来季、リーグ3位からの巻き返しを図る巨人。注目されたドラフト会議では、即戦力として期待の社会人・大学生のピッチャーを上位で指名した。
【左バッターは"うまい"選手が多い】
――巨人は上位で投手を指名しましたが、野手も楽しみな選手が多いです。まず、ドラフト4位の皆川岳飛(みなかわ ・がくと/中央大)選手のバッティングはいかがでしょうか? 走攻守で高いポテンシャルを秘めた、右投左打の外野手です。
篠塚和典(以下、篠塚) ボールをバットに当てやすいタイミングの取り方をしていますし、バッティングに柔らかさを感じます。ノーステップで打っていて無駄な動きがあまりなく、コツコツ当てていくのがうまそうです。長打力もあるということですが、どちらかというとうまさを感じるバッターです。
――同じく左バッターの外野手、育成5位の知念大成(ちねん・たいせい/オイシックス新潟アルビレックスBC)選手のバッティングはいかがでしょうか? 昨季のイースタンリーグ首位打者で、今季も打率でリーグ2位の成績を残しました。
篠塚 あくまでも一部の映像を見た限りの印象ですが、ヘッドの使い方がうまい印象です。先ほどの皆川と同じように、バッティングに柔軟性を感じます。詰まった打球がヒットゾーンに飛んでいるシーンがいくつかありますが、こういうヒットが打てるのはいい。特にプロのピッチャー相手になると、完ぺきなヒットなんて10回に1回打てるかどうかですから。
同期の知念と皆川で競い合って外野の一角を担えればよいですけど、知念は育成枠なのでいかにハングリーさを出せるかですね。中山礼都、トレイ・キャベッジ、丸佳浩、若林楽人、佐々木俊輔、萩尾匡也、浅野翔吾、三塚琉生らに加え、日本ハムから松本剛も加わったのでライバルは多いです。
――ヒットゾーンにボールが飛ぶ理由として、どんなことが考えられますか?
篠塚 自分のタイミングでボールをとらえることができています。それとバットの軌道がいいですね。映像で見ると、ストレートや変化球など、いろいろなボールを打てている。あとは一軍のピッチャーと対峙した時にどう対応していくかですね。
――次も左バッターで、育成3位の松井蓮太朗(まつい・れんたろう/豊橋中央高)選手はどう見えますか? コンタクト率が高い打撃が評価されているキャッチャーです。
篠塚 スイングの軌道がいいですね。レベルスイングなので、ボールをとらえるポイントが長い。体勢を崩されて腰が抜けてしまった状態でも、ヘッドをうまく使えていますし、先ほどの2選手同様に当てるのがうまそうです。高校生なので、まずは体を作っていかなければいけませんが、センスを感じますし楽しみな選手ですね。
【右バッターは未来の大砲候補も】
――続いて、右バッターについてお聞きします。ドラフト5位の小濱佑斗(こはま・ゆうと/沖縄電力)選手ですが、パンチ力のある打撃、遠投115メートルの強肩、50メートル走6秒の脚力が光ります。
篠塚 体幹が強そうです。軸がブレないことは大事ですからね。
――ドラフト6位の藤井健翔(ふじい・けんしょう/浦和学院高)選手は、がっちりとした体格の右打のスラッガー候補です(高校通算35本塁打)。打球速度が160キロ超のパワーの持ち主で、逆方向への長打も多い選手です。
篠塚 体型的にも、スイングの感覚としてもパワーヒッタータイプですね。課題はプロのピッチャーの球速にアジャストしていけるかどうか。今のように余計な力を入れずにリラックスして打てれば、ボールをとらえる確率が上がっていきそうです。
やはり、球が速いとグッと力が入ってしまい、バッティングを崩していってしまいがちです。高校生のピッチャーが相手だとゆったりと自分のタイミングで打てますが、プロはボールの速さも質も全然違うので、そこで何を感じるかですね。結果を求めるのではなく、結果を出すためにやらなければいけないことを、練習では意識するべきです。それはルーキーの全員に言えることですけどね。
【即戦力として期待される上位3位までのピッチャーの印象は?】
――では、ピッチャーについてお聞きします。ドラフト1位の竹丸和幸(たけまる・かずゆき/鷺宮製作所)投手の印象はいかがですか? 社会人屈指の左腕で、即戦力として期待されています。
篠塚 私が打席から見たことがあるわけではないので正確には言えませんが、球速以上の速さを感じるストレートを投げていますね。バッターからすると、あまり速いボールがこないような投げ方に見えるでしょうから、ギャップを感じて打ちにくそうです。緩い変化球を見せておいて、ストレートでスパっといくタイプでしょう。コントロールも悪くないです。杉内俊哉(巨人・投手チーフコーチ)のような印象を受けます。
――続いて、ドラフト2位の田和廉(たわ・れん/早稲田大)投手はいかがでしょうか? 最速152キロの変則サイド右腕で、落差のあるシンカーが武器です。
篠塚 ちょっと大勢みたいな感じですね。チェンジアップの軌道が独特でかなり落差がありますし、マウンドさばきや表情など、マウンドにいる時の雰囲気がいいです。中継ぎタイプのような感じはしますが、阿部慎之助監督がどこで起用するのか。いずれにせよ、即戦力として期待できるピッチャーだと思います。
――最後に、ドラフト3位の山城京平(やましろ・きょうへい/亜細亜大)投手について。鞭のようにしなる投球フォームが特長の左腕です。
篠塚 上背はないですが(身長174cm)、投球フォームに躍動感があります。全身を使って体重をボールに乗せていますし、ボールにキレを感じます。バッターからすると、こういうタイプは打ちにくいですよ。ピッチャーが体を目一杯使って投げてくると、バッターはどうしても力んでしまうんです。同じ左腕の先発候補として、竹丸と切磋琢磨してほしいですね。
――巨人のドラフト戦略として、岡本和真選手がメジャーに挑戦することを踏まえ、阪神に1位指名された立石正広選手(創価大)を獲りにいく可能性も感じていましたが、即戦力候補のピッチャーから指名していく形となりましたね。
篠塚 阿部監督は、「とにかくピッチャー陣を立て直さなければいけない」という思いが強かったんでしょう。ドラフトでは目玉となる選手がいて、今回は立石がそうだったと思いますが、アマチュア時代に注目されていなくてもプロで伸びる選手はいますし、そういう選手を見極められているかどうかのほうが大事です。今回のドラフトで指名した選手たちが、来季以降にどんな活躍を見せてくれるのか楽しみです。
【プロフィール】
■篠塚和典(しのづか・かずのり)
1957年7月16日生まれ、東京都出身、千葉県銚子市育ち。










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