星野伸之が語るオリックスのCS展望 前編

 パ・リーグクライマックスシリーズ(CS)のファーストステージで、リーグ2位の日本ハムと対戦する同3位のオリックス。そのファーストステージを勝ち抜くためのポイントを、長らくオリックスのエースとして活躍し、引退後はオリックスの投手コーチも務めた星野伸之氏に聞いた。

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【エースはどこで起用するのが最適?】

――CSのお話しの前に、岸田護監督の1年目のレギュラーシーズンに対する見解をお聞かせください。

星野伸之(以下:星野) まず、森友哉や宇田川優希、吉田輝星らがシーズン前に故障で離脱し、頭のなかで描いていた選手起用のイメージはだいぶ崩れてしまったと思うんです。リリーフ陣は、ルイス・ペルドモとアンドレス・マチャドがある程度安定していましたが、古田島成龍が離脱するなどやりくりが大変だっただろうなと。トレードで途中加入した岩嵜翔の存在は大きかったですが、なかなかリリーフは固定できませんでした。

 先発陣も山下舜平大や東晃平らがいないなかで苦労したと思いますが、九里亜蓮の存在が大きかったですね。イニングを稼いでくれますし、最初から球数制限なしで投げていたような感じだったので。野手も投手も故障者が多くて頭を悩ませたと思いますが、全体的によく頑張ったと思います。

―― 一方、打線は開幕直後から活発でした。

星野 開幕前は全然打てませんでしたから、うれしい誤算でしたね。ピッチャーを中心とした守りの野球がベースだと思っていたのですが、シーズン序盤は違う色の野球になっていたのかなと。ただ、やはり打線は水ものですから、打線の力だけで上には行けない、ということですね。

――日本ハムと対戦するCSファーストステージに関して、先発ピッチャーの起用はどうなると思いますか?

星野 アンダーソン・エスピノーザが左脇腹を故障してしまい、曽谷龍平も状態が悪いことを考えると、宮城大弥、九里、田嶋大樹が柱になり、山下舜平大をどこで使うかがポイントになると思っていました。

 ただ、「山下をファーストステージの第1戦で使う可能性が高い」と報道されていました。

10月5日の楽天戦で2イニング投げさせているので、調整がうまくできるのかどうかが心配なところです。彼の場合は中6日や中8日など、毎回のように登板間隔をけっこう開けているので。

 一方、1戦目と2戦目で宮城と九里を投げさせ、3戦目があると想定して山下を準備させるという考え方もあります。仮にそれで2連勝して勝ち進んだ場合、山下をファイナルステージの1戦目にスライド登板させる可能性もありますが、スライド登板の調整法が大丈夫なのかという問題もあります。

――山下投手の使いどころがポイントになる?

星野 そうですね。状態が上がってきていますし、山下がファーストステージで登板するのであれば、日本ハムにとって脅威だと思います。

 ただ、山下は中5日での登板やスライド登板の調整をあまりしたことがないので、あくまで僕の意見ですけど、投げさせる日は決めてあげたほうがいいと思います。ファーストステージの第1戦で登板させると決めているのであれば、それはそれでいいと思います。いずれにせよ、山下の起用法がポイントになるでしょう。

【日本ハムの投打、どこから攻略する?】

――リリーフ陣の起用に関してはいかがですか? 山﨑颯一郎投手が復活の兆しを見せ、才木海翔投手は非常に力のある球を投げています。

星野 山﨑や才木を、勝ちパターンで投げさせると事前に決めるのか。それとも、最後はマチャドと決めて連投になっても投げさせるのか。

ファーストステージは最長でも3試合しかないので、マチャドをクローザーとして準備させると思うのですが、才木にも最後を任せるかもしれませんし、そこは予想が難しい。マチャドはエスコンフィールドで打たれている印象もあるので、そこをどう考えるか、という問題もあります。

 結局はブルペンでの調子次第ということになるとは思いますけど、そのほかにも、山岡泰輔をどこに置くのかも注目です。「第二先発」を立てるなら髙島泰都を起用するのかなど、決めごとはいろいろあります。ただ、メンバーはある程度いますからね。

――先発ピッチャーの話に戻りますが、曽谷投手はあまり状態がよくない?

星野 ここ2試合は腕もあまり振れていませんし、真っすぐが抜けてしまっているんです。スライダーはけっこう曲がるのですが、バッターに当ててしまったり制球できていません。そうであれば、曲がり自体はいいので、思い切って真ん中へ投げてもいいのかなと。

(9月14日のソフトバンク戦で)折れたバットが胸部に直撃した影響があるのかはわかりませんが......。ピッチャーは基本的に、横を向いた状態から体重移動をして投げます。仮に「バットが飛んできても避けられるように」という意識があるなら、体を早く開いて投げないといけませんし、そうなると投げる時にボールが引っかかってしまうことがあるかもしれない。ただ、そういう部分を払拭できているから、一軍に上げているとは思うんですけどね。

――日本ハムで警戒すべきバッターは?

星野 やはりフランミル・レイエス、万波中正、清宮幸太郎ら長打力のあるバッターは怖いです。エスコンフィールドは狭いですし、特にレイエスは、ホームランのほとんどをこの球場で打っています。それと、接戦になった時に五十幡亮汰をどこで使ってくるか。今季はけっこうあの足にやられましたからね。

 あと、九里にはチェンジアップにもフォークにもとれるようなボールがあるのですが、僕が見ている限り、レイエスはまったくタイミングが合っていません。それを考えると、九里が投げるときは万波や清宮、郡司裕也だったり、レイエス以外のバッターをマークしたほうがいいかもしれません。

――日本ハムのピッチャー陣はどう攻略しますか?

星野 先発の伊藤大海、北山亘基、達孝太らは簡単には打たせてくれません。ただ、田中正義や齋藤友貴哉らリリーフ陣を打てないのか、といえば、少し隙はあると思います。いかに先発を早いイニングで降ろせる展開に持ち込めるかでしょう。

――オリックス打線の打順に関してはいかがですか?

星野 1番は思いきりがいい廣岡大志、2番は西野真弘がいいと思います。今季の打線はここ数年で比較するとわりと打つのですが、リーグ3連覇していた時のような"嫌らしい粘り"があまりないんです。

 それを唯一できるのが西野です。

ランナーが一塁にいたら、左バッターであれば一・二塁間に引っ張ってほしいところですが、西野はそういうこともできますし、日本ハムの強力な先発ピッチャー陣に球数を投げさせることもできます。右打ちがうまい太田椋が2番でもいいのですが、バントはあまりないと思いますしね。

 4番は頓宮裕真で、5番は状態がいい杉本裕太郎。森友哉は最後にようやく今季第1号が出て、多少は取り戻した部分があると思いますが、本調子にはほど遠い。体が万全でない可能性もあるので、6番あたりでいいのかなと。

 ファーストステージからのCS突破を狙うとなると試合数が多いので、ピッチャーの枚数をどうしても使ってしまいますし、打線がいかに点を取ってピッチャーの運用をラクにしてくれるかがポイントになると思います。

(後編:短期決戦で重要なこと 苦手なソフトバンクとのCSファイナルに進んだ場合、ポイントになりそうな選手は?>>)

【プロフィール】

星野伸之(ほしの・のぶゆき)

1983年、旭川工業高校からドラフト5位で阪急ブレーブスに入団。1987年にリーグ1位の6完封を記録して11勝を挙げる活躍。以降1997年まで11年連続で2桁勝利を挙げ、1995年、96年のリーグ制覇にエースとして大きく貢献。2000年にFA権を行使して阪神タイガースに移籍。通算勝利数は176勝、2000奪三振を記録している。2002年に現役を引退し、2006年から09年まで阪神の二軍投手コーチを務め、2010年から17年までオリックスで投手コーチを務めた。

2018年からは野球解説者などで活躍している。

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