東アジアE-1選手権(韓国)に臨む日本代表のメンバー26人が以下のように発表された。
GK
大迫敬介(サンフレッチェ広島)、早川友基(鹿島アントラーズ)、ピサノアレクサンドレ幸冬堀尾(名古屋グランパス)
DF
長友佑都(FC東京)、植田直通(鹿島アントラーズ)、荒木隼人(サンフレッチェ広島)、古賀太陽(柏レイソル)、安藤智哉(アビスパ福岡)、綱島悠斗 (東京ヴェルディ)
MF/FW
稲垣祥(名古屋グランパス)、ジャーメイン良、川辺駿、中村草太(以上、サンフレッチェ広島)、西村拓真、相馬勇紀、望月ヘンリー海輝(以上、FC町田ゼルビア)、垣田裕暉、久保藤次郎、細谷真大(以上、柏レイソル)、宮代大聖(ヴィッセル神戸)、山田新、大関友翔(以上、川崎フロンターレ)、川﨑颯太(京都サンガF.C.)、宇野弾斗(清水エスパルス)、俵積田晃太(FC東京)、佐藤龍之介(ファジアーノ岡山)
加えて、26人中12人が初招集だ。他の14人も長友と大迫以外は常連ではない。"久々組"が大半を占める。日本代表という体裁ではあるが、内実は積み重ねがまったくない急造チームである。
そうしたなかでどうやってまとまりを出すか。森保一監督は、短期間のトレーニングで結果を残す近道を探ろうとしたものと推察する。
招集メンバー26人の内訳を示してみた。
5人=広島(大迫、荒木、ジャーメイン、川辺、中村)
4人=柏(古賀、垣田、久保、細谷)
3人=町田(西村、相馬、望月)
2人=FC東京(長友、俵積田)、名古屋(ピサノ、稲垣)、鹿島(早川、植田)、川崎(山田、大関)
1人=福岡(安藤)、東京V(綱島)、神戸(宮代)、京都(川崎)、清水(宇野)、岡山(佐藤)
【3バックのチームから多く選出】
広島、柏、町田、FC東京、名古屋、東京V、岡山の7チーム(計18人)は森保式5バック(3-4-2-1)で戦うチームだ。
つまり、鹿島、川崎、神戸、京都から選出された5人は、ふだん森保式3バックをやり慣れていない。一方、やり慣れている選手は21人を数える。
ちなみに今回、ひとりも選出されなかったJ1の7チームの内訳は、4バック系が5チーム(浦和レッズ、ガンバ大阪、セレッソ大阪、横浜F・マリノス、アルビレックス新潟)で、5バック系は2チーム(湘南ベルマーレ、横浜FC)になる。
森保監督が、代表チームで採用する布陣(3-4-2-1)にふだんから接している選手を意図的に選んだことが透けて見える。普段4バックでプレーする選手を可能な限り少なくする。これこそが、急増チームで、しかもトレーニングする時間が短いという制約下で導き出した森保監督の答えだったのだろう。
その影響が顕著に現れた場所は、サイドバック(SB)だ。26人のメンバーのなかに、現在、所属チームで先発レギュラーの4バックのSBとしてプレーする選手はひとりもいない。森保ジャパンにSBは不要と言ったようなものである。
SBというポジションがある4バックで戦うチームは、世界的に見れば全体の7割方を占める。
J1では、森保ジャパンの影響も手伝ってか3バックが幅を利かすが、それでも先述のように、それぞれの関係はほぼイーブンだ。
事実上、排除されたとも言えるSBとしてプレーする選手、たとえば三浦颯太、佐々木旭(川崎)、濃野公人、小川諒也(鹿島)、黒川圭介、半田陸(G大阪)あたりは、この事態をどう見ているか。それぞれの所属クラブの監督にも意見を聞きたくなる。これは小、中、高、大のサッカーにも大きな影響を与えかねない偏りである。協会の技術委員長や技術委員会の見解も問い質したくなる。
いつもの日本代表には、三笘薫、堂安律、伊東純也、久保建英など、所属クラブでウイングを張る選手が目白押しで、他の指導者が育てたウイングを、森保監督はウイングバック(WB)としてプレーさせている。
今回は俵積田、久保藤次郎など、所属チームでWBとしてプレーする選手を選んだわけで、その結果、3-4-2-1上にきれいに収まる選手を選ぶことになった。主に4バック上でプレーする一部の選手を無視するかのように。今回の東アジアE-1選手権が強行軍で行なわれることを差し引いても、強引すぎる判断だと言わざるを得ない。
世界的に少数派の3-4-2-1をそれでも貫きたいのなら「臨機応変」「賢くしたたかに」などと抽象的な言葉ではなく、すべてに向けた明快な説明が必要だ。なし崩しは許されない。 曖昧な言葉で誤魔化そうとすれば誠実さが失われる。ますます悪い流れに向かう。現在がその状態だ。
森保監督のSBを不要とするサッカーは、「サッカーはSBが活躍したほうが勝つ」「いいサッカーとはSBを有効に使うことだ」と、欧州取材でトップクラブの監督やコーチからさんざんレクチャーを受けてきた筆者には、とりわけ残念に思われる。日本のサッカーからSBを消滅させてはまずいのである。