レオザフットボールインタビュー前編

アジアカップ、ベスト8で敗退した日本代表の森保一監督の采配が大きな批判にさらされている。チーム内外から聞こえてくる声は、シリアスで日本代表の今後を憂う声が多い。

果たして、森保監督はドイツやスペインを破った名将なのか。それともイラクやイランに無為無策で敗れた凡将なのか。シュワーボ東京のオーナー兼監督、YouTubeで舌鋒鋭い解説で27万人のチャンネル登録者数を誇るレオザフットボールに、森保監督と日本サッカー協会について話を聞いた。

サッカーYouTuber・レオザフットボールがアジア杯を振り...の画像はこちら >>

――アジアカップでの敗退後、記事やSNSでは、森保監督の采配に首をかしげるものや批判的なものが一気に増えました。レオザフットボールさんは、森保監督の課題は何だと思いますか。

「森保さんは、サッカーを選手の気持ちと能力だけでやるものだと思い過ぎていると思います。

それは昔のサッカー文化の影響が大きいのかもしれません。守備は連動性を重視せず個人の頑張りでハイプレス、それを突破されれば撤退しての人海戦術を敷き、攻撃も個人の質に依存する。サッカーは個人の質ありきですが、そこからアップデートできていないんです。そこが今まで悪い意味でブレてこなかった」

――選手はアップデートしているのに、監督はできていないということですか。

「そうですね。選手は、ワールドカップ優勝という目標と監督からの選考基準の提示で個々の質を鍛えることに向き合っています。

実際、リバプール、アーセナル、ブライトンで主力を張っている選手がいる。でも、肝心の監督が自分を鍛えようとしていない。自分の弱点である試合中の修正とか、選手の目線を揃えられないところ、約束事を徹底できないところなどを5年半改善できていないことがピッチ上に現象として現れている。映像も残っていますがイラン戦では前からのプレスをどう掛けるのかという話を選手がしている時、『縦パス入れられるよ?』と議題とは別のコーチングをしているんです。それが森保さんの監督としての個の力です」

――アジアカップの結果が森保監督の力でもあるということでしょうか。

「はい。

今は選手に求められる個の質の基準が上がっています。昔はパスがうまいだけで評価されたものが、今はドリブル突破して、点を取ることまで基準として求められている。でも、監督は個の大事さを訴えながら自分を鍛えず、苦手なものを苦手のままにしていた。その結果、イラク戦、イラン戦で的確な修正、または論理的な解決策がないという問題を再び露呈してしまいました」

――森保監督について戦術家としては、どういう評価ですか?

「戦術家としては全然足りていないというか、戦術が浅いですね。一般的に戦術と言われるものは、僕はチームでは『原則』とか『ルール』という言葉に置き換えています。それがないとまとまって戦えない。

でも、こういう戦術をやりたいんだって言ってやれるわけじゃないんですよ。それは各自に明確な役割を課すことによって全体像として浮かび上がってくるものなんです。森保さんは、コンセプトベース部分では伝えているとおっしゃっていますが、ひとりひとりに細かい役割を課していない。だから、選手は何をしていいのか分からなくなる。その結果、守田(英正)や三笘(薫)ら選手から『もっと具体的に言って欲しい』という声が出てきているんです」

――コンセプトと枠組みはあるが、中身がともなっていない。

「森保さんのように、『自分たちでやっていいよ』と自由を与えてしまうと、できる選手と、できない選手に差が出てきます。

また、選手は自由で、多くの選択肢を持てるがゆえに選択肢を間違えてしまうこともある。だから、できるだけ噛み砕いて、ピンチを減らしてチャンスが増えるように、そこに導いてあげるルール作りをしていくことが重要なんです。でも、森保さんはそれをチームでやっていないのではないか。劣勢になっても終始、なんでもありなので、選手からは『どうしたらいいのか』という声が出てくるし、考え、試合中に悩んでしまうんです」

――自由なところ以外の基準を明確にするということでしょうか。

「そうです。サッカーでは、あいつはこう言っているけど、俺はこうしたいという選手が必ず出てきます。

久保(健英)や守田がいくら言っても伊藤(洋輝)は、ポジショニングを変えないみたいな。その時、監督が選手にきちんと伝えなきゃいけない。ジーコジャパンの時、福西(崇史)や宮本(恒靖)が中田(英寿)とピッチ上で守備について議論したとかあったじゃないですか。そういう時、監督が意見をまとめて、『これでいくよ』と決め、それに従えない選手は組織に入れないことがすごく重要です。しかし、森保さんはそういったディテールを詰めた約束事の徹底が苦手です」

――一部の選手からは森保監督は良い監督という声も漏れてきます。

「この場合の『いい』の意味は揉め事を避け、敵を作らない能力に長けている人という意味ですね。選手が批判に至らないのは、人間としての情と自分のメリットを考えてということだと思います。お世話になっているのは事実ですし、監督を批判して、代表から外れたくないと考えるのは、セカンドキャリアや代表選手というバリューを考えると当然ですので、それは悪いことではないです」

――森保監督が監督として良いところはありますか。

「森保さんは、こういう選手は呼ばないという判断はしっかりしていると思います。守備の強度をしっかり出し続ける選手しか招集しない、輪を乱す選手は起用しない、部下ともめないとか、そのコンセプトを頑固に守るというのは良いことだと思います。また、森保さんは、チームのために戦えるかというのを重視していますが、そこは僕も監督業をする中ですごく大事なところだと思っています」

――ドイツやスペインに勝ったという実績もあります。

「なぜ、ドイツやスペインに勝てたのかというと、ドイツやスペインは強くて格上で、日本を圧倒してくるわけじゃないですか。その時、水際で必死に防ぐために頑張らないといけないですし、それしかできないので全員の目線が揃って戦い、権田の活躍で耐え凌いだ末にスーパーゴールも生まれた。でも、コスタリカやクロアチア、今回のイラン、イランのように力が拮抗した場合、やり方が複数出てくるので、ひとつに統一できず、全員の目線が揃わなかった。ドイツ、スペイン戦は、監督が揃えられない目線を、状況が揃えてくれたのです」

――アジアカップの結果を受けても解任などの話がサッカー協会から一切出なかった。

「協会が考える代わりがいないこと、加えて森保さんは、田嶋さんにすごく気に入られていますよね。監督のなかには自分のアイデアを押し付けたり、選手とハレーションを起こしたり、選手の気持ちすら考えられない人もいます。そういう観点からいうと森保さんは、大きなトラブルを起こさないですし、選手の話も形だけかもしれませんが、よく聞いてくれます。スポンサーに配慮するサッカー協会としては、非常にいい監督なんだと思います」

――今後も森保監督の指揮に明るい光は見えない。

「森保さんの選手を労わるところは大事です。ひどい監督だと試合が終わった後、自分の保身のためか、『あの選手がダメだった』とか、『あのプレーがダメだ』とか平気な顔をして言うんです。みんなの見ている前でディスられるのを耐えられる選手って少ない。それをしてもうまくマネジメントできるのは、圧倒的な実力と人心掌握術がある(イビチャ・)オシムさんやペップ(ジョセップ・グアルディオラ)みたいなタイプだけ。森保さんは心理カウンセラーになりたかったようですけど、自分の能力を理解していて、人の心を理解することを大事にしている。でも、それだけじゃ目線が揃わないですし、試合では勝てない。今後も大きくは変わらない。現状では監督というよりも選手の力に期待するしかないでしょう」

――選手の力、ですか。

「カタールW杯でのスペイン戦、ドイツ戦で見せた浅野(拓磨)や田中(碧)のシュートは、まさに再現性の低いスーパープレーでした。選手はスーパープレーを出力できるレベルになっているので成長しています。あとは監督なんですけど、いいプレーが多く出るようにデザインしよう、または相手の嫌がることをやってピンチを減らそうというチーム作りに至らない。だから今、勝つためには選手のスーパープレーを待ちましょう、期待しましょうとしか言えないですね」

――カタールW杯以降は、ボールを保持して戦うことをメインにしてきましたが、その成果については、どう判断をしていますか。

「理想を持つことは大事ですが、現実から目を背けてやるべきことを怠っていては絵空事です。ボールを扱わない状態で守備を整理するチームを作れない監督に、ボールを保持して勝つ確率を上げるチームを作ることはできません。そのツケが戦力的に圧倒していながらロングボールに対応できずボールもつなげず敗れるというイラン戦の内容と結果にハッキリと出ています」

(>>『伊東純也離脱問題にレオザフットボールが警鐘「サッカー協会おかしいぞってみんなが言い続けないといけない」』)

サッカーYouTuber・レオザフットボールがアジア杯を振り返る 森保監督は戦術家として「全然足りてないというか浅い」
シュワーボ東京のジャージを着るレオザフットボール(本人提供写真)
■Profile
レオザフットボール(れおざふっとぼーる)
2016年よりYouTubeチャンネル『レオザフットボール』を開設し、活動を開始。歯に衣着せぬ鋭い配信にファンがじわじわと増加中。現在のチャンネル登録者数は23.3万人(2024年3月時点)。並行してサッカー指導者としての顔も持ち、自身で立ち上げたシュワーボ東京(東京都社会人サッカー連盟3部)の監督兼オーナーを務めている。
YouTubeチャンネル:@leothefootballtv7690