イチロー野球殿堂入りセレモニー体験記 #1(全3回)

 イチローの米野球殿堂入りセレモニーが7月27日に行なわれ、全米から多くのファンが集まった。日本人選手の米殿堂入りは初めて。

日本の野球史にとって画期的なことになるイベントを見て体験するため、7月下旬、米国に渡った。

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【人口2000人の町に3万人の観客】

 高層ビルが立ち並ぶニューヨークのマンハッタンから、車を飛ばして4時間ほどで野球殿堂博物館があるクーパーズタウンに到着する。

 フリーウェイの出口から片側1車線の道路に入ると、なだらかな丘陵地帯の一本道が緩やかなアップダウンを繰り返しながら延々と続く。道の両側には田園風景。その景色が森に変わり、しばらく走ると、左手に木々の間から湖面がのぞく。オトセゴ湖だ。

 南北に13キロ近くの長さを持つこの湖の南端にクーパーズタウンは隣接する。「タウン」と名づけられているが、行政区分としては「ビレッジ」なので、日本語では「村」になる。人口約2000人の小さな村が年に一度だけ、土日の2日間、全米から集まった野球ファンであふれかえる。それが「ホール・オブ・フェーム・ウィークエンド(殿堂入りの週末)」だ。

 厳密には25日の金曜日から28日の月曜日まで、イベントの予定が組まれていたが、ファンのお目当てはなんといっても、26日に行なわれる「レジェンドたちのパレード」と、27日の殿堂入りセレモニーだ。

 クーパーズタウンの地元紙『クーパーズタウン・クライアー』(電子版)によると、27日に村の外れの広場で開催された殿堂入りセレモニーの観客は推定3万人。村の人口の15倍のファンが全米各地、そして日本からこの片田舎にやってきたことになる。

 野球映画の名作に『フィールド・オブ・ドリームス』があるが、「君がそれをつくれば、彼はやってくる」(If you build it, he will come)というセリフが有名だ。映画のストーリーからすると、筋違いではあるが、米国東部の村に押し寄せた、年齢、性別を問わないファンを見ていて、なぜかこのセリフが頭に浮かんだ。

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パレードを見るため、早くから席取りするファンたち photo by Yamazaki Eiji

【往年の名選手が集結】

 24日には多少人通りが増え、翌日に実施されるパレードのコースには早くも場所取りの折り畳みイスが並び始めた。25日になると、お気に入りのチームのレプリカジャージを着たファンがさらに増え、夕方になると、翌日のパレードに備えて、交通規制がなされ、コースの沿道には場所取りの折り畳みイスがびっしりと並ぶようになった。

 パレード当日は、午後6時の開始に向けて、数時間前から歩道で立ち止まってレジェンドを待つファンも増えてきた。沿道にあふれるファンには、お気に入りのチームのレプリカジャージを着た人がますます目立つようになってきた。

 なかでも多かったのが、イチローの現役時代の背番号「51」をつけたマリナーズのユニホーム。オリックスのジャージを着た米国のファンもいた。あちこちで背番号「51」を頻繁に見かけたので、カウントしたわけではないが、イチローのジャージが最も多かったのは間違いない。

 一緒に殿堂入りしたCCサバシアが所属したヤンキースはクーパーズタウンと同じニューヨーク州のチームだが、見た感じではヤンキースのユニホームよりも西海岸のマリナーズのほうが上回っていて、幅広いイチローの人気がうかがえた。

 野球殿堂入り式典には、毎年、過去の殿堂入り選手(Hall of Famer)がクーパーズタウンに集まってくる。米野球殿堂博物館の公式サイトによると、今回は殿堂入りを果たしている往年の名選手ら52人がやってきた。

湖畔にそびえたつ豪華ホテルのオテサガ・リゾートが彼らの宿舎。この期間中、ホール・オブ・フェイマーと家族で貸しきりとなる。レジェンドのパレードはここからスタートした。

 まだまだ明るい午後6時、マーチングバンドの先導でパレードは始まった。フォードやシボレーなど米国車のピックアップトラックの荷台に長椅子が置かれ、そこに座ったレジェンドたちが沿道のファンに手を振る。

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弓子夫人(右)とともにパレードに参加したイチロー photo by Getty Images
 先頭の車に乗るのは、野球殿堂博物館チェアマンのジェーン・フォーブスクラークさんとジョシュ・ラウィッチ館長。次の車には、全米野球記者協会のキャリア・エクセレンス賞を受賞したワシントンポストのトーマス・ボズウェル記者と放送関係者に贈られるフォード・C・フリック賞を受賞したクリーブランド・ガーディアンズのトム・ハミルトンさんだ。

 ここからレジェンドたちが殿堂入りの年次順で登場する。目の前を通る往年のスーパースターに沿道から拍手と歓声が沸き起こった。それに、レジェンドたちは手を振って、気さくに応じる。

 パレードの最後は、今年殿堂入りした3人だ。弓子夫人とともに車に乗るイチローさんが姿を現わすと、ひと際大きな拍手歓声とイチローコール。

まぎれもなく、イチローは、大リーグのレジェンドたちに仲間入りをした。大歓声を浴びながら、目の前を通るイチローさんを見て、強く感じた。

(文中敬称略)

つづく>>

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