川井健太監督(サガン鳥栖)インタビュー(中編)
勝つべきチームが勝つ、それはサッカーにおけるひとつの真理だろう。しかし、弱いとみなされていたチームが強い敵を倒す――大衆が興奮するのはそんな「番狂わせ」だ。
その点で昨シーズンのJリーグは、資金的に恵まれたチームが強いだけで、意外性に乏しかった。
「Jリーグの人気低迷」
それが叫ばれる理由としては、有力な日本人の多くが欧州に進出し、極端な円安で能力の高い外国人を獲得する交渉が難航を極めていることもあるだろう。エンタメのコンテンツとして、思った以上の危機を迎えているのだ。
J1で新風を起こしているサガン鳥栖の川井健太監督は、現状をどう捉えているのか?
――Jリーグの人気に対し、危機感を持つ人が増えています。スポーツメディアとしても、ボール競技ではバスケットボールやバレーボールが盛り上がっているのは肌で感じるところです。
「Jリーグ自体がつまらなくなった、という見方もあれば、他競技がJリーグの水準まで追いついてきた、とも言えるかもしれません。
――昨今のJリーグは、資金面で潤沢なクラブが年間予算に比例して勝っている印象があり、そこに他のクラブが割って入らないと、エンタメとしては厳しくなります。
「自分の立場上、『Jリーグがノッキングを起こしてあまり魅力がない』とは言いたくないし、『そうではない』と言いたいです。ただ、面白いか、面白くないか、を判断するのはファン、サポーターなので、そこにしか正解はないんですよね。観客数が目に見えて増えているわけではないので、伸び悩んでいるというのは事実かもしれません。
【オフにイングランドを視察して】
――今や80人前後の日本人選手が欧州でプレーしています。円安の影響も強く、引き止めることはできなくなっているし、外国人選手も獲得が難しくなっています。
「今や若い選手でもすぐに海外へ出る時代なので、うちも福井太智がドイツに行きました(バイエルンへ移籍後、現在はポルトガル1部のポルティモネンセに期限付き移籍)。20歳以下で、J2、J3の有望株がJ1を経験せずに(欧州へ)行ってしまう。
「長い時間をかけないと、花は開かないと思います。やはり、ヨーロッパのフットボールの歴史から学ぶべきことはまだある。継続路線でいくチームは、一回、何かが壊れてしまっても、再生ができる。
――ジローナのようなクラブがJリーグで出にくい理由としては、スポーツダイレクターと言われる現場の態勢を作り出す人の重要性が日本で軽視されてきたことがあると思います。
「僕がこの立場で思うのは、監督が決断する前にクラブが決断しないと、監督はそこにいられないってことです。それが絶対的な順番で、だから僕はクラブに感謝しています。彼らが決断しないと、僕はその場にもいられなかった。クラブの構造ははっきりしていて、社長がいて、監督を決める人がいて、監督、選手がいるわけです」
――欧州では、裕福なチームがそうでないチームに食われることでエンタメとして魅力を維持している印象があります。
「オフにイングランドに行って、リバプールのクラブハウスやスタジアムとかも観に行ったんです。
(つづく)
Profile
川井健太(かわい・けんた)
1981年6月7日、愛媛県生まれ。現役時代は愛媛FCでプレー。指導者としては環太平洋短期大学部サッカー部監督を皮切りに、愛媛FCレディースヘッドコーチ、日本サッカー協会ナショナルトレセンコーチ、愛媛FCレディース監督、愛媛FC U‐18監督、愛媛FC監督、モンテディオ山形コーチを経て、2022シーズンからサガン鳥栖監督に就任した。