ジャンタルマンタル(牡4歳)は、2歳時に朝日杯フューチュリティS(阪神・芝1600m)、3歳時にNHKマイルカップ(東京・芝1600m)、4歳春に安田記念(6月8日/東京・芝1600m)と、すでにマイルGIを3つも勝っている。日本のトップマイラーと呼ぶにふさわしい実績だ。

 今週のGIマイルチャンピオンシップ(以下、マイルCS。11月23日/京都・芝1600m)でも、おそらく1番人気に推されることだろう。

 そこで、ジャンタルマンタルがその人気に見事に応えることできれば、GI通算4勝となり、同一年のマイルGI春秋制覇も達成することになる。

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 過去10年でこの春秋制覇を達成したのは、2015年のモーリス、2019年のインディチャンプ、2020年のグランアレグリアの3頭。そのうち、モーリスとグランアレグリアは「トップマイラー」という枠を超えて、このジャンルの「絶対王者」「絶対女王」として君臨した。

 モーリスは他に、海外GIの香港マイル(シャティン・芝1600m)、チャンピオンズマイル(シャティン・芝1600m)で戴冠。さらに、芝2000m戦のGI天皇賞・秋(東京)と海外GIの香港カップ(シャティン)も勝っている。一方、グランアレグリアは春秋制覇を含めてマイルGI通算5勝。短距離GIのスプリンターズS(中山・芝1200m)も制している。

 まさに「王者」「女王」と称されるだけの戦績を誇る。

 では、ジャンタルマンタルはこれら2頭と肩を並べる存在、すなわち「絶対王者」の座に就くだけの器なのか。

 それには、若干の疑問がある。

というのも、前走のGⅡ富士S(10月18日/東京・芝1600m)の内容に、いささか物足りなさを感じる部分があったからだ。

 富士SはマイルCSへの重要な前哨戦であり、実際にここ3年は同レースをステップに踏んできた馬が本番でも勝っている。ジャンタルマンタルもその一戦に臨み、勝ったガイアフォース(牡6歳)から半馬身差の2着だった。

 安田記念以来となる、およそ4カ月の休み明け。不利とされる大外枠発走。加えて、勝ち馬より2kg重い斤量(59kg)を背負っていた。

 そうしたことを踏まえれば、トライアルとしてはもちろん上々の内容、結果だったと見ることができる。昨年のマイルCSの覇者ソウルラッシュも、富士S2着から巻き返していることを考えれば、なおさらだ。

 ただ、富士Sのジャンタルマンタルのパフォーマンスについては、こんな見方もある。関西の競馬専門紙記者が語る。

「富士Sの最後の直線の半ばあたりまでは、ジャンタルマンタルの手応えのほうが明らかに上でした。先行したガイアフォースは直線を迎えて早くもジョッキーの手が動いていましたが、ジャンタルマンタルは持ったまま。

それを見て、多くの人が勝つのはジャンタルマンタルだと思ったはずです。

 ところが、残り200m付近でジョッキーがゴーサインを出してからもジャンタルマンタルは、ジリジリとしか伸びませんでした。そして結局、ガイアフォースを捕まえきれなかった。無論、休み明けとか、斤量差とか、その理由はいくらでも挙げられます。

 ですが、本当に日本のマイル界で"王者"として君臨するほどの強い馬であったら、ああいう負けた方はしないと思います。トライアルだから......と言う人もいますが、勝ったガイアフォースだってトライアルでしたからね」

 富士Sのゴール前におけるジャンタルマンタルの走りは、よく言う「負けて強し」という感じでなかったのは確かだ。

 実のところ、あのゴール前での末脚の鈍り方は、この馬の弱点のひとつに由来する点でもあるという。先の専門紙記者が続ける。

「先行して押し切るというレースぶりからして、ジャンタルマンタルは優等生タイプと思えるかもしれませんが、この馬の本来の姿はやんちゃ坊主。レースでは毎回のように行きたがる。富士Sでもレース前半で行きたがって、そこで力を使った分、"ここ"というところでもうひと押しが利かなかった。

 春の安田記念の際も行きたがっていましたが、あの時はうまく抑えが効いたことが功を奏しました。

今回のマイルCSでも、おそらく行きたがるはず。結果を出すには、その際にどこまで抑えられるか、でしょう」

 また、ジャンタルマンタルには体質の弱さからくる不安も抱えている。3歳春のNHKマイルカップを勝って以降は、一戦ごとに長い休みを挟んできている。

「どこに問題があるのかわかりませんが、間隔を詰めて使えていた3歳春までとは違って、今は詰めて使えなくなっている、ということでしょう。もともと一戦ごとに全力投球するタイプですから、それだけ(レースを使うと)反動が大きい、ということなのかもしれません。

 でも今回、マイルCSには中4週で臨みます。久しぶりに詰めて使うことになります。それがどういう結果をもたらすのか、注視したいですね」(専門紙記者)

 こうしてみると、マイルCSで本命視されながらも、ジャンタルマンタルには不安材料ばかり。「絶対王者」への道は、かなり険しいものに感じられる。

 とはいえ、富士Sでは自身も1分31秒台の好時計をマーク。約4カ月ぶりのレースで行きたがってしまった面も、いい"ガス抜き"になったとすれば、今度はゴール前でもたつくようなことはないかもしれない。

 そのうえ、舞台は2戦2勝と好相性の京都コース。

ジャンタルマンタルにとっての追い風も、十分にそろっている。

 前哨戦で苦杯を舐めたガイアフォースをはじめ、アスコリピチェーノ(牝4歳)、ソウルラッシュ(牡7歳)ら、手強い相手がそろう大一番。ジャンタルマンタルはどんな走りを見せるのか、注目である。

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