高木豊が語る2025年のFA パ・リーグ編
(セ・リーグ編:FA取得したセ・リーグの選手の動向 阪神・近本光司は残留濃厚だが「少し気になる」点も>>)
高木豊氏に聞く今オフのFA戦線、セ・リーグ編に続き、パ・リーグの選手たちの動向について分析してもらった。
【実力ある外野手に行使の気配】
――パ・リーグでFA権を取得した選手のなかで、注目している選手はいますか?
高木豊(以下:高木) 辰己涼介(楽天)です。昨季は最多安打を記録しましたが、今季の成績があまりよくないですし(114試合出場、打率.240、7本塁打、32打点、20盗塁/9月29日時点。
国内の球団であれば、オリックスが似合いそうです。中川圭太や廣岡大志、ルーキーの麦谷祐介ら何人 かの選手がセンターを守っていますが、固定できていません。麦谷をどう育てていきたいかということにも関わってくるかと思いますね。それと、同じくFA権を取得した近本光司(阪神)の動向によっては、阪神が辰己の獲得を考えるかもしれません。まあ、近本が他球団へ移籍する可能性は限りなく低いと思いますが。
――外野手では松本剛選手(日本ハム)もFA権を取得しました。どう見ていますか?
高木 FA権を行使すると思いますよ。万波中正、五十幡亮汰、水谷瞬、矢澤宏太ら、外野陣は若くて才能豊かな選手らが台頭していて層が厚いですからね。ただ、松本も32歳ですし、まだまだ老けこむ歳ではありません。
松本は首位打者も獲っていますし、バッティングの技術は確かです。レフトの守備は本当にうまいですしね。そう考えると、巨人に最適な選手だと思いますよ。足もありますし、バットコントロールがいいので、作戦のバリエーションも増えるはずです。
ただ、松本は日本ハムというチームが大好きな印象があります。自分が愛しているチームでこの先も続けるか、キャリアアップを重視して思いきって移籍するか。日本ハムではこれ以上キャリアを積めないような状況なので、そこをどう考えるかですね。
【「Cランク」のオリックスの右腕は引く手あまた?】
―― 一方、内野手では藤岡裕大選手(ロッテ)もFA権を取得しましたが、活躍できそうな球団を挙げるとすれば?
高木 一時期バッティングがよくなった時期があったのですが、ここ数年はよくないですし(今季は100試合出場、打率.258、4本塁打、24打点、1盗塁)、他球団からの評価が下がってしまったんじゃないですか。ただ、巨人は岡本和真の今オフのメジャー移籍が濃厚と言われていますし、シーズン通しての出場が難しい坂本勇人を代打で起用すると考えると、内野陣にもう少し厚みがほしいところです。
門脇誠は守備はいいのですが、バッティング面で物足りません。
――ほかに注目している選手は?
高木 山岡泰輔(オリックス)です。金銭補償や人的補償などがないCランクですし、FA権を行使すれば人気が出るんじゃないですか。もともと器用で、先発もリリーフも経験していますから、獲得に名乗り出た球団のニーズに合わせられると思うんです。
DeNAやヤクルト、ロッテなど、中継ぎに不安があるチームは欲しいでしょう。日本ハムも、ここにきて中継ぎが手薄になっていますから動くかもしれません。あとは、中日にとっても魅力的だと思いますよ。クローザーの松山晋也が一時期離脱した時、リリーフ陣がガタガタになったじゃないですか。
――今オフもFAの動向から目が離せませんね。
高木 そうですね。FAも注目なのですが、今オフはトレードが盛んに行なわれるような気がするんです。例えば和田康士朗(ロッテ)。今季ほとんど試合に出ていません(15試合出場)。走塁のスペシャリストとして中日が欲しがる可能性がありますし、三森大貴の足(22盗塁)で味をしめたDeNAも注目しているかもしれません。
いろいろお話ししましたが、FAは本人が球団を決められる大切な権利。FA権を取得した選手には、悔いの残らない判断をしてほしいですね。
【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)
1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。