第98回選抜高校野球大会がいよいよ開幕する。今大会は、昨夏の王者・沖縄尚学や昨春優勝の横浜をはじめ、花巻東、山梨学院、大阪桐蔭など全国の実力校が顔を揃え、例年以上に優勝争いの行方が読みにくい混戦模様となった。

はたして春の頂点に立つのはどのチームなのか──。高校野球を知り尽くした5人のライターが、それぞれの視点とデータ、そして直感をもとに優勝校を占った。

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楊順行氏(ライター)

優勝予想:専大松戸

 順当にいけば優勝候補は、北から花巻東、横浜、山梨学院、神戸国際大付、沖縄尚学といったところだろう。花巻・萬谷堅心、横浜・織田翔希、山梨・菰田陽生、沖縄・末吉良丞ら好投手の存在、そして豊富な試合経験や打線の充実が理由としてあげられる。

 ただこのうち、横浜と花巻東、神戸国際大付と山梨学院は8強まで同じブロックでつぶし合いとなると、抜け出してくるのが大阪桐蔭か。準々決勝までは、比較的対戦相手に恵まれた印象だ。

 ただ、過去に同じ日程から優勝経験があるとはいえ、しんがりの登場の大阪桐蔭は日程的にキツい。夏春連覇のかかる沖縄尚学も、開幕戦で強力打線の帝京と当たるから、これもどうなるかわからない。

 まあ、それを言ったらどこも条件はイーブンだとして、気になるのは専大松戸だ。昨年春の関東大会で選抜Vの横浜を破り、新チームでも秋の関東大会で織田の残る横浜を下した。

 得点源は4番の吉岡伸太朗で、昨秋の公式戦11試合で打率は4割超、打点は11。打線は切れ目がなく、吉岡のほかにも投手を除く8人が7打点以上と充実しており、大会を終えれば78歳を迎えるベテラン・持丸修一監督も「久しぶりに攻撃力のあるチームができた。

全国制覇を目指したい」と力こぶだ。

 ディフェンス力もいい。門倉昂大、小林冠太の二本柱はとも打たせて取るタイプだが、それだけに大崩れせず、昨秋の1試合あたりの平均失点は1.7点程度。出場32チームのうち失点が2点以下というのはこの専大松戸ほか10チームしかなく、専大松戸は平均得点でも32チーム中4位。平均失点2点以下で平均得点も10位以内というのはほかに大阪桐蔭、神村学園、帝京が目立つくらいで、投打のバランスが整ったこの4チームを優勝候補としておく。

 で、結論。ほかの方との重複を避け、専大松戸◎、初戦が横浜という厳しいゾーンに入った神村学園を○に。果たしてどうなりますか。

 ちなみに......新潟出身の筆者としては、21世紀枠選出を除いて初めての2校出場となった県勢に注目しています。

戸田道男氏(編集兼ライター)

優勝予想:大阪桐蔭

 昨年、春夏とも甲子園出場を逃す不振の年を味わった大阪桐蔭が、2年ぶりカムバックの大舞台で春夏通算10度目の優勝を果たすと予想する。

 組み合わせ抽選の結果を見ると、強豪同士が初戦で激突する好カードが続出。とくに、センバツ連覇を狙う横浜が神村学園と当たり、その勝者が花巻東と智辯学園の勝者と2回戦で、さらに東洋大姫路、花咲徳栄らが準々決勝で待ち構えるという「死のブロック」などは、どこが勝ち上がってくるか予想するのは至難の業。

 ほかにも、昨秋明治神宮大会決勝カードの再現となる九州国際大付と神戸国際大付が初戦で実現。この勝者と準々決勝でぶつかるゾーンにはドラフト候補・菰田陽生を擁する山梨学院がいて、ここもまったく展開が読めない。

 こういう厳しいゾーンから逃れて、序盤から比較的腰を落ち着けて戦えそうなのが出場32校中しんがり登場の32番クジを引いた大阪桐蔭。

 昨秋は近畿大会準決勝で神戸国際大付に敗れたが、153キロ右腕・吉岡貫介、192センチの左腕・川本晴大らの投手陣に加え、近畿大会でサイクル安打の4番・谷渕瑛仁、強打の3番・内海竣太らが軸の攻撃陣も強力。

 主砲・谷渕は今大会から採用されるDHでの起用が見込まれ、いち早く新制度に対応して打線のパワーアップも図られた。加えて、西谷浩一監督率いる大阪桐蔭は、前回優勝の2022年春も32番クジのしんがり登場、もっと言えば、根尾昂、藤原恭大らが2年時に優勝した2017年春もやはり32番クジと、ここ10年で2度も優勝を飾ったゲンのいいクジをまたも引き当てた「強運」を買いたい。

 高校野球は7イニング制導入に待ったなしの機運が高まり、9イニング制で戦う甲子園大会は果たしてあと何度開催されるのか。7イニング制導入に強く反対の立場を表明している西谷監督の「甲子園最多勝監督」としての手腕がさえわたる大会となるだろうか。

元永知宏氏(ライター)

優勝予想:山梨学院

 今大会のテーマは、経験値と伸びしろだ。下級生の時から甲子園を沸かせたエースや強打者の成長が優勝争いを左右することになるだろう。

 昨夏の甲子園を制した沖縄尚学(沖縄)の末吉良丞、新垣有絃、山梨学院(山梨)の二刀流・菰田陽生、昨春王者・横浜(神奈川)のエースナンバーを背負う織田翔希、1年生の夏から甲子園に連続出場している花巻東(岩手)の強打者・古城大翔など逸材が揃う。

 2024年春の選抜から2025年夏の甲子園までの4大会で準決勝に進出した16校のうち、関東、東京勢が8校。

この勢力図が変動することは考えにくい。この選抜でも、彼らが勝ち上がると予想する。

 そのなかで優勝候補の筆頭に上がるのが、秋季関東大会を制した山梨学院だ。最速152キロのストレートを投げ、長打力もある菰田陽生、技巧派サウスポーの檜垣瑠輝斗は2年生だった昨夏、甲子園で十分な実績を残した(準決勝で沖縄尚学に敗退)。ドラフトの目玉でもある菰田は、明治神宮大会でサードを守るなどさらなる伸びしろを感じさせる。

 野手陣は力強い打撃と小技を兼ね備えているし、2023年春にチームを日本一に導いた吉田洸二監督は継投のうまさと競り合いの強さに定評がある。この3年間で、甲子園で15戦して12勝3敗という驚異的な成績を残している。

 対抗は、昨年春の選抜で優勝した横浜(神奈川)。150キロを超えるストレートを投げ込む織田翔希がいるが、1回戦で対戦するのは神村学園(鹿児島)。難敵を撃破しても、花巻東と智辯学園(奈良)の勝者との対戦が待っている。しかし、この厳しいブロックを勝ち上がれば確かな自信になるはずだ。

 もう1校気になるのが、昨夏の優勝校、沖縄尚学だ。

2年生で主戦を任されたふたりの投手、サウスポー・末吉と右の新垣の投球次第では昨夏同様の快進撃が期待できる。過去に夏春連覇を果たしたのは4校だけ。1983年の池田(徳島)以来40年以上も出ていない。

田尻賢誉氏(ライター)

優勝予想:崇徳

 今年も横浜が強い。

 関東・東京でぎりぎりの6校目の選出ながら、セイバーメトリクスの数値は突出している。攻撃面はBB/K、OPSともに出場32校中トップ。さらに投手力を表すK/BBも4位。この3部門すべてで4位以内に入っているのは横浜だけだ。エースの織田翔希をはじめ、小野舜友、池田聖摩、江坂佳史ら昨春の優勝を経験したメンバーも多数残り、個々の能力、経験ともに他の追随を許さない。

 セイバーメトリクスの数値と組み合わせから筆者が予想するベスト4は、横浜のほか、崇徳、専大松戸、大阪桐蔭。冒頭で述べたように横浜が優勝候補筆頭なのは間違いないが、それだと面白みに欠ける。また、総合力ではトップ3に入る実力を持つ神村学園といきなり激突することもあり、初戦敗退の可能性もある。

 そこで注目したいのが崇徳だ。昨夏は広島大会決勝で甲子園まで「あと1アウト」まで迫りながら広陵に逆転負け。その悔しさを経験した先発メンバーのうち6人が残る。

 最大の強みはエース・徳丸凛空の存在。下級生から甲子園で活躍する織田(横浜)、菰田陽生(山梨学院)、末吉良丞(沖縄尚学)の"ビッグ3"より派手さも知名度もないが、安定感は3人に引けを取らない。制球力があり、複数の変化球でストライクが取れる左腕を春の時点で打ち崩すのは困難だ。

 守備も12試合で8失策と安定しており、徳丸のコンディションさえ万全なら、失点を計算して戦うことができる。中国大会を全試合完投したように頼れる投手が徳丸ひとりなのが心配だが、球数少なく打ち取る投球ができる能力はある。

 あとは打線がどれだけ援護できるか。秋は捕手ながら1番を打つキャプテンの新村瑠聖(りゅうせい)が勢いづけ、中国大会では4試合中3試合で初回に得点した。1年春からレギュラーで、攻守の要。さらには精神的支柱でもある新村の出来がチーム浮沈のカギを握るといっても過言ではない。

 大会中にバッテリーを助けるラッキーボーイが出てくれば、初出場で旋風を巻き起こした1976年の優勝が現実味を帯びてくる。

菊地高弘氏(ライター)

優勝予想:大阪桐蔭

 今大会は好投手を擁するチームが多いが、大阪桐蔭の左右二枚看板は能力的にも機能的にも、他を圧倒していると感じる。

 エース右腕の吉岡貫介は身長174センチと上背はないものの、強烈なスピンのかかった快速球を武器にする。一方、2年生左腕の川本晴大は身長192センチの長身で、縦に叩き下ろす角度のある投球が魅力だ。

 ともにプロスカウトが注目する潜在能力を秘めるが、対戦相手は間違いなく両者の球筋の違いに戸惑うはず。近年の甲子園スターで例えると、金足農・吉田輝星(オリックス)の浮き上がる球筋に慣れたと思ったら、リリーフで真上から投げ下ろす藤田琉生(日本ハム)が出てくるようなものだ。

 2022年春を最後に甲子園優勝から遠ざかる大阪桐蔭だが、敗れる年は守備の綻びが目立っていた。今年のチームはセンターラインを中心に守備が堅く、安定した試合運びが期待できる。主砲の谷渕瑛仁の内野守備に不安を残すが、今大会から導入されるDH制の恩恵も受けられるだろう。

 大会全体を通して見ると、開幕戦の帝京対沖縄尚学の勝者が勢いづくような予感がする。16年ぶりに選抜に帰ってきた帝京が勝てば、「帝京魂、復活」のニュースに世間も沸き立つだろう。変則左腕・仁禮パスカルジュニアが昨春の石戸颯汰(浦和実→拓殖大進学)のように旋風を巻き起こすかもしれない。

 一方、沖縄尚学は昨夏の甲子園優勝の原動力になったエース左腕・末吉良丞が、不振に苦しんできた。だが、いくら本調子からほど遠くても、甲子園マウンドに立てば実力を発揮するのが末吉の強さでもある。強烈なアドレナリンが分泌されれば、今春も再び甲子園の主役になるかもしれない。

 組み合わせ抽選会の結果、「死のブロック」に入った智辯学園も気になる。初戦は花巻東、勝っても2回戦で横浜と神村学園の勝者と対戦し、準々決勝も花咲徳栄や東洋大姫路らが対戦候補になる。だが、どんなに強いチームであっても、智辯学園のエース左腕・杉本真滉(まひろ)と一発勝負で対決するのは嫌がるはずだ。

 OBの伊原陵人(阪神)を彷彿とさせるマウンド度胸と、再現性の高さ。死線をくぐり抜けるなかでたくましさを増し、一気に頂点を極める可能性もあるだろう。

 現時点での私の持ちうる情報と直感をフル稼働して予想してみたが、いつも大会が終わる頃には「浅はかでした」と思わされるのがお約束になっている。今大会も私の想像を超える、熱い展開になることを期待したい。

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