侍ジャパンワールド・ベースボール・クラシックWBC)連覇をかけた戦いは、いよいよ一発勝負のステージに入る。日本時間3月15日、準々決勝の相手は強豪ベネズエラだ。

 1番のロナルド・アクーニャJr.(ブレーブス)を筆頭にMLBで活躍する強打者が並ぶ強力打線を、侍ジャパン投手陣がどれだけ抑えられるか。ポイントになりそうなのは、先発・山本由伸(ドジャース)のあとを受ける投手だ。そんななか、二番手として予想されるひとりが、絶好調をキープする種市篤暉(ロッテ)である。

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【侍投手陣も驚嘆した"消えるフォーク"】

 大会初登板となった第2戦の韓国戦では5対5の7回表に登板し、三者連続三振で直後の逆転劇につなげた。

「いい場面で投げたいと思っていましたし、点を取られてはいけない状況だったので、自分の持ち味を出して、いい流れを持ってこられたんじゃないかなと思います」

 種市の最大の武器は、奪三振力だ。本人も自負を持ってマウンドに上がっている。

「自分は三振を取れるピッチャーとして選ばれていると思うので、いい場面でも、ピンチの場面でも三振を取れるように頑張りたいです」

 最速156キロのストレートは高めに、落差の大きなスプリット(フォーク)は低めに。自身のよさを最大限に発揮するための制球力に加え、光るのは落ち着きと観察眼だ。

「審判が高めの真っすぐをよく取ってくれていたので、投げやすかったです」

 WBCのストライクゾーンは、NPBのそれより若干高めの傾向がある。そこをうまく察知し、強い真っすぐを生かしているのだ。

 加えて、魔球と言えるような効果を発揮しているのがスプリットである。2月中旬からの宮崎合宿でも、投手陣の関心を集めていた。

 合宿2日目の2月15日。

初めてブルペン入りした種市に熱視線を送ったのが、同じパ・リーグでフォークを持ち球とする宮城大弥(オリックス)だった。

「ほかの人にはない球って言うか......。僕もそういうボールを投げたいと思っているので、データを見て、こんな感じなんだと思いました」

 特徴のひとつは、"消える"と形容される変化だ。同じく目を凝らした伊藤大海(日本ハム)もこう話している。

「シーズン中からとんでもないなと思っていました。自分が思っていた数値と、実際に投げている数値がどんなものなのかを見比べてみたいなと。とくにフォークがやばいです。真っすぐもすごいけど、空振りを奪える理由がそこにあるなって感じます」

 真っすぐ、スプリットともに一級品だが、それぞれを組み合わせて相乗効果を発揮する。そうしたピッチングに凄みを感じると話したのが、髙橋宏斗(中日)だった。

「本当に見てほしい。とにかく球筋がすごい。種市さんの真っすぐとフォークのコンビネーション、あれは手が出ないです。

回転数もそうですけど、回転軸とか変化量とか、あれはすごいです」

 球筋がすごいというのは、ストレートと同じような軌道からストンと落ちるということだろうか?

「そうとも限らず......なんか深いですね、野球って」

 同じ投手がひと言では表せないほど、そのピッチングには深みがあるという。同じくストレートとスプリットが投球割合の7割超を占める髙橋に、感嘆させるほど種市の投球は異次元にあるようだ。

中村悠平は「一級品」と絶賛】

 視点を変えて、ボールを受けるキャッチャーはどう感じているのだろうか。今季でプロ18年目、35歳の中村悠平(ヤクルト)はこう語った。

「久しぶりに一級品のフォークを見ました。なおかつストライクゾーンの出し入れをするので、ものすごく器用だなって思いました。フォークにとらわれがちですけど、真っすぐの質もすごくよかったので、すごいなと思いましたね」

 一級品のフォークとは、どういうボールなのか。

「落ち幅もそうですし、速さ、強さ、そして真っすぐの強さ。前回、(2023年WBCで侍ジャパンの投手コーチだった)吉井(理人)さんも相当期待していると聞いていたので、そのとおりの球を投げていたなと感じます」

 種市が昨季投げたスプリットの平均球速は139.7キロ。ストレートは同148.7キロで、この2球種が投球割合の8割以上を占める。

 近年注目される「ピッチバリュー」という、その球種でどれだけ失点を防いだかを表す数値を見ると、スプリットは「8.3」と非常に高い。ちなみに宮城のフォークは「−0.8」、伊藤のスプリットは「0.6」、髙橋のスプリットは「1.3」だった。

 種市が昨季投じたスプリットの「空振り/スイング率」はリーグ2位の27.4%だったが、中村は「操り方が上手」と評価する。

「落差というより、器用というか。振らせるフォークだったり、カウントをとるフォークだったり。フォークだけでも2種類あるかなって感じです」

 2種類のスプリットを自分のボールとして操る。それができているからこそ、ベンチも安心して送り出すことができるのだろう。

【日に日に高まる期待】

 2月27日、中日との強化試合で4回に二番手として登板し、打者3人を無安打に抑えた投球を井端弘和監督はこう評した。

「1球目からマックスでいけるところはすごかったと思います。 彼の特徴のフォークがインコースからアウトコースというか、ちょっとスライド気味に落ちたり、食い込んで落ちたりというところでは、非常にいいピッチングだったなと思います」

 本番のWBCでは2戦目の韓国戦につづき、3戦目のオーストラリア戦では3点リードの8回に登板して三者凡退。ストレートは高めに、スプリットは低めに集めて2つの三振を奪った。

「連投したのは6、7年ぶりで、ちょっとブルペンでは疲れているなと思いましたけど、この大会にかける思いは強いので。そこは気にかけずに、行けるところまで投げたいなと思います」

 8回から登板することは、直前に告げられたという。それでもしっかり肩をつくり、気持ちを入れてマウンドに向かえるからこそ、首脳陣も大事な場面を任せられるのだろう。

 日に日に種市への期待感は高まり、オーストラリア戦では前日の韓国戦以上に東京ドームのスタンドから大声援が送られた。

「歓声がすごく、認知されてよかったなと思います。でも、また明後日(10日のチェコ戦)からも試合がつづくので、今日より、もっといいピッチングができればと思います」

 結局グループリーグは2試合に登板し、打者6人を無安打、5奪三振。これ以上ないピッチングを披露した。

 首位通過を決めて迎えたチェコ戦では出番がなく、決勝ラウンドはよりいいコンディションで迎えられるはずだ。海外のスカウトやメディアが「次に世界を驚かせる日本人投手は誰か」と熱視線を向けるなか、大一番のベネズエラ戦、そして以降の一発勝負で種市はどんなピッチングを見せてくれるのか。

 連覇を狙う侍ジャパンにとって、カギを握るひとりになるのは間違いない。

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