攝津正が語るソフトバンク投打の現状とCSのポイント 前編
リーグ優勝のマジックが「7」まで減ったソフトバンク(2025年9月18日時点/以下同)。9月に入ってからも10勝3敗と好調を維持している。
【先発、中継ぎ陣の状態は?】
――現在2位の日本ハムとは4.5ゲーム差。9月18日の日本ハム戦を勝利し、直接対決は残り1試合です。
攝津正(以下:攝津) ソフトバンクが絶対的に有利になりましたね。15勝3敗2分けと大きく勝ち越しているオリックス戦も(残り12試合のなかで)5試合を残していますしね。残り試合数も少ないですし、チーム状態もいい。大型連敗は考えにくいです。
――9月20日から9連戦が始まりますが、乗りきるためのポイントは?
攝津 中継ぎです。6連戦くらいでもそうなのですが、9連戦となるとより中継ぎを投入しにくくなります。先発が長いイニングを投げられるとは限りませんが、連戦の最初のほうはなるべく中継ぎは使いたくないはず。先発が崩れて中継ぎをどんどん投入する展開になるときついですね。
長いイニングを投げられる中継ぎが木村光くらいしかいなかったのですが、先発の松本晴を中継ぎに配置転換しましたよね。長いイニングを投げる「第二先発」みたいなピッチャーがひとりいると戦いが楽になると思っていましたが、その部分の役割を松本が担うのかもしれません。
――松本投手にはロングリリーフとしても期待ということですね。
攝津 ただ、軽打されてランナーをためてしまうケースが多いんですよ。各球団のバッターに攻略され始めてきたのが気になります。以前は力と力で勝負できていたのですが、最近は相手が対応してきているんです。配置転換がいい方向に作用すればいいのですが......。
――先発ピッチャー陣の状態はどう見ていますか?
攝津 上沢直之がいいですね。(8月20日の)西武戦で二桁三振を取って勝ち投手になったのですが、その時に「体の動きを変えた」という話をしていて。それで状態がよくなったらしいんです。ここ何試合かはずっと安定していますし、これを維持するようであれば、今後は大事な試合を任されるんじゃないかなと。
これまでであれば、リバン・モイネロ、有原航平といったあたりが柱でしたが、上沢のいまの状態であればキーマンになりえます。ただ、モイネロの状態がよくないんですよ。
――有原投手はいかがですか?
攝津 8月後半の3試合はコントロールが乱れて打たれましたが、9月6日の楽天戦で少し改善の傾向が見られたんです。打たれた要因も自分自身でわかっているピッチャーだと思いますし、そのあたりはあまり心配していません。有原に限らず、先発ピッチャーは年間を通して考えると、やはり波があるので。
――先ほども少し話が出ましたが、中継ぎ陣はどう見ていますか?
攝津 セットアッパーの松本裕樹、藤井皓哉、クローザーの杉山一樹が安定しています。問題は、そこまでどうつなぐか。先発が早い回に降板してしまい、試合を立て直さないといけないケースがあるじゃないですか。最近のソフトバンクは、先発が打たれると立て直せていないんです。もちろん、先発が試合を作ることが一番なのですが、崩れる時もあるので。特に連戦で試合を立て直せないとなると、連敗につながりかねません。
――以前、攝津さんは杉山投手について「ポテンシャルは高いけれど、まだ安定感に欠ける」といったお話をされていました。
攝津 間違いなくコントロールがよくなりました。以前は制球を乱してフォアボールを出し、自滅する場面が見られましたが、それがなくなったんです。それと、やはりフォークボールですよ。アバウトなのですがストライクゾーンに投げられますし、空振りも取れる。細かい調整ができるようになったんですよね。それによって波が小さくなりました。
点を取られる試合もあるのですが、3点くらいリードした場面で1失点とか、あまり影響がないところで取られているだけなので。以前はフォアボールを出すと崩れていく心配がありましたが、今は大丈夫そうです。メンタルというよりも、技術面で自信がついたんじゃないですかね。
【野手のキーマンは?】
―― 一方でバッター陣の現状はどう見ていますか? 今季は昨季に比べて打順を動かしている印象もあります。
攝津 ケガ人が出たりしていたので、しょうがない部分ではありますよね。最近は近藤健介があまりよくないですし、山川穂高の不調が長いということもある。
――ただ、誰かが悪かったら他の選手がカバーする流れがありますね。
攝津 柳町達の状態がすごくいい時もありましたし、逆に彼がよくない時は他の選手たちがカバーしていました。中村晃もいい時と悪い時がありますが、うまく選手をやりくりしている印象です。今宮健太がケガで離脱していても、野村勇がいるのでそこまで影響を感じさせません。近藤が打てていなくても、牧原大成が非常にいいですしね。
牧原は野手のキーマンだと思います。9月は少し打率を落としていますが、8月は月間打率4割近く(.385)打っていましたし、今も状態は悪くないです。本人に聞いても「調子はめちゃめちゃいいですよ」と言っていましたから。
――柳田悠岐選手はファームで指名打者での出場が続いていましたが、近日中に外野守備にもつきそうです。
攝津 出られるとしても、シーズンの最後の最後かポストシーズンじゃないですか。ベンチにいるだけでも大きいです。
――チームの課題を挙げるとすれば?
攝津 ケガ人を出さないことですね。あとは若い選手が多いので、これから優勝のプレッシャーがかかる試合で、どういうパフォーマンスを出せるかじゃないですか。
(後編:ソフトバンクがCSで戦いたくないチームは? OB攝津正が日本ハム、オリックス、楽天の警戒すべき選手を語った>>)
【プロフィール】
攝津正(せっつ・ただし)
1982年6月1日、秋田県秋田市出身。秋田経法大付高(現ノースアジア大明桜高)3年時に春のセンバツに出場。卒業後に入社したJR東日本東北では、7度(補強選手含む)の都市対抗野球大会に出場した。2008年にソフトバンクからドラフト5位指名を受け入団。抜群の制球力を武器に先発・中継ぎとして活躍し、沢村賞をはじめ、多数のタイトルを受賞した。2018年に現役引退後、解説者や子どもたちへ野球教室をするなどして活動。通算282試合に登板し、79勝49敗1セーブ73ホールド、防御率2.98。