高木豊が語るDeNAがCSで勝ち抜くためのポイント 前編
10月11日に幕を開けるクライマックスシリーズ(CS)のファーストステージ。リーグ2位のDeNAは、本拠地の横浜スタジアムでリーグ3位の巨人を迎え撃つ。
DeNAは昨年に続き、CSを勝ち抜いて日本一を目指すことになるが、そのポイントはいかに。かつて大洋(現DeNA)の主力選手として活躍し、現在は野球解説者やYouTuberとしても活動する高木豊氏に聞いた。
【「第二先発」も含めてカギを握るピッチャーは?】
――前回のインタビューでは、CSに関してリーグ優勝チームを重視した改革案を伺いました。そちらと考えは異なるかもしれませんが、昨年もCSから日本一まで駆け上ったDeNAについて、まずはピッチャーの起用法からお聞かせください。
高木豊(以下:高木) 現行のシステムではリーグの上位3位まで日本一の可能性があるわけですし、やるからには全力で日本一を目指すのは当然のことです。改革案については今後に期待するとして、CSの展開を考えていきましょう。
DeNAは巨人と相性がいいピッチャーを起用するべきで、東克樹やアンソニー・ケイがいいですよね。ただ、ケイは山﨑伊織と投げ合って勝てていないんです。巨人は初戦、山﨑でくると思うので、DeNAは東でいくべきでしょう(取材後の報道では、第1戦はDeNAが東、巨人は山﨑が先発予定)。
やはり投げ合う相手との相性ってありますからね。たとえば、リバン・モイネロ(ソフトバンク)に伊藤大海(日本ハム)が勝てないとか。実力があるのに、それを発揮できないんです。なので、相性を考えない起用法はあまりおすすめできません。
――ファイナルステージも含め、第二先発の役割を担うピッチャーを立てる必要はありますか?
高木 DeNA のほうは必要かもしれません。ピッチャー陣が、後ろにいけばいくほど弱くなっていきますから。ただ、おそらく東やケイ、アンドレ・ジャクソンら先発ピッチャーが序盤に崩れることはそうそうないんじゃないかと。逆に先発が5回で降板してしまうと長くなりますよね。6回から9回までつながなければいけないので。
――第二先発の候補を挙げるとすれば?
高木 ルーキーの竹田祐です。スタミナもありそうですし、落ち着いた投球ができているので面白い存在かなと。ただ、結局はチームがどう考えているのかです。日本一を目指すためのプロセスを立てるのか、場当たり的にやっていこうとしているのか。この考え方によって先発や第二先発の起用が決まってくるでしょうね。
三浦大輔監督が今季で退任するので、「最後の花道を飾るために日本一を目指す」「日本一でなければどこで負けても同じ。ファーストステージで散ってもいい」と考えるのであれば、対巨人戦にはジャクソン、竹田を先発させるとか。
――あくまで日本一を目指す場合の先発ピッチャーの起用法ということですね?
高木 そうですね。それと、巨人戦は「打ち負けなければいい」という考え方もあると思います。その場合も、今言った先発ピッチャーの順番でいいと思います。
第二先発は、先ほど挙げた竹田のほかに石田裕太郎も候補です。この2人がどういうピッチングをしてくれるかが大きなカギになると思います。先発ピッチャーで起用するなら、やってくれると信じるしかないですし。巨人はリリーフがいいので、いかに序盤の失点を防ぐかがカギになるでしょうから、DeNAとは真逆ですよね。
【巨人の警戒すべき点、理想の打順は?】
――竹田投手や石田投手は先発で起用してもいい?
高木 短期決戦なので、先発はそれほど要らないかなと。日本一を目指すのであれば、ファーストステージとファイナルステージの期間中、中4日や中5日で投げなければいけないピッチャーも出てくるはず。
なので、第二先発のピッチャーを置いて、ある程度点差が開いた展開になった時点で第二先発に任せるとか。そうしていかないと日本一には到達しないですよ。
――巨人戦で警戒すべきところは?
高木 やはり8回の大勢、9回のライデル・マルティネスは巨人の一番の強みなので、それまでにリードしておかなければいけません。大勢はちょっとフラフラしてますけど、それでも力のあるピッチャーですから。逆に7回までであれば、攻略できそうなピッチャーが多いです。
あとは、やはり岡本和真です。昨年のCSでもそうだったのですが、吉川尚輝がいなかったこともあって、岡本との勝負を全部避けましたよね。同じように勝負を避けられる状況を作れるかどうか。とにかく、岡本の前にランナーを溜めないことですね。
――打つほうはどのような布陣がよさそうですか?
高木 蝦名達夫が1番に定着していて状態がいいですし、2番には短期決戦に強い桑原 将志、3番に筒香嘉智、4番にタイラー・オースティン、5番に佐野恵太もしくは山本祐大でもいいです。この並びはまったく問題ないと思いますし、戦力がわりと揃っているんです。結局、打線は水ものですし、その時にどういう状態かによって作戦は変わってくると思います。
ただ、短期決戦だけに、バントなど細かい作戦がおろそかになりがちです。CSでは1試合1打席のプレッシャーが大きいですし、そのような時に細かいことができるかどうか。いかにミスなく遂行できるかがポイントになるはずです。
――筒香選手はシーズンの最終戦で日米通算250本塁打を放つなど、状態がよさそうですね。
高木 状態は非常にいいですよ。筒香のバッティングは(高木氏がDeNAのコーチを務めていた時代も含めて)昔から見ていますが、彼が今のような打ち方をしているうちは、あまり崩れることはないと思います。昨年の日本シリーズではいい場面で打点を挙げていましたし、間違いなくキーマンのひとりでしょうね。
(後編:DeNAのCSファイナル、日本シリーズまでの展開を予想 三浦大輔監督の花道を飾れるか >>)
【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)
1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。