イチロー野球殿堂入りセレモニー体験記 #2(全3回)

 ホール・オブ・フェーム・ウィークエンド(殿堂入りの週末)の最大の目玉は、今年殿堂入りする選手たちがスピーチを行なう「殿堂入りセレモニー」だが、ファンにとってもうひとつのお楽しみは、セレモニー前日に行なわれる「レジェンドたちのパレード」である。

 往年のスーパースターたちがピックアップトラックに乗り、次々と目の前を通り過ぎると、沿道からは大きな拍手と歓声が沸き起こった。

ファンの呼びかけに応じて手を振る選手もいれば、なかには言葉を交わす姿も見られる。米国らしい気さくさ、そしてファンとの距離の近さを強く感じさせるひとときだった。

 50台を超えるピックアップトラックでのパレード。元選手だけでなく、3人の元監督とゼネラルマネジャーひとりも参加していた。ほとんどがパートナーや家族とともに乗っていたが、ひとりで荷台に座るレジェンドもいた。

 現役当時のさっそうとした姿と変わらない人もいれば、年月の流れを感じさせるタイプもいる。パレードで撮影したレジェンドたちの近影を、全員というわけにはいかないが、人数を絞ってご紹介したい。

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ジョニー・ベンチ

 1967年から83年までシンシナティ・レッズ一筋で活躍した強打の捕手。チームのワールドシリーズ2連覇を支えた。スター揃いの当時のチームは「ビッグ・レッド・マシン」の愛称で親しまれたが、そのジャージで登場した。89年に殿堂入り。77歳。

【MLB】イチローだけじゃない! ミスターオクトーバー、ビッグユニット、オズの魔法使い...レジェンドだらけの米野球殿堂夢のパレード
首位打者に7度輝いたロッド・カルー photo by Yamazaki Eiji
ロッド・カルー

 1967年から85年までミネソタ・ツインズとカリフォルニア・エンゼルスで活躍。ツインズ時代にはアメリカン・リーグの首位打者に7度輝いた「安打製造機」。細身のスタイルは、現役当時とあまり変わっていない印象。パナマ出身で91年に殿堂入り。79歳。

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通算341セーブのローリー・フィンガー photo by Yamazaki Eiji
ローリー・フィンガーズ

 1968年から85年までオークランド・アレチックス、サンディエゴ・パドレス、ミルウォーキー・ブルワーズで救援投手として活躍し、通算341セーブを挙げた。トレードマークの特徴的なひげは、今も健在だった。92年に殿堂入り。78歳。

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ポストシーズンでの勝負強さから「ミスター・オクトーバ」と称されたレジー・ジャクソン photo by Yamazaki Eiji
レジー・ジャクソン

 1967年から87年までオークランド・アスレチックスやニューヨーク・ヤンキースなど、4球団で活躍した強打の外野手。1973年と77年にワールドシリーズMVP。特にヤンキースがドジャースを破った77年のワールドシリーズ第6戦では3打席連続本塁打。

ポストシーズンでの活躍から「ミスターオクトーバー」と呼ばれた。93年に殿堂入り。79歳。

【MLB】イチローだけじゃない! ミスターオクトーバー、ビッグユニット、オズの魔法使い...レジェンドだらけの米野球殿堂夢のパレード
強打、攻守の三塁手として活躍したマイク・シュミット photo by Yamazaki Eiji
マイク・シュミット

 1972年から89年までフィラデルフィア・フィリーズ一筋で活躍した強打と好守を兼ね備えた三塁手。通算548本塁打を放ち、ゴールドグラブ賞10度受賞。95年に殿堂入り。75歳。

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「オズの魔法使い」と評された守備でファンを魅了したオジー・スミス photo by Yamazaki Eiji
オジー・スミス

 1978年から96年までサンディエゴ・パドレスとセントルイス・カージナルスで遊撃手として活躍。ナショナル・リーグの遊撃手で13年連続ゴールドグラブ賞。傑出した守備力から「オズの魔法使い」と呼ばれ、人気を博した。2002年殿堂入り。70歳。

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通算3255安打、504本塁打を放ったエディー・マレー photo by Yamazaki Eiji
エディー・マレー

 1977年から97年までボルチモア・オリオールズなど5球団でおもに一塁手として活躍。スイッチヒッティングの強打者で、通算3255安打、504本塁打。1983年のワールドシリーズ制覇に貢献した。2003年殿堂入り。69歳。

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アスレチックス時代の92年、サイ・ヤング賞とMVPに輝いたデニス・エカーズリー photo by Yamazaki Eiji
デニス・エカーズリー

 1975年から98年まで、オークランド・アスレチックスなど5球団で投手として活躍。87年にアスレチックスに移籍後、抑えに転向して才能が開花。92年には51セーブを挙げ、サイ・ヤング賞とMVPを受賞した。スマートな体に長髪とひげ。右のサイドハンドからの変化球で打者を苦しめた。通算390セーブ。2004年に殿堂入り。

70歳。

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2632試合連続出場のジャー記録を持つ「鉄人」カル・リプケン・ジュニア photo by Yamazaki Eiji
カル・リプケン・ジュニア

 1981年から2001年まで、ボルチモア・オリオールズ一筋でプレー。選手生活の大半を遊撃手として過ごした身長193センチの大型内野手。通算3184安打を放ち、2632試合連続出場という大リーグ記録を持つ「アイアンマン(鉄人)」の異名で知られる。しかし、パレードで目にしたその姿は、かなりふっくらしており、現役時代の面影はほとんどなかった。07年に殿堂入り。65歳。

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監督としてワールドシリーズを3度制した名称、トニー・ラルーサ photo by Yamazaki Eiji
トニー・ラルーサ

 監督としては、1979年から途中9年間のブランクを挟み、2022年まで通算35シーズンにわたり、シカゴ・ホワイトソックス、オークランド・アスレチックス、セントルイス・カージナルスの3球団を指揮した。ワールドシリーズ制覇を、アスレチックスで1回、カージナルスで2回果たした名将。通算成績は2884勝2499敗、勝率.536。2014年に殿堂入り。80歳。

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サイ・ヤング賞を5度獲得の名左腕、ランディ・ジョンソン photo by Yamazaki Eiji
ランディ・ジョンソン

 1988年から2009年まで、シアトル・マリナーズなど6球団で活躍した大型左腕。サイ・ヤング賞をマリナーズとアリゾナ・ダイヤモンドバックスで計5度受賞している。身長208センチの巨体から「ビッグユニット」の愛称で親しまれ、イチローが入団する前、マリナーズの背番号「51」を背負っていた。パレードではトラックの上でポーズを決めるなど上機嫌だった。2015年に殿堂入り。61歳。

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イチローや松井秀喜と名勝負を演じたペドロ・マルティネス photo by Yamazaki Eiji
ペドロ・マルティネス

 1992年から2009年までの18年間、ボストン・レッドソックスなど5球団で先発投手として活躍した右腕。通算成績は219勝100敗、防御率2.93。サイ・ヤング賞を3度受賞。現役時代よりかなりふっくらした印象だったが、人懐っこい笑顔は当時のままだった。2015年に殿堂入り。53歳。

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通算630本塁打の強打者、ケン・グリフィー・ジュニア photo by Yamazaki Eiji
ケン・グリフィー・ジュニア

 1989年から2010年まで、シアトル・マリナーズなど3球団で強打の中堅手として活躍。通算2781安打、630本塁打を記録し、1997年にはアメリカン・リーグMVPを獲得した。パレードでは、沿道からひときわ大きな歓声が上がっていた。2016年に殿堂入り。55歳。

【MLB】イチローだけじゃない! ミスターオクトーバー、ビッグユニット、オズの魔法使い...レジェンドだらけの米野球殿堂夢のパレード
通算254勝のジャック・モリス photo by Yamazaki Eiji
ジャック・モリス

 1977年から1994年まで、デトロイト・タイガースなど4球団で活躍した投手。通算254勝186敗、防御率3.90の成績を残した。1984年のタイガース、1991年のミネソタ・ツインズ、1992年のトロント・ブルージェイズでワールドシリーズ制覇に貢献し、91年にはワールドシリーズMVPにも輝いた。鋭いスプリットフィンガード・ファストボールを武器に、打者を圧倒した。2018年に殿堂入り。70歳。

【MLB】イチローだけじゃない! ミスターオクトーバー、ビッグユニット、オズの魔法使い...レジェンドだらけの米野球殿堂夢のパレード
歴代最多となる652セーブを記録したマリアノ・リベラ photo by Yamazaki Eiji
マリアノ・リベラ

 1995年から2013年までの19年間、ニューヨーク・ヤンキース一筋で活躍した、メジャーを代表するクローザー。決め球のカットボールを武器に、歴代最多となる652セーブを記録。2019年には記者投票で史上初めて満票による殿堂入りを果たし、いまなお満票はリベラただひとりである。パナマ出身の55歳。

【MLB】イチローだけじゃない! ミスターオクトーバー、ビッグユニット、オズの魔法使い...レジェンドだらけの米野球殿堂夢のパレード
ヤンキース黄金時代の不動の遊撃手として活躍したデレク・ジーター photo by Yamazaki Eiji
デレク・ジーター

 1995年から2014年までの20年間、ニューヨーク・ヤンキース一筋で遊撃手として活躍。通算3465安打、260本塁打、358盗塁を記録した。1996年、1998年、1999年、2000年、2009年のワールドシリーズ制覇に主力として貢献。スマートなたたずまいは現役時代と変わらず、沿道から大きな歓声を浴びていた。2020年に殿堂入り。51歳。

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 独断と偏見で言わせていただくと、ファンの反応が最も大きかったのはイチローさんで、ジーターさん、グリフィーさんにも歓声が上っていたように思う。2025年版イヤーブックの巻頭で、米野球殿堂博物館のジェーン・フォーブスクラーク・チェアマンは「歴史を保存する。卓越性を尊重する。世代をつなぐ。これが私たちの使命」と書いているが、レジェンドたちのパレードはその使命が具現化したものだった。

(文中敬称略)

つづく>>

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