セルジオ越後の「新・サッカー一蹴両断」(39)

【サッカー日本代表】セルジオ越後「協会はワールドカップベスト...の画像はこちら >>

「優勝」を目標に掲げながら、ベスト32でワールドカップを終えたサッカー日本代表。ほどなくして、日本サッカー協会は森保一監督の半年間続投を決定した。

おなじみのご意見番、セルジオ越後氏はそのプロセスや賛否の声が聞こえてこない現状に、強い違和感を抱いている。‌

【日本代表の監督人事はいつからこんなに甘くなったのか】

 森保一監督の半年間の契約延長。日本サッカー協会の判断と、それに対する世の中の反応には違和感しかないね。

 プロの世界では結果がすべて。北中米ワールドカップで、彼は期待された結果を出せなかった。選手とともに公言していた「優勝」は現実的な目標ではなかったにしても、初のベスト8どころか、前回大会のベスト16を下回るベスト32で敗退した。普通なら責任問題になるよ。他のワールドカップ出場国を見ても、満足のいく結果を出せなかった国の監督のほとんどが批判にさらされ、辞めている。

 一方で、日本がベスト32に終わっても「感動をありがとう」みたいな雰囲気になったのは、結局、応援している側も本気で優勝を期待していなかったんじゃないかな。少なくとも僕は、今回もベスト8に進出できなかったことにガッカリしているけどね。「くじ運が悪かったから仕方ない」という声も聞こえてきたけど、組み合わせは事前にわかっていたのだから何の慰めにもならない。

 では、なぜ協会は森保監督の半年続投を決めたのか。一番の理由はベスト32敗退という結果を失敗だと認めたくないからだろう。

 森保監督を辞めさせれば、その結果を失敗だったと認めることになり、批判の矛先が自分たちにも向く。だから、反省や総括もそこそこに「感動をありがとう」ムードをうまく利用して続投させた。そうとしか考えられない。

 日本代表の監督人事はいつからこんなに甘くなったのだろう。昔は加茂周さんがワールドカップ予選中に更迭されたこともあったのに。シビアに結果を求められるという意味では、Jリーグのクラブの監督のほうがよっぽど大変だよ。残留争に巻き込まれれば、シーズン中でも当たり前に解任される。

 また、単純に比べられないかもしれないけど、野球も厳しいよ。今年のWBCで、日本は世界一を目指しながらベスト8で負けて、井端弘和監督は大会後に退任した。帰国前にすでに、「結果がすべてなので」と監督を辞める考えを明かしていたよね。

【人間性と結果責任は切り分けるべき】

 僕は森保監督とは昔からの仲だし、いかにも日本人らしい真面目な人柄で信頼のできる人間だ。また、日本代表監督就任以前にはサンフレッチェ広島で3度のJリーグ優勝を達成するなど、指導者としてもすばらしい実績を残している。

でも、人間性や過去の実績と、結果責任は切り分けて考えるべきだろう。

 ベスト32のブラジル戦に負けた直後、鎌田大地が「僕たちがもっと日本サッカーを盛り上げて、よくして、日本にとってこのスポーツが国技になるくらいにならないと、やっぱり(優勝は)取れない」と実感を語っていた。翌日には「ブラジルやアルゼンチンのように優勝を目指す国は、サッカーが一番。才能のある選手がみんなサッカーをやって、競っている」とも語っていたようだけど、そういう国はベスト32で負けたら大変なことになるよ。監督が解任になるのはもちろん、協会の強化責任者や会長の責任問題に発展する。メディアも国民も黙ってはいない。

 一方で日本は、「優勝」を目標に掲げながらベスト32で敗退しても、帰国時の空港では拍手で迎えられた。森保監督の半年間の続投、その後に現U-21日本代表を率いる大岩剛監督が就任することが決まっても、議論はおろか、賛否の声もあまり聞こえてこない。「国技」どころか、その程度の関心しか持たれていない現状は残念だ。

 僕はもう来日して50年以上になる。今回は本当にベスト8進出を見たかったけど、その夢はまた次に持ち越しになってしまった。4年後には僕もどうなっているかわからないし、時間を無駄にしてほしくない。

いずれにしても、日本サッカーにはもっと議論が必要だ。

(40)を読む>>>アジアカップ後の大岩剛監督就任に、セルジオ越後「時間がもったいない。今すぐ代表スタッフに入れるべき」

渡辺達也●構成 text by Tatsuya Watanabe

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