自転車競技を引退し、ガールズケイリンの選手として活躍している太田りゆと、次なる目標に向けて歩み始めた陸上100mハードルの田中佑美。アスリート対談後編ではモデルにも挑戦しているふたりに、美容への意識などについて話を聞いた。
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【互いに気になる筋肉】
――太田選手は中学・高校と陸上の中距離選手(800m)をやられていました。これまで田中選手の走りをご覧になることはありましたか。
太田 走りを見たことはありますし、インタビューも読みました。きれいなのにハードルを跳ぶときには、めちゃくちゃかっこいい。私は結構ムキムキなんですけど、陸上選手のムキムキは特にかっこいいから、陸上をやっていた身としては、陸上選手は超あこがれです。それから腹筋がやばいなと思っていました。
田中 太田さん、脚、やばいですよね。私もウエイトトレーニングをしているから、太田さんの脚の太さがいかにすごいかというのがわかります。何回見ても、もう一回確認したくなりますよね。
太田 街を歩いていても、いったん顔を見て、目がすごいなという表情をして、そこから脚を見て......。上から下まで2往復くらいされます(笑)。
田中 めっちゃわかります(笑)。もともと筋肉がつきやすかったんですか。
太田 もともと筋肉はつきやすかったですね。陸上の800mを走るには筋肉がつきすぎていて、結構減量をしていました。適正体重になれなくて苦しかったです。本当は100mや200mをやりたかったんですけど、自分が決めたことを曲げられなくて......。東京女子体育大学に入学して別の種目をやってみようと思ったんですが、いろいろあって陸上部には入れませんでした。だから今でも陸上選手があこがれですし、大好きです。


――田中選手は競輪に対して、これまでどんな印象を持っていましたか。
田中 大学の同期が競輪選手を目指していることを大学時代から聞いていました。彼女は400mの選手でしたが、ケガが多くてよくバイクトレーニングをしていて、その数値がよかったということもあって、希望したようです。今、日本競輪選手養成所にいるので、私もいろいろ調べていました。競技人生が長かったりとか、たくさん稼げたりするとか、そういう基本的なところは学びました。彼女のデビュー戦はぜひ見にいきたいなと思っています。
太田 頑張り次第ではたくさん稼げます。
田中 結果と給料がほぼイコールですよね。
太田 そうです。1着から7着まで賞金があります。
田中 私は実業団に所属しているので、競輪は勝負の世界としての土俵が違うなと思います。人生をかけて走っているんだなと思いますね。
【ともにこだわる「まつ毛」】
――話は変わって、プライベートの部分もお伺いしたいのですが、太田選手も田中選手もモデルに挑戦されたことがあります。アスリートにとって美とはどんなものだと捉えていますか。
太田 アスリートとしてというよりも、単純に私はお化粧が好きで、モチベーションとしてやっています。すっぴんだと私はめちゃくちゃ弱いんで。
田中 戦闘力ですね(笑)。
太田 そう。お化粧すると戦闘力が上がるので、そのためにやっています。
田中 お化粧して崩れるのが気になってしまったり、塗るのが気持ち悪いなと感じたりする人は、やらなくてもいいと思います。テンションが上がる人はやればいいと私も思っています。
太田 かつては「お化粧する暇があったら練習をしろ」と言われたことがありますが、最近はすごく認めてもらえるようになったかなと思います。お化粧したほうが成績は絶対によくなると思ってやっています。

――実際にレースのときにもメイクはしていますか。
太田 しています。私はヘルメットをかぶっていることもあって、すごく汗をかくんですが、レースの時にも崩れにく、崩れてもきれいに落ちるというのを意識して、メイクの練習をして臨んでいます。それはレース用のメイクで普段とは違うメイクです。
田中 私はいつも通りのメイクでレースに臨んでいますね。
――太田選手は美容にも興味があると伺っていますが、特にこだわっているところはありますか。
太田 まつ毛の量が少なくなると元気がなくなってきちゃうので(笑)。
田中 これで?(笑)
太田 オリンピックの時は1カ月くらい事前合宿地にいたから、本番の時のまつ毛は私にとってはボルテージ2くらい。100がマックスなのに(笑)。
田中 だいぶレベルが落ちるんですけど、私もまつ毛は大事で、汗をかくのでアイシャドウとか色をつけるものはしにくいんですよね。でもまつ毛は落ちないんですよ。だから試合の日はできる限り(まつ毛を)上げて臨んでいます。
――アスリートですので、結果にフォーカスすることが大前提ですが、体型について意識していることはありますか。
太田 脚が太いということに対して、恥ずかしいという気持ちはなくなりました。
田中 アスリートとして脂肪と筋肉は気にしています。審美のためということはないですね。今契約しているメーカーは、ロングタイツが多いんです。ズボンではなくてきちっとしたタイプが多くて、そういうのを履いてトレーニングや移動したりすることが多いです。しっかりと筋肉がついて健康的なアスリートの身体の美しさを、隠しすぎず、体のラインの美しさ、鍛えた筋肉の美しさがもっとフラットに受け入れられたらいいなと思います。
太田 素晴らしい意見ですね。私たちはせっかく鍛えているものを隠しすぎているので、そこは考えていきたいですね。

【競技の発展にも寄与】
――最後になりますが、今後の目標を教えてください。
太田 私はガールズケイリンの選手としてGⅠタイトルの獲得と、ガールズグランプリへの出場。その先としてグランプリでの優勝を目指したいですし、賞金女王にもなりたいです。それから自転車競技を伝えていく活動もやっていきたいです。
田中 私は「0.01秒でも速く」です。パリ五輪で準決勝に進出しましたけど、準決勝の中でも下のほうだったという自覚はあるので、ひとり一人抜かしていって、少しでも上の順位、少しでも上の記録を狙っていきたいと思います。また陸上は、サッカーや野球に比べると、競技人口が多いわりに選手の知名度が低いんですよね。陸上はすべてのスポーツの基礎になりますから、太田さんのように陸上から自転車競技に転向される方もいらっしゃいます。サッカーや野球も基本は走るところからなので、そういったところでも陸上がもっともっと人気になって、幅広くいろんな方に取り組んでもらえればなと。。そしてその一助になれればなと思っています。
【Profile】
太田りゆ(おおた・りゆ)
1994年8月17日生まれ、埼玉県出身。中学・高校と陸上競技の中距離選手として活躍し、大学時に競輪学校の試験を受けて合格。2016年に入学すると在学中にナショナルチームから声がかかり、2017年2月のアジア選手権大会のチームスプリントに出場し3位となる。その後も数々の国際大会に出場して結果を残し、2022年、2023年のアジア選手権女子スプリントで連覇を達成。パリ五輪では女子ケイリン日本勢歴代最高の9位となった。ガールズケイリンでも活躍し、いくつかのビッグレースで決勝を走るなど、屈指の実力を誇っている。
田中佑美(たなか・ゆみ)
1998年12月15日生まれ、大阪府出身。中学から100mハードルを始め、関西大学第一高校ではインターハイを連覇し、第9回世界ユース選手権に日本代表として出場する。立命館大学では関西インカレ4連覇、2019年には日本インカレ優勝。2021年4月より富士通に所属し、2022年の日本選手権で3位、2023年世界選手権(ブダペスト)日本代表、2023年のアジア大会で銅メダルを獲得する。パリ五輪では準決勝に進出。