日本ハムの右腕・北山亘基が紹介される際、必ずと言っていいほど触れられる過去がある。それは2021年のドラフト会議で、支配下で指名された12球団全体77人中、76番目に指名されたことだ。
京都成章高から京都産業大を経て、ドラフト8位で日本ハムへ入団した北山は、プロ入りする際、こんな目標を掲げていたという。
「大学4年秋に入団が決まったタイミングで、いずれはWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)に出たいなという気持ちでいました。具体的にちゃんと目指したのは、前回大会(2023年)をテレビで見ているなかで、『次は3年後か。そこに入れるように頑張りたいな』って思った時です」
【新庄監督がひと目惚れしたストレート】
プロ1年目、二軍の春季キャンプで新庄剛志監督が北山のストレートにひと目惚れ。そのシーズン、オープナーの一番手として開幕投手に抜擢されると、その後もクローザー、中継ぎとして活躍。1年目は55試合に登板して3勝5敗9セーブ、16ホールドを記録した。
2年目の途中から先発に回り、翌年には開幕ローテーション入りを果たした。入団4年目の昨季は22試合に先発して9勝5敗、防御率1.63(リーグ2位)の成績を残すなど、抜群の安定感を示した。そして5年目の今季、開幕を前にかねてからの目標であった第6回WBCでの侍ジャパン入りを果たした。
頭脳明晰で「教授」というニックネームを持つ北山は、自分のやるべきことを積み重ねていける点に強みがある。
「華々しいルートではありませんが、ここまで着実に歩んでこられたと思います。今後も、その延長線上でしっかり伸ばしていきたいなという気持ちはあります」
WBCを控えた宮崎合宿では、アドバイザーとして参加したダルビッシュ有(パドレス)も、北山の取り組みに関心を寄せた。大学在籍時に、山本由伸(ドジャース)が師事する矢田修トレーナーの存在を知り、地道に努力を重ねてきた。
山本が3年連続で沢村賞を獲得し、さらにMLBでワールドシリーズ制覇という大きな飛躍を遂げる一方、北山も着実に力を伸ばし、今回の侍ジャパンでは共に世界一を目指すチームメイトとなった。普段から一緒にトレーニングすることもある関係だが、北山は現在の山本をどのように見ているのだろうか。
「僕が語っていいようなレベルの選手じゃないというか、もう世界の選手ですし......。ただただすごいというか、尊敬している選手のひとりですね」
【山本由伸と同じトレーナーに師事】
前回のWBCを経て、山本や佐々木朗希(ドジャース)、今永昇太(カブス)がMLBに羽ばたいたこともあり、侍ジャパンは今回も同様の視線を向けられている。メジャーのスカウトやメディアは、次に海を渡る日本人選手は誰かと大きな関心を寄せているのだ。
北山も、その候補のひとりであることは間違いない。最速157キロのストレートに加え、昨季パ・リーグで被打率.138を記録したフォークボールという武器を持つ。さらに、山本と似た投球フォームも、注目を集めるのではないだろうか。
「いや、タイプは似ているようで、全然似ていないと思います。ただ、取り組み方が同じという点で、僕も矢田先生の指導のおかげで成長できた部分は多くあります。そういう意味では、似ている部分はあるのかもしれません」
矢田トレーナーの指導の下、北山はBCエクササイズを中心に取り組んできた。ブリッジややり投げといった地味なメニューを通じて、全身を連動させて力を発揮する方法を身につけていく。部分的に筋肉を鍛えるウエイトトレーニングは行なわないが、ある意味、それ以上にハードな取り組みだ(※詳細は拙著『山本由伸 常識を変える投球術』参照)。
北山はこう続ける。
「あの取り組みは簡単なものではなく、時間もかかります。しかし、根気強く続ければ必ず成果は見えてくると、僕は信じています。そうした点に、よりいっそうフォーカスしてもらえたらと思います。そのためにも、僕自身もしっかり結果を出して証明していきたいという思いがあります」
【投手のすべてのポジションを経験】
今回のWBCに臨む侍ジャパンは、もともとリリーフ専門の投手が5人しか招集されていなかった。さらに、平良海馬(西武)、石井大智(阪神)、松井裕樹(パドレス)がアクシデントにより離脱。追加招集された藤平尚真(楽天)を含めても、中継ぎのスペシャリストは大勢(巨人)、松本裕樹(ソフトバンク)の3人しかいない。
そこで注目されるのが、プロ1年目にリリーフ経験のある北山の起用法だ。宮崎合宿中、北山はこう語っていた。
「ケガ人が出て辞退者もいるなかで、役割は流動的になってくると思います。(首脳陣から)あまり断定的な指示はありませんが、いつでもカバーできるように、対応できるようにというニュアンスで伝えられています。型にとらわれないというか、どこでも対応できる柔軟な考え方やイメージで臨みたいと思っています」
昨季パ・リーグで7位となる143奪三振を記録したように、三振が奪えるのはリリーフ向きと言えるだろう。
「そう言ってもらえるのはうれしいです。それができたらいいなと、自分でも思っています。1球目を、球速だけでなく心の準備も整えた上で投げられるかどうかは非常に大事だと思いますし、そこは特に意識しています」
入念な準備を重ね、本番に臨むことで、さまざまな経験を積んできた。日本ハム入団後は、新庄監督からあらゆる役割をまかされてきたことが、大きな財産になっていると北山は語る。
「開幕戦に限らず、1年目から中継ぎや、同点やビハインドでのセットアッパー、クローザー、そして先発もやらせてもらいました。すべてのポジションで投げた経験が、今に生きていると思います。それがなければ、今回選ばれることもなかったでしょう。そういう意味では、本当に感謝しています。固定観念にとらわれない育て方をしてもらったおかげで、そうした力を発揮できたのだと思います」
晴れの舞台に送り出される際、新庄監督からはこう激励されたという。
「シーズンのことを変に考えてやらなくていいから、侍ジャパンでは全力で、日本のために頑張ってきてくれ」
世界一へのキーマンは大舞台でどんな投球を見せるのか。大きな期待を背負い、勝負のマウンドに上がる。










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