開幕から1カ月が過ぎ、巨人はルーキーを含めた新戦力の活躍もあり、粘り強くAクラスを死守している。そんな巨人だが、いまだ解決していないのが正捕手問題である。
【捕手としての大城の能力に疑問】
「そもそも大城が正捕手だって、誰が決めたんだ? 昨年の試合を見ていても、遊び球が多すぎるし、疲れてくると集中力を欠き、リードにも打撃にも影響が出る。困ったらアウトコースを要求する。そんなリードでプロの打者を抑えられるわけがない。そもそも原(辰徳/前監督)は、大城の4打席と、相手から27個のアウトを取ることを考えた際、大城の4打席を重視しただけのこと。
昨シーズン、大城は134試合に出場して、打率.281、16本塁打、55打点と、プロ6年目にしてキャリアハイの成績を残した。キャッチャーとしては及第点の成績に思えるが、一方でディフェンスはどうだったのか。チーム防御率3.39(リーグ5位)の数字は、決して投手だけの責任ではないだろう。
事実、フォスター・グリフィンは大城のリードに何度も首を振っていた。配球もそうだが、投手とのコミュニケーション不足を露呈していた。
「打てる捕手」として一時代を築いた阿部監督だって、最初からインサイドワークに長けていたわけではなかった。
「野村(克也)や古田(敦也)のように攻守に秀でたキャッチャーがいたら別だが、これといって差がないのであれば、ピッチャーの相性によって起用するのは当然だ。大城はキャッチャーとしてキャリアを重ねているにもかかわらず、成長が見えないどころか、年々悪くなっている印象がある。普段から打者の動向や息づかいを注意深く観察し、前の打席でそのバッターがどんなカウントで、どんなボールを打ってきたのか、そこに至るまでのプロセスを覚えていないんじゃないか。
もともとキャッチャーとしての評価は、ドラフト同期の岸田のほうが高かった。そんな大城が正捕手になった背景には、小林の打力が乏しいため、バッティングのいい大城が抜擢されたわけだ。
ただ、阿部監督は大城に対して「小林や岸田の捕手としての振る舞いをしっかり勉強してほしい」とメディアを通して伝えたように、捕手としての能力に疑問を抱いているのは間違いない。
【試合に出ていないときに何を学ぶか】
31歳とベテランの域に近づいている大城にとって、時間的猶予はあまりない。昨年までは、守備面で多少は目を瞑ってでも打撃優先で使ってもらっていたが、阿部監督が「守りの野球」を標榜する以上、ディフェンス面での成長が見られない限り、小林や岸田が起用されるのは当然だろう。
「ルーキーの佐々木(俊輔)など若手たちを起用しながら育てていくパターンもあれば、選手を外すことで奮起を促す采配もある。これは原のときにはなかったことだ。すぐに成果は出なくても、チームにとって"変革"という意味ではいいかもしれない。阿部は、巨人のキャッチャーは勝つことでしか評価されないと言ったが、それが巨人だ。
だから大城は、ベンチ要員になったからといって腐ってはいけない。
その一方で広岡は、現時点で捕手の併用は致し方ないと考えているが、それよりも毎日のように変わる猫の目打線を問題視している。
「3番を打っていたヤツが次の試合で6番を打ったり、6番を打っていたと思ったら1番を打ったりと、コロコロ打線を変えすぎだ。
選手も、打線がコロコロ変わるようでは落ち着いてプレーすることは難しいだろう。捕手併用が打線にバラツキを生んでいる要因になっているとは言わないが、今の巨人に軸となる選手はいても核となる選手がいないのは事実である。
「チームは生き物だから、要となるキャッチャーがどっしりしていたら、打線だって頻繁に変える必要はない。安定して成績を残すチームには、必ずといっていいほど優秀なキャッチャーがいる。それを育てるのが監督の仕事である」
捕手併用は、その場しのぎの策なのか、それとも先を見据えた起用なのか。巨人のこれからの戦いから目が離せない。