今週の中央競馬は3日間開催。中日となる10月12日には、GIIアイルランドトロフィー(以下、アイルランドT。

東京・芝1800m)が行なわれる。

 昨年まではアイルランドT府中牝馬Sの名称で行なわれていた同レース。今年から府中牝馬S(東京・芝1800m)が昨年まで開催されていたGⅢマーメイドS(阪神・芝2000m)の施行条件を引き継ぐ形で6月開催へと移行され、今年から名称変更となった。

 いずれにしても、この先の大舞台を視野に入れた牝馬限定の重賞であることに変わりなく、今年もGⅠエリザベス女王杯(11月16日/京都・芝2200m)や、GIマイルチャンピオンシップ(11月23日/京都・芝1600m)を目指す、粒ぞろいのメンバーが集結した。

 過去10年の結果を振り返ってみると、1番人気は2勝、2着3回、3着2回。まずまずの成績を収めているが、一方で、人気薄の馬も何度なく馬券圏内(3着以内)に突っ込んできている。研究ニュースの藤田浩貴記者もそのあたりを強調してこう語る。

「昨年は、GⅠ馬のブレイディヴェーグ(2番人気)が貫禄を示して快勝。1番人気のマスクトディーヴァも3着に入って意地を見せました。しかし、2着に入ったのは10番人気のシンティレーション。過去10年の結果を見ても、5番人気以下の馬が8連対しています。ふた桁人気の馬が馬券圏内に食い込んでくることも多く、伏兵馬の活躍が目立つレースと言えるでしょう」

 そうした傾向にあって、3連単では好配当が続出。

10万円を超える高額配当も過去10年で3回出ている。

 そんななか、今年は実績的に秀でた存在が不在。藤田記者も「今年はGⅠ馬の出走がなし。人気の中心になりそうなボンドガール(牝4歳)にしても勝ち切れないレースが続いているだけに、"荒れる"可能性は大いにあります」と言って、波乱ムードを匂わせる。

 そうして、藤田記者は今年のレースで一発が期待できる伏兵候補を2頭、ピックアップした。まずは、2022年のエリザベス女王杯で2着入線を果たしているライラック(牝6歳)だ。

【競馬予想】絶対的な存在がいないアイルランドTは"大荒れ"の...の画像はこちら >>

「馬体重の増減が激しく、終(しま)い一手の脚質ということもあって、成績こそ安定していませんが、近2走では内有利の馬場状態のなか、大外から脚を伸ばして最後は前との差をつめています。

 特に前走のGⅢクイーンS(8月3日/札幌・芝1800m)では、勝ち馬からコンマ3秒差の4着。レース前に美浦から函館に移動した際、体調を崩して1日休んだことを考えれば、中身の濃い内容だったと思います」

 3歳時のGⅢフェアリーS(中山・芝1600m)を勝って以降、3年半以上も勝利からは遠ざかっているが、その間、惜しいレースは何度もあり、6歳になった今も衰えた感じはない。

「年齢的な衰えはなく、陣営も『フレッシュな状態で、前回よりもいい雰囲気』と好感触を得ています。高速決着には若干の不安を抱えているようですが、今年のメンバーなら持ち時計的にもそん色なく、悲観することはないでしょう。

 一昨年の当レースでは、ハナ、クビ差の3着と好走。

舞台適性は高く、立ち回りひとつで上位争いに食い込んできても不思議ではありません」

 藤田記者が推奨するもう1頭は、半姉にサラキア、全兄にサリオスといったGⅠでの活躍馬がいるサフィラ(牝4歳)だ。

「前走のGIヴィクトリアマイル(5月18日/東京・芝1600m)は、好位で運んで13着と惨敗。後方勢の決着となったうえ、マイナス10kgの馬体減も堪えた印象でした。そのレース後は、放牧でしっかりとオーバーホール。秋に向けて英気を養い、ここを目標に仕上げてきました。

 もともと稽古は動くタイプですが、1週前の追い切りではジョッキー騎乗で6ハロン82秒1-1ハロン11秒1という好時計を楽々とマーク。素軽さ抜群で、出来のよさがひしひしと伝わってきました。

 どちらかと言えば、奥手の血統。半姉のサラキアも軌道に乗ったのは5歳秋と晩年を迎えてから。その姉はこのレースを制した勢いで、エリザベス女王杯、GI有馬記念(中山・芝2500m)と連続2着の激走を果たしました。

 サフィラも4歳秋を迎えて円熟味を増しています。1週前の時点で馬体重が約480kgと、春に勝ったGⅡ阪神牝馬S(4月12日/阪神・芝1600m)時からは16kg増のボリュームアップ。

関東への長距離輸送で極端に減らなければ、巻き返しは可能だと思いますし、姉同様の飛躍が期待できるのではないでしょうか」

 絶対的な存在が不在とあって、"大荒れ"もありうる牝馬重賞。ここに挙げた2頭がその一端を担ってもおかしくない。

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