攝津正が語るソフトバンク投打の現状とCSのポイント 後編

(前編:攝津正から見たパ・リーグ優勝争いは「ソフトバンクが絶対的に有利」 投打のキーマンも挙げた>>)

 攝津正氏に聞くソフトバンクの現状とクライマックスシリーズ(CS)のポイント。その後編では、短期決戦のCSで勝つためのポイント、対戦する可能性があるチームの警戒すべき選手などを語ってもらった。

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【CSで「一番気をつけないといけない」チームは?】

――短期決戦で勝つために大切なことは?

攝津正(以下:攝津) いかにミスを少なくするかですね。大事な場面でのミスは試合の流れをガラっと変えてしまいますし、短期決戦では致命傷につながるので。

 もちろんシーズン中もそうで、ソフトバンクはシーズン前半にけっこうミスが多かったんです。それがだいぶ減ってきたことによって、チームの戦い方が安定してきました。ソフトバンクが日本ハムをスイープした(8月9日~11日の)3連戦では、日本ハムにミスがあってそれが響いた形になりましたね。明確なミスではなくても、例えば点が取れなくてもしっかりした形で攻撃を終えるとか、そういうことが大事です。

――ソフトバンクはCSをどういった形で戦いそうでしょうか。

攝津 今シーズンは打順を固定せず、調子がいい選手をうまく並べた戦い方をしていますが、CSでもそういう形で臨んだほうがいいんじゃないかなと思います。

 気になるのは、先ほど(前編で)も話しましたが、リバン・モイネロの状態が悪いことです。最近の日本ハム戦(9月9日)で7失点しているのですが、今川優馬やルーキーの山縣秀ら主力ではない選手にホームランを打たれているんです。そう考えると、あまりボールがよくないのかなと。

――CSでの対戦が嫌なチームを挙げるとしたら?

攝津 一番気をつけないといけないのは、やはり日本ハムだと思います。投手では伊藤大海、北山亘基がすごくいいですし、チームとしての完成度が高いです。

 それでも、仮にソフトバンクが1位であれば有利ですけどね。基本的にはどのチームも、ファーストステージでエース級を登板させますから。

――日本ハムで警戒すべきバッターは?

攝津 フランミル・レイエスです。ホームランが脅威ですし、チャンスにも強い(得点圏打率.356/9月18日時点。以下同)。あと、郡司裕也に嫌なイメージがあります。数字だけ見ると、ソフトバンク戦では打てていないのですが(打率.194)、すごく粘るんです。ピッチャーは粘られると嫌ですし、日本ハムは長打があるバッターが多いので、粘られた後に気が抜けて一発を食らう、なんてことも警戒しなければいけません。

 それと、最近はリリーフがいい。上原健太がいいですし、金村尚真も2イニングくらい投げてきますからね。柳川大晟の離脱が痛いと思いますが、齋藤友貴哉がいますしね。

――CSで日本ハムと対戦する場合、勝つためのポイントは?

攝津 これはどこと対戦する場合もそうですが、何より初戦です。

仮にソフトバンクが1位であれば1勝のアドバンテージがあるので、初戦を取れたら一気に有利になります。あと、ソフトバンクの場合は先発が試合を作れるか、だと思います。先発が最少失点で6回くらい投げてくれれば、後ろのピッチャーがいいので勝ちが見えてきます。

 その点でもモイネロは心配ですが、シーズン中の登板はまだあると思いますし、CSまで期間もある。その間に調整してくれればいいですけどね。

【可能性がある、オリックス、楽天も分析】

―― 一方、CSでオリックスと対戦するとなった場合、警戒すべき選手は?

攝津 野手であれば、西川龍馬、太田椋、頓宮裕真、中川圭太あたりじゃないですか。9月の上旬に復帰した森友哉はまだ調子は上がっていませんが、技術が高い選手なのでハマったら怖いです。ソフトバンクはチームとしてオリックスを圧倒していますが(対戦成績:15勝3敗2分け)、個々で見ていくと怖いバッターが多いので油断はできません。

 ピッチャーで言えば宮城大弥です。今シーズンはソフトバンク戦で2試合しか投げていませんが、打てていません(対ソフトバンク戦:防御率1.20)。すごく状態がいい、という感じではないんですけど、打ち取る術を持っているというか......。それと、戦列に復帰している山下舜平大の存在も不気味です。

状態がよければそう簡単には打てませんからね。

――楽天と対戦することになった場合は?

攝津 楽天は対戦成績が11勝11敗と五分ですし、先発ピッチャーでは藤井聖、瀧中瞭太あたりを苦手にしているので、そこは不安材料です。仮に楽天をファイナルステージで迎え撃つ立場だった場合も、藤井と瀧中はエース格ではないので、ファーストステージでは使わずに温存する可能性もありますよね。

 バッターでは村林一輝に打たれている印象があるのと、黒川史陽はかなり粘りますし結果も出ているので要注意です。それと、ルーク・ボイト。7月に加入してからすでにホームランを12本打っていますし、コンタクト力とパワーは脅威です。しかも、けっこういい場面で打つんですよね。日本ハムのレイエス同様、相当警戒しなければいけないバッターです。

――CSを戦う上で、ソフトバンクのキーマンを挙げるとすれば?

攝津 3割近く打っていて、いい状態をキープしている牧原大成(打率.302)、柳町達(打率.295)です。近藤健介は、今の状態ではキーマンとは言いにくいです。故障した箇所の影響もあると思いますが、なかなか状態が上がってきません。ただ、シーズンもみんなでカバーしてきていますし、特に短期決戦は調子のいい選手の見極めが大事になるでしょうね。

【プロフィール】

攝津正(せっつ・ただし)

1982年6月1日、秋田県秋田市出身。秋田経法大付高(現ノースアジア大明桜高)3年時に春のセンバツに出場。卒業後に入社したJR東日本東北では、7度(補強選手含む)の都市対抗野球大会に出場した。2008年にソフトバンクからドラフト5位指名を受け入団。抜群の制球力を武器に先発・中継ぎとして活躍し、沢村賞をはじめ、多数のタイトルを受賞した。2018年に現役引退後、解説者や子どもたちへ野球教室をするなどして活動。通算282試合に登板し、79勝49敗1セーブ73ホールド、防御率2.98。

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