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ソフトバンク榛葉淳氏 × Dリーグ神田勘太朗氏  特別対談(後編)

 10月6日(火)から7シーズン目に突入する日本発のプロダンスリーグ「Dリーグ」。創設時よりトップパートナーを務める、ソフトバンク株式会社の榛葉淳取締役会長と、Dリーグの神田勘太朗COOの特別対談後編では、両氏がテクノロジーを活用したDリーグの未来構想について意見を交わした。

【AI・ITとDリーグの融合】

――ソフトバンクはこれまでにDリーグを活用して、「NFT」による推し活体験の提供や「AIスマートコーチ」によるダンス教育活動などに取り組んでこられました。これらの活動を通してどのような手ごたえをつかんでいますか。

榛葉 ソフトバンクのグループではスポーツの領域で、プロ野球の福岡ソフトバンクホークスを保有し、DリーグのほかにBリーグでも同じようにゼロからトップパートナーとして歩ませていただいています。AIカンパニーであり、ITインダストリーである当社が、ITとスポーツの融合という側面で、どのようにお役に立てるのかと考え、これまで挑戦し続けてきました。

 昨今、人気スポーツの野球やサッカーですら、地域格差、指導者格差があり、これはダンスも同じ状況だと感じています。歴史的な背景もあるかと思いますが、中学校で必修化されながらも、指導者が少ないのが現状です。そんななかでAIスマートコーチを活用すれば、タブレットやスマートフォンを介して、誰もがいつでもどこでも学ぶことができます。たとえばバンプの動きを学ぶ時に、Dリーガーはどこを意識しどう動いているのかを、簡単にそして公平に見ることができます。

 AIスマートコーチはまず野球でスタートして、そこからバスケットボールで磨き上げてきたものを、ダンスに展開していきました。ダンスについてはさらに進化して、AIを活用したアドバイスやフィードバックを行なうサービスも提供し始めました。

 このようにしてスポーツの地域格差、指導者格差の是正において、大きな手ごたえを感じていますし、非常に好評をいただいています。

 それからDリーガーのアクリルスタンドなどの推し活リアルグッズについても、相談しながら進めてまいりました。我々のテクノロジーを活用し、ひとつのグッズをスマホで読み込むと、そのダンサーのコメントやメッセージなどを受け取れる仕組みです。

 またそこから得られたユーザーの声を、Dリーグと共有しながら新しいコンテンツを作っていこうと考えています。リアルグッズひとつとってみても、ITと組み合わせることで、大きな可能性を感じています。

 デジタルのグッズに付加価値をつけることについては、Dリーグを通してさまざまなことを勉強させていただきました。そのなかでNFTによる推し活体験の提供などについても、かなり先駆けてやらせていただきました。このように多方面でチャレンジさせていただいているので、Dリーグには本当に感謝申しています。

神田 こちらこそありがとうございます。ソフトバンク様との取り組みのように、何か施策をやろうとした時に、Dリーグは意思決定が非常に早く行なえる体制を整えており、チーム側とも一気通貫で連携できています。これはDリーグをゼロから作ったからこそ、できていることだと思っています。ITサービスでは毎年新しいトレンドが生まれますので、何がダンス業界と親和性が高いのかをソフトバンク様と一緒に探りながら、スピーディーに取り組んでいるところです。

テクノロジーで描くDリーグの未来 地方開催、そしてワールドカップへ ソフトバンク榛葉会長×神田COO対談
25-26シーズンのチャンピオンシップ表彰式。初優勝を飾ったFULLCAST RAISERZのメンバーと榛葉氏(中央左) ©D.LEAGUE 25-26

【テクノロジーがもたらすDリーグの未来】

――年々広がりを見せているDリーグですが、キャパシティの大きいトヨタアリーナ東京での2シーズン目の開催、そしてチーム数が20に増えるなど、さらに拡大しています。このようなDリーグの発展をどのように感じていますか。

榛葉 本当にうれしいことですし、誇りに思っています。いつも周囲の人たちに話しているのですが、Dリーグにはまだまだポテンシャルがあると感じています。

スタートした当時は9チームでしたが、今シーズンから20チームとなります。年を追うごとに企業側から参画したいという声が自然発生的に上がってきていると伺っていますし、その業界もさまざまです。それはDリーグのコンセプトを理解し、共感されているからだと思います。

 またDリーガーという名称も広まってきて、中学や高校でダンスに励む学生たちがDリーガーになることをひとつの目標として捉えつつあるのも、すばらしいと思います。

 それからDリーガーの方々がさまざまなメディアに取り上げられたり、イベントに参加したりと、IPコンテンツとしてのポジションも上がってきていると感じています。これらを踏まえ、非常にうれしく頼もしく思っています。

――Dリーグとして、ソフトバンクと今後も継続していく取り組みや、新規で取り組むことがあれば教えてください。

神田 今はソフトバンク様、ソニー様と一緒にシンクロの採点でテクノロジーを活用しようと取り組んでいます。どのようなカメラで、どのような技術を用いれば、人間の目とは違う角度でシンクロを分析できるのか。そこにチャレンジさせていただいています。

 それからコロナ禍で、『VR SQUARE』という多視点視聴サービスがあったのですが、これは当時非常に評価が高かったんです。今後は「このダンサーだけを見たい」というファンがより増えてくると思っていますので、さらに進化したサービスとして提供できる可能性もあるのではないかと考えています。

 ストリートダンスはアメリカで人気になった後に、日本に波及してきました。今、こうして日本でプロリーグができたので、今度はこのDリーグをアメリカやアジア、アフリカ地域に輸出して、最終的にはワールドカップをやりたいというのが、平野(岳史:DリーグCEO)も、HIRO(EXILE)も、榛葉さんとも、みんなで思い描いている未来です。

――ソフトバンクとして、Dリーグを通して実現していきたい未来、もしくはDリーグに期待していることを教えてください。

榛葉 ひとつは勘太朗さんもおっしゃっていたテクノロジーの部分です。シンクロの採点については今もプロの方々が行なわれていますが、そこにテクノロジーを活用して観客にもダンサーにもより納得していただけるように明確化していく。それがデータとして蓄積されていくようなことは、我々がまさにお手伝いできるところです。

 我々として非常にありがたい点は、Dリーグ、Dリーガーの皆さまが、本当に一丸となって新しいことに取り組んでくださる点です。そのおかげで我々としてもダンスとテクノロジーの融合を進めやすくなっています。

 それから今、Dリーグは東京で開催されていて、地方の方々が生で見るためには東京に出てきていただくことになります。やはり全国各地で開催されることも期待しています。

 それも踏まえて、勘太朗さんもおっしゃったように、ワールドカップも実現してほしいですよね。ダンスはその土地の文化や経済状況に関係なくすぐに始められるものです。

メジャースポーツのひとつであるサッカーも、ボールひとつあればできるからこそ、世界的な広がりを見せている。それと同じように、ダンスもますます広がっていってほしいなと思っています。

テクノロジーで描くDリーグの未来 地方開催、そしてワールドカップへ ソフトバンク榛葉会長×神田COO対談
Dリーグの未来について語り合った神田氏(左)と榛葉氏(右)  photo by Takao Ishikawa

【Dリーグの構想】

――最後に今シーズンの見どころ、そして未来の構想について教えてください。

神田 これまでずっと1日5試合ずつ2日間で開催することを理想としてきまして、それには20チームが必要だったのですが、おかげさまで今シーズンから20チームでスタートすることができます。

 国内スポーツのひとつの課題は若年層の獲得ですが、今Dリーグは、お客様の70%近くが女性の方々で、年齢は10~20代が中心となっており、それに加えてその家族を含めたすべての世代が足を運んでくれています。

 今は推し活が伸びているという背景もありますので、「推しはDリーグ」と言いやすくなってきているはずです。そんな方々に満足していただけるような環境をもっと作っていこうと思っています。

 それから先ほど榛葉さんからもお話がありました東京以外での開催ですが、実際に地方自治体から「開催してほしい」という声も出てきています。今シーズンから関西・大阪を拠点としたチーム(ONODERA USER RUNBULLS)ができましたので、まずは大阪で試してみようかというのもありかもしれません。

 またソフトバンク様にゴールドパートナーになっていただいているSDリーグ(スタジオダンスリーグ:小中高生を対象にした日本一のダンススタジオを決定する大会)は、北日本、東日本、中日本、西日本、南日本の5地区に分けて開催していますので、そこと連携していくことで、地方開催も可能になってくるかもしれません。

 あとはDリーガーの年俸を上げるためにも、Dリーグの認知をもっと広げていきたいと思っています。現在、上位クラスのDリーガーの年俸は、およそ2000万円です。

今までは、ダンスでコンテストやバトルに出てこれほどの年俸を得るなどあり得ないことでした。

 バスケットボールのBリーグをひとつの指標にしているのですが、Bリーグは7シーズン目にブレイクスルーを迎え(※)、今では年俸1億円のプレーヤーもいます。
※総入場者数が7シーズン目の2022-23シーズンに322万人(前年比105%増)となる。コロナ禍前の最多の259万人から大幅に増え、初の300万人超となった。直近の2025-26シーズンは548万人まで伸びている。

 Dリーグは7シーズン目を迎えますので、Bリーグになぞらえれば、大きな躍進、価値の上がるシーズンになる可能性があります。その変化をさらに大きな輪とし、子どもたちの夢の舞台にしていきたいというのが、我々の夢でもあります。

テクノロジーで描くDリーグの未来 地方開催、そしてワールドカップへ ソフトバンク榛葉会長×神田COO対談
Dリーグの人気は年齢を問わず確実に広がっており、子どもたちの夢の舞台にもなっている ©D.LEAGUE 25-26
榛葉 ひとつ大事なことを付け加えたいのですが、よろしいでしょうか。Dリーグがコアになることは当然なのですが、まさにSDリーグに参加するような小中高の子どもたちに、ダンスを楽しんでいただきたいと考えていますので、その面でも我々はDリーグと一緒に取り組んでいきたいと思っています。

 またプロとして活躍されたのち、セカンドキャリアとして、指導者や解説者、イベント出演など、そういう活躍の場もサポートしていきたいという思いもあります。Dリーグであればきっと実現できると考えています。今回はありがとうございました。

神田 こちらこそこのような時間をいただきまして、本当にありがとうございました。

text by Sportiva

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