス/右投/30歳)はほかの投手と比べると与四球率が低めなので、自滅することは少なそうだ。ミゲル・ヤフーレ東京ヤクルトスワローズ/右投/25歳)は球種が豊富。5月で26歳と若く、日本プロ野球でバケるかもしれない。ヤフーレとチームメイトになるホセ・エスパーダ(右投/26歳)も今月で27歳。ヤクルトは彼らの将来性を買っているようにも見える。

 また、前出のゲラとローワン・ウィック(DeNA/右投/31歳)のふたりは、キャリアの途中まで野手だった。ゲラは2018年までは主に遊撃を守り、2016年の開幕前には『ベースボール・アメリカ』のプロスペクト・ランキングで52位に挙げられていた。2018年のメジャーデビューは野手として。翌年から投手に転向し、その年の9月に早くもメジャーリーグで投げた。

 一方、ウィックは捕手→外野手→投手と歩んできた。ゲラのようにプロスペクト・ランキングのトップ100に入ったことはないが、プロ4年目の2014年はマイナーリーグの74試合で20本のホームランを打っている。

 ウィックとチームメイトになるアンドレ・ジャクソン(DeNA/右投/27歳)も、大学時代は登板するよりも外野を守ることのほうが多かった。ただ、当時から評価されていたのは投手のほうだ。プロ入りした2017年のドラフトだけでなく、高校から大学へ進んだ当時2014年のドラフトでも投手として指名されている。

 なお、ドリュー・バーヘイゲン(日本ハム/右投/33歳)は出戻りとなる。2021年~2022年も日本ハムで投げた。メジャーリーグではリリーバーとして投げてきたが、通用しなかったので日本に戻ってきたわけではない。昨年はセントルイス・カージナルスで60試合に登板し、61.0イニングで防御率3.98。後半に限ると防御率2.70を記録しており、本人が望めばメジャーリーグ契約を得られたはずだが、日本球界に復帰した。