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Shigekix インタビュー前編

【Dリーグ参戦と届いた「驚きの声」】

 世界最高峰のプロダンスリーグ「D.LEAGUE(以下、Dリーグ)」のCHAMPIONSHIP(以下、チャンピオンシップ)が、6月19日(木)に開催される。約半年間にわたる全14チームによるレギュラーシーズンが終了し、勝ち点上位の6チームによってこのチャンピオンシップは争われるが、そのなかで注目されるダンサーのひとりが、Shigekix(シゲキックス)だ。

 昨年のパリオリンピックで初採用されたブレイキンで4位となり、一躍脚光を浴びたShigekixが、KOSÉ 8ROCKS(コーセーエイトロックス)のレギュラーダンサーとして、今度はDリーグの頂点を目指す。

 2024-25シーズンから参戦しているShigekixだが、ブレイキンを主体とするKOSÉ 8ROCKSとの関りは深く、Dリーグ初年度の2020-21シーズンでは姉のAYANEがこのチームのレギュラーダンサーとして活躍。さらに自身も2022-23シーズンにSPダンサー(※)として出演した過去がある。その当時をShigekixは振り返る。
※特定のラウンドのみに出場するダンサーのこと。1ラウンドあたり3人まで出場できる。

「すべてが新鮮で、新たな挑戦みたいな感覚が強かったなと思います。さすがブレイキンというのを見せられたらいいなと思っていましたが、その対戦では負けてしまいました。だからすごく悔しい思いもあって、どこかでこの悔しさをリベンジしたいなと思っていました」

 Shigekixが参戦した当時は、パリオリンピックの選考期間にあたり、「すぐにレギュラーダンサーとして参戦することは難しかった」という。それでも「いつでも参戦する気持ちはあった」とKOSÉ 8ROCKSの活躍ぶりに注視していた。

 そして2024年の夏、Shigekixはパリオリンピックの合宿地で、2024-25シーズンからKOSÉ 8ROCKSにレギュラーダンサーとして加入することを決断した。

「自分がDリーグに参戦するなら、KOSÉ 8ROCKSしかないと思っていました。オリンピックが終わってからの決断では遅いのではないかという気持ちがあって、オリンピック前に決断することにすごく意味があるのかなと思いました。

それがオリンピックに対するモチベーションに大きくつながったような印象があります」

Shigekixが語るD.LEAGUE CHAMPIONSHIPへの思い「レギュラーダンサーとして参戦した理由」「特別視してきた先輩との関係」
ブレイキンのチームとして高い人気を誇るKOSÉ 8ROCKS ©D.LEAGUE24-25
 正式に参戦することをチーム側に伝え、パリオリンピックの興奮冷めやらぬ8月中旬には公式サイトを始め、さまざまなチャネルでレギュラーダンサーとしての加入を発表すると、各所から大きな反響があった。

「驚きの声は結構ありました。そのなかでもポジティブな意見が本当に多くて、自分の新たな挑戦を見たいと思ってくれている方、いろんなブレイキンの姿を見たいと思ってくれる方がいて、すごく喜んでくださっているという印象を持ちました。これはパリオリンピックのおかげもあると思っていて、こんなダンスがあるんだと気づいてくれるきっかけになったのかなと思います」

【MVDを2度獲得】

 レギュラーダンサーとなったShigekixはいきなり開幕戦となるラウンド1から出場した。

「開幕戦はだいぶ気合いを入れていましたね。僕自身もSPダンサー以外で出場するのは初めてでしたし、自分のスタートの瞬間を、特別感を持って臨んだので、みんなを興奮させたいとか、喜ばせたいという一心で挑戦をしました」

 ちなみに今シーズンのDリーグは全14チームによって14ラウンドのレギュラーシーズンを行なった(5月末に終了)。総当たりの対戦形式で争われ、1ラウンドで計7マッチを実施。勝敗は、オーディエンス、テクニック、コレオグラフィー、ステージング、シンクロパフォーマンス、エースパフォーマンスの6項目によってジャッジされ、勝ち、負け、引き分けのいずれかが、対戦直後にドラマチックに決まる仕組みだ。

 このジャッジシステムは今シーズンから採用されたもので、なかでもエースパフォーマンスには大きな注目が集まってきた。これは1チーム約2分の作品のなかで、必ず一度、ひとりのダンサーがスポットライトを浴びたなかでパフォーマンスを行なうというもので、勝敗を左右する重要なパートとなっていた。

 KOSÉ 8ROCKSの今シーズン最初のラウンドで、エースパフォーマンスを任されたのがShigekixだった。

「勝敗を分ける大きなパートのひとつで、当時からその重みを受け止めつつも、自分にとっては絶好のチャンスだと捉えていました。10秒とかの短い時間で人に印象を与える、興奮させるというのは、これまで何度もやってきました。

エースパフォーマンスでは、いかに自分が培ってきたものを発揮できるか、そこにかかっているような感覚でした。

 自分の自信あふれる姿を、そのままパフォーマンスに落とし込むこと、そして向かい合っているのはバトルする相手ではなく、お客さんであり、審査しているジャッジの方々なので、短い時間であっても、彼らの心をしっかりとつかみにいくことは、意識していた部分でした」

 Shigekixはスポットライトが当たった瞬間に、人差し指を立てて右腕を高く突き上げると、そこからヘッドスピンなどのパワームーブを繰り出した。そして今度は大きく手を広げて観客をあおってからフットワークに続いてフリーズを披露。エースパフォーマンスはこうやって盛り上げるんだ、と言わんばかりのキレと躍動感のあるダンスを見せた。

Shigekixが語るD.LEAGUE CHAMPIONSHIPへの思い「レギュラーダンサーとして参戦した理由」「特別視してきた先輩との関係」
ラウンド1でのエースパフォーマンス。得意のフリーズで締める ©D.LEAGUE24-25
 結果的にKOSÉ 8ROCKSはSEPTENI RAPTURES(セプテーニ ラプチャーズ)に5対1で勝利。もちろんエースパフォーマンスでも1票を獲得した。さらにこのラウンド全体でのMVD(Most Valuable Dancer)にも選ばれた。

「たくさんの方々から『印象的だった』と反響をいただいて、自分が思い描いていたもの、狙ったことがちゃんと届いてうれしかったです」

 Shigekixは海外遠征などで次の出場はラウンド10となったが、そこでもエースパフォーマンスを披露。再びMVDに輝く快挙を見せた。

Shigekixが語るD.LEAGUE CHAMPIONSHIPへの思い「レギュラーダンサーとして参戦した理由」「特別視してきた先輩との関係」
Shigekix はDリーグのなかでも特別な存在のひとり  ©D.LEAGUE24-25

【世界一のふたりが共演】

 KOSÉ 8ROCKSには初代ディレクター兼ダンサーであり、1シーズン目と2シーズン目で2年連続、年間最優秀ダンサーにも選ばれたISSEI(イッセイ)がいた。彼は2シーズン目でチームを優勝に導くと、「自身のさらなる成長のため」に退団した。そんなチームを象徴する存在が、2024年12月、3シーズンぶりに復帰することが決まった。

 そこには少なからず驚きもあった。

それはISSEIとShigekixが同時にチームに在籍することだ。

 ISSEIは19歳のときに、ブレイキン世界最高峰の大会「Red Bull BC One World Final」で、日本人初にして史上最年少での優勝という偉業を成し遂げた。一方Shigekixはその4年後の同大会でISSEIの記録を塗り替える、史上最年少の18歳で世界一に輝いた過去がある。

 現在、年齢はISSEIが28歳、Shigekixが23歳と少し離れており、互いがこれまで共演することはなく、会話しているところを見た人もほとんどいなかった。そのためブレイキン界隈では互いにライバル視しているという印象を持たれ、不仲説さえ囁かれていたほどだ。

 Shigekixも「僕がブレイキンを始めて、国内、海外と視野が広がっていくなかで、彼の背中を見ずにブレイキンはできなかった、当時からそんな存在でした」とISSEIを特別視してきた。

 そんなふたりがラウンド10のスタートでいきなりスポットライトを浴びて息を合わせて踊り始めた。その姿にブレイキンをよく知る観客からはどよめきに近い歓声が上がった。

「実はもともと海外遠征で話をしたりして、むしろ仲はよかったんです。各々の世代をリードしていくような、そんな戦友的な感覚もありました。ISSEIさんは『自分たちはこれまで交わってこなかったからこそ面白いな』みたいなことを話していました。

 だからこうしてDリーグの舞台で、同じチームで戦うことにすごく意味があると思いました。

10代のふたりでは実現できなかったことですし、20代の今だからこそ、何かグッと感じてもらえるものが見せられたと思います。実際にそんな言葉をたくさんいただきました」

 こうしてラウンド10でもFULLCAST RAISERZ(フルキャストレイザーズ)に5対1で勝利を飾った。その後も質の高い作品を披露し続けたKOSÉ 8ROCKSは、全14ラウンド戦った末に、チャンピオンシップへの出場権を手にすることができた。残すは優勝まで3作品を作り上げ、ひとつずつトーナメントを勝ち上がっていくだけだ。

Shigekixが語るD.LEAGUE CHAMPIONSHIPへの思い「レギュラーダンサーとして参戦した理由」「特別視してきた先輩との関係」
高難度の技でも難なくこなすShigekix photo by Gunki Hiroshi

【ブレイキンはチャンピオンシップ向き】

 レギュラーシーズン6位でチャンピオンシップ出場を決めたKOSÉ 8ROCKSは、トライアルマッチ(準々決勝)からの出場となる。頂点に立つには1日で3チームに勝たなくてはいけない。披露する作品数が多いうえに、Shigekixは「フィジカルにかかる負担はかなり過酷」とブレイキンならではの体力の消耗も危惧している。それでも勝算はあると見込んでいる。

「ブレイキンはすごくチャンピオンシップに向いていると思っています。3作品はもちろん多いんですが、1作品目で勢いがつけば、2作品目、そして最後の決勝戦は、ずっと飽きさせずに楽しませて、『今日はKOSÉ 8ROCKSの日だな』と思わせられるような景色、イメージ、戦略がすごく見えます」

 目標はもちろん優勝だ。

「僕たちブレイキンの世界で戦ってきたダンサーは、人一倍負けず嫌いで、そんななかで勝負してきているので、レギュラーシーズンの順位も含めて今のこの状況というのは、すごくモチベーションが上がる条件が整っているかなと思います」

 このチャンピオンシップで注目が集まっているのは、レギュラーシーズン2位のKADOKAWA DREAMS(カドカワ ドリームズ)の3連覇はあるのか、そしてレギュラーシーズンを3年連続で制したCyberAgent Legit(サイバーエージェント レジット)が3度目の正直で優勝を手にすることができるのかだ。ちなみにこの両チームはともにセミファイナルから登場する。

 そんななかで、KOSÉ 8ROCKSはどんな作品をぶつけていくのか、そしてShigekixがチャンピオンシップでどんな景色を見せてくれるだろうか。今から楽しみに待ちたい。

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【Profile】
Shigekix(シゲキックス、半井重幸)
2002年3月11日生まれ、大阪府出身。7歳でブレイキンを始め、 11歳から海外の大会に出場。数多くの優勝を獲得する。2018年にはブエノスアイレスユースオリンピックで銅メダルを獲得。2020年、世界最年少の18歳でRed Bull BC One World Finalを制す。2024年にはパリオリンピックで4位入賞。2024-25シーズンからKOSÉ 8ROCKSのレギュラーダンサーとして活躍している。これまでに国際大会で47回もの優勝を経験。世界トップレベルの実力を誇る。

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