3歳馬のマイル王決定戦、GINHKマイルC(東京・芝1600m)が5月11日に行なわれる。

 中心視されているのは、GI朝日杯フューチュリティS(12月15日/京都・芝1600m)の覇者アドマイヤズーム(牡3歳)。

前走のGIIニュージーランドトロフィー(4月12日/中山・芝1600m)ではクビ差の2着に敗れたものの、本番への"叩き台"となるおよそ4カ月ぶりの一戦でまずまずの走りを見せたことで、1番人気に推されることは間違いないだろう。

 なにしろその直後、朝日杯FSで2馬身半差の2着に退けたミュージアムマイルがGI皐月賞(4月20日/中山・芝2000m)を快勝。それによって、アドマイヤズームの評価は一段と高まっているからだ。

 加えて、朝日杯FS3着のランスオブカオス(牡3歳)が、のちにGIIIチャーチルダウンズC(4月5日/阪神・芝1600m)を難なく勝利。今にして思えば、朝日杯FSは好メンバーがそろったハイレベルな一戦と言え、そのレースを勝ったアドマイヤズームが最も高い評価を受けるのも頷ける。

 では、NHKマイルCはアドマイヤズームで決まりなのか?

 関西の競馬専門紙記者は「そんなことはないと思いますよ」と言って、こんな見解を示す。

「朝日杯FSは時計が平凡でした。それに、ミュージアムマイルを負かしたと言っても、それはアドマイヤズームのほうがうまくレースを運ぶことができたから。そして、距離適性の差です。ミュージアムマイルにとって、マイルの距離は明らかに忙しかった。

 あと、アドマイヤズーム自身、課題を抱えています。気性の悪さ、です。

これは、ライバル陣営にはすっかりバレていること。それゆえ、ほとんどの厩舎が『うちの馬にもチャンスがある』と見ています」

 通常、阪神競馬場が舞台となる朝日杯FSだが、昨年末は京都競馬場で開催され、走破時計は1分34秒1。舞台の違いがあるにしても、確かにこのタイムは例年と比べると遅い。「京都より阪神のほうが時計は出にくい」と言われていることを考えると、余計に遅い印象が強まる。

 さらに言えば、朝日杯FSの1週前に同じ舞台で行なわれた2歳牝馬によるGI阪神ジュベナイルフィリーズ(12月8日/京都・芝1600m)の勝ち時計が1分33秒4。これと比べても、かなり遅い。ペース等の問題もあるため、一概に比較できないにしても、メンバーだけを見て朝日杯FSが「ハイレベルだった」とは言いきれないのかもしれない。

 ましてや、NHKマイルCは"荒れる"のが基本だ。過去10年の結果を振り返ってみても、1番人気はわずか1勝。2着が2回、3着が1回と、半分以上が馬券に絡んでいない。

 一方で、6番人気以下の伏兵が馬券圏内(3着以内)に食い込んでくることは頻繁にあって、ふた桁人気の馬が馬券圏内に突っ込んできたことが5回もある。2022年には、最低人気(18番人気)のカワキタレブリーが3着に入って、3連単の配当が150万円超えとなる大波乱となった。

 こうした傾向に加えて、アドマイヤズームら有力視される朝日杯FS組に疑問符がつく以上、今年も思わぬ馬の台頭は十分に考えられる。

 実際、先に専門紙記者が触れたとおり、東西のトレセンでは色気を持っている厩舎が数多くいるそうだ。そうした状況にあって、厩舎関係者の間でも密かに注目されている馬が2頭いるという。いずれも、「今年はレベルが高かった」と言われるGI桜花賞(4月13日/阪神・芝1600m)からの転戦組である。

 まず1頭目は、桜花賞4着のマピュース(牝3歳)だ。専門紙記者が言う。

「桜花賞は雨が降って馬場が悪く、とりわけ内が荒れていたので、上位にきた馬たちは皆、内を避けて真ん中から外目のコースを走って、最後の直線でも外から脚を伸ばしてきました。そんななか、マピュースは1頭だけ、馬場の悪い最内を通って追い込んできた。

 それでいて、4着に食い込んだ。あのレース内容はトレセン内でも評価されていますし、GIIIクイーンC(2月15日/東京・芝1600m)で桜花賞馬のエンブロイダリーに次ぐ2着と、そもそもの能力が高い馬。東京コースでの実績もあり、人気薄の伏兵候補の筆頭と言えるでしょう」

 もう1頭は、桜花賞6着のチェルビアット(牝3歳)。もともとスタート難があって、不利を受けやすいタイプなのだが、桜花賞ではそうした懸念がもろに出た。

道中、外からかぶせられたり、前が塞がったりと不運の連続。そのため、最後の直線の入り口でもまだ最後方の位置にいたのだが、そこから猛然と追い込んで6着と善戦した。

【競馬予想】朝日杯FS組が人気のNHKマイルC 密かに注目さ...の画像はこちら >>
「(桜花賞での)あの最後の脚を見ると、東京のような広いコースで不利なく走れたら、どれだけ強いんだろうと思いました。もしNHKマイルCでそういうレースが実現できれば、先に挙げたマピュースよりも前に来る、可能性もあるかも......」(専門紙記者)

 過去10年のNHKマイルCにおいて、桜花賞組は2勝、2着3回という実績がある。2021年には、桜花賞15着のソングラインが7番人気で2着と好走している。今年は、マピュースとチェルビアットがアッと言わせる激走を果たしてもおかしくない。

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