欧州競馬最高峰のGⅠ凱旋門賞(パリロンシャン・芝2400m)が10月5日に行なわれる。今年参戦を予定している日本調教馬は3頭。

いずれも、フランスの前哨戦で見事な勝利を飾っており、日本競馬の悲願達成なるのか、その期待値は日に日に高まっている。

 出走3頭のうち、最初にフランスへ渡ったのは、アロヒアリイ(牡3歳)だ。日本での勝利は新馬戦での1勝のみ。GⅡ弥生賞(3月9日/中山・芝2000m)で3着と奮闘しているものの、これまでの通例からすると凱旋門賞出走すら厳しい、完全に"圏外"の馬だった。

 しかし、GⅠ皐月賞(4月20日/中山・芝2000m)で8着に敗れ、GⅠ日本ダービー(6月1日/東京・芝2400m)出走の可能性が低いと見るや、ここに照準を合わせて7月後半に渡仏。約4カ月ぶりの出走となった遠征初戦のGⅡギヨームドルナノ賞(8月16日/ドーヴィル・芝2000m)を快勝し、自力で凱旋門賞への切符をもぎ取ってみせた。

 それだけでなく、同レースで3着に退けたクアリフィカー(牡3歳/フランス)がのちにGⅡニエル賞(9月7日/パリロンシャン・芝2400m)を勝利。現地でも一躍有力馬の1頭に挙げられるようになった。

 そしてレース直前、アロヒアリイ陣営はさらに"奇策"に打って出た。日本調教馬としては異例とも言える火曜日の追い切りを敢行したのだ。

 レースで鞍上を務めるクリストフ・ルメール騎手の指名によって、追い切りにはかつてディープインパクトが凱旋門賞に挑戦した際の勝ち馬レイルリンクの手綱を取ったステファン・パスキエ騎手が騎乗。同騎手に導かれて、芝コースでじっくりと脚を伸ばした。

 その動きを見守っていた田中博康調教師は、「2週前の動きがキレッキレだったので、正直物足りない感じではありました」と決して満足している様子ではなかった。しかしながら、それこそが火曜追いの狙いでもあった。田中調教師が言う。

「この(火曜追いという)新しい試みについては、レースまでの時間を取りたい、というのもありました。順調にいかなかった前走に比べると、1段階上がっていますし、今日の走りを精査して物足りない部分をこれからの数日間で補っていきたい」

 大一番でも世界をアッと言わせることができるのか、注目である。

 続いてフランス入りしたのは、ビザンチンドリーム(牡4歳)とクロワデュノール(牡3歳)だ。

【凱旋門賞】ついに悲願達成なるか 前哨戦からの上積みもある日...の画像はこちら >>
 ビザンチンドリームは、凱旋門賞と同じコース、距離で行なわれたGⅡフォワ賞(9月7日/パリロンシャン・芝2400m)を制して挑む。

 フォワ賞は、これまでにもエルコンドルパサー、オルフェーヴル、ディープボンドらが勝っている、日本でもお馴染みの前哨戦。ビザンチンドリームは、同レースで馬群の間から力強い差し脚を繰り出して快勝した。

 しかも、GⅠ3勝馬で、昨年の凱旋門賞4着馬でもあるソジー(牡4歳/フランス)を2着に下し、鞍上のオイシン・マーフィー騎手も「道中の手応えから、ソジー相手でも『これは勝つだろう』と思った」と、そのレースぶりを絶賛。この勝利の価値は高い。

 そのビザンチンドリームは10月1日の朝、コワイラフォレ調教場の芝コースで単走の追い切りをこなした。

騎乗した国分優作騎手(凱旋門賞の鞍上はマーフィー騎手)は、「前走よりも2段階はよくなっている」と太鼓判。追い切り後もすぐに息が戻って、心肺能力の高さは特筆ものだ。国分騎手は「日本の2400m戦よりもタフなこちらの2400m戦で、それが生きてきそう」と、凱旋門賞での躍進にも期待を寄せた。

 一度コースを経験したうえ、フォワ賞が例年よりも1週前倒しで開催され、本番までの間隔が中2週から中3週となったこともプラス要素。持久力が求められるような展開になれば、勝ち負けの可能性は一段と膨らむ。

 日本調教馬の"大将格"とも言えるクロワデュノール(牡3歳)は、フォワ賞の翌週に行なわれたGⅢプランスドランジュ賞(9月14日/パリロンシャン・芝2000m)に出走。良化途上の状態ながら、難敵相手に1着入線を果たした。

 その結果を受けて、同馬を管理する斉藤崇史調教師、鞍上の北村友一騎手は、ともにこう口をそろえた。

「良化途上のなかで出走して、いろいろと課題も見えた。それに、そうした状態にあって、重い芝でも勝ちきってくれたことに意味がある」

 そうしてレースを4日後に控えた10月1日、クロワデュノールもビザンチンドリームと同じくコワイラフォレ調教場で追い切りを消化。「求めていたことができました。前回より格段によくなっています」と、北村騎手は好感触を得ていた。

 三者三様に前哨戦からの上積みを見せ、本番に向けて視界は良好。日本調教馬にとって、分厚くて重い扉がついに開かれる瞬間が来るのか。アロヒアリイ、ビザンチンドリーム、クロワデュノール――それぞれの果敢なチャレンジから目が離せない。

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