【大学駅伝】原晋監督が口にした「没落の危機」 青山学院大は全...の画像はこちら >>

11月1日に行なわれる全日本大学駅伝。学生駅伝初戦の出雲駅伝で関東勢最下位の11位に終わった青山学院大は、どのような走りを見せるのだろうか。

箱根駅伝では圧倒的な強さを誇るチームをつくり上げてきたとはいえ、原晋監督が危機感を見せる今、大きな注目が集まる。

【出雲11位が示すのは「没落の危機」なのか?】

 青山学院。ファンたちの不安は増殖している。

 今年は大丈夫なのか、と。

 それはそうだろう。今季初戦の出雲駅伝(10月12日)、青山学院大は関東勢最下位の11位だったのだから。

 出雲のレース直後、原晋監督は仕方がないといったニュアンスを含め、こう話した。

「レベルが上がってるなあ、大学駅伝。ウチの11位は駅伝力のなさ。これに尽きます」

 2区のラスト1kmで先頭集団から引き離され、そこから単独走の場面が増えて流れが悪くなり、見せ場を作ることができなかった。原監督は「テレビにもまともに映らんかったからね」と自虐的にさえ話した。

 ただし、原監督は不安を早々に打ち消してもいた。

「出雲の前まで、距離を重視した練習をしてきたので、対応ができなかったということです。

それでも、昨年度まで箱根駅伝の結果が出ているわけですから、大きな強化計画を変える必要はないでしょう。全日本、箱根と状態は上がってくるはずです」

 今年度は、シーズンに入ってイレギュラーなことが多かったことも影響していたかもしれない。原監督のケガで指導を離れた時期があったほか、8月下旬にはユニフォームスポンサーになったレッドブルの本社があるオーストリアで、主力選手たちが合宿遠征を敢行した。中村海斗主将は、「いつもとは違うことに挑戦するのも青学らしいかな、と思ってます」と前向きに捉えていたが、例年どおりの強化日程だったわけではなく、出雲に向けては細かな調整の狂いが出た可能性はある。

 全日本からはチームの状態は上がってくる。そうした手応えを原監督は持っているはずだが、それでも出雲の現場では選手たちに厳しい言葉をかけてもいた。

「君たちは強くありません。それを自覚してください。次の全日本、シード権を落とすようなら没落の危機です。もしそうなったら、来年は予選会に回ることになる。全日本までの残り3週間、危機感をもって練習に臨んでください」

 没落の危機。選手たちの奮起を促す激しい言葉だった。

【後半3区間と総合順位――過去3年間の相関性】

 今季の駅伝第2戦となる全日本。青山学院は浮上してくるのだろうか? 夏合宿で動画の取材に応じた原監督が全日本の予想を披露していた。

「1位は......早稲田大学!」

 青学じゃないんですね、とツッコミを入れたくなったが、その後も青学の名前はなかなか挙がってこない。

「2位、中央大学。3位、國學院大学。4位、創価大学。5位、青山学院大学!」

 夏の時点で、指揮官は自軍を5位と見立てた。決して謙遜ではなく、他校の実力を考えての冷静な見方だと思う。

 基本的に全日本は後半区間が順位に大きな影響を及ぼす。駅伝の場合、流れに乗ることが大切になるので、前半区間に注目が集まりがちだし、各校ともにスピードランナーを投入してくる。ただし、全日本では6区が12.8km、7区が17.6km、8区が19.7kmと後半の3区間で全体の5割弱を占める。前半の流れに乗ることは優勝、あるいはシード権を獲得するためには重要だが、本当の勝負はラスト3区間ということになる。

 いま、青山学院は箱根駅伝のみならず、その先のフルマラソンを意識した練習計画を立てるようになった。

他大学に比べて長い距離への適性を高めているから、全日本でも後半区間が強い。過去3年間の青山学院の6区から8区の区間順位を見てみよう。

2023年(総合2位)
6区 荒巻朋熙(2年) 区間3位
7区 太田蒼生(3年) 区間5位
8区 田中悠登(3年) 区間3位

2024年(総合3位)
6区 白石光星(4年) 区間2位
7区 太田蒼生(4年) 区間2位
8区 塩出翔太(3年) 区間15位

2025年(総合3位)
6区 飯田翔大(2年) 区間賞
7区 黒田朝日(4年) 区間新
8区 小河原陽琉(2年) 区間7位

 いずれも全日本で総合3位以内に入って、箱根駅伝3連覇につなげているわけだが、後半の3区間トータルで安定した結果を出している。

 各年度の内容を見てみると、2023年は中盤で優勝した駒大に引き離されたが、アンカーの田中が國學院大、中大との競り合いを制して2位に入った。原監督は「田中の走りが箱根につながったね」と話していたのが印象深い。

 2024年は6区白石(年が明けてからの別府大分毎日マラソンで6位に入った)、7区太田と快調につないで先頭に立っていたが、8区の塩出が不調で3位に。前回は1区で出遅れる展開となり、6区の飯田、7区の黒田のふたりが猛烈に追い上げて2位にまで浮上した。

 この3年間、特に6区と7区の安定度が高く、青学大の強みになっている。

【人材はそろっているが、果たして】

 では、今年はどうだろう。

 心強いのは、前回6区で区間賞の飯田(3年)が残っていることだ。昨年は出雲の3区で区間10位に終わっていたが、全日本には仕上げて6区で区間賞を獲得。今年も出雲では同じ3区で区間11位とふるわなかったが、同じ流れと見てよく、今年は重点区間を任されることになるだろう。

 そのほかにも前回は8区を担当し、今年は日本選手権にも出場した小河原陽琉(3年)、前回の箱根駅伝4区で、当初は走る予定がなかったにもかかわらず、"代役"で結果を出した平松享祐(4年)らが候補に挙がってくる。いずれも後半区間を区間上位でまとめる力を持っている。人材はいるのだ。

 ただし、彼らが力を発揮するためには前半区間で優勝争いにしっかりと絡むことが重要だ。11km台と短く、トラックのスピードが生かせる2区から4区で、早稲田、中央に食らいついていけるかがポイントになる。その意味で、出雲の1区で区間2位と好走した石川浩輝(2年)が重要な役割を担うことになるだろう。

 ただ、こう書いてきて気づいたのは、昨年度の黒田朝日の存在があまりに大きかったことだ。昨年の出雲駅伝も5区まではチームが10位と低空飛行だったところを、アンカーの黒田が7位に引き上げた。昨年と今年の出雲の内容を比較すれば、5区までは大差がなかったのだ。

 同様に、昨年の全日本では黒田が7区で5位から2位へと浮上させ、箱根では5区で常識を破壊する走りで3連覇を引き寄せた。

 黒田は正真正銘のゲームチェンジャーだった。

 今回の全日本で、青山学院は間違いなく浮上してくる。

ただし、インパクトを出せるかどうかは不透明だ。黒田朝日というゲームチェンジャーの抜けた穴を、誰が埋めるのか。

 勝負となる6区から8区までを青山学院がどうつないでいくのか、原監督の采配と、出雲からのリベンジを期す選手たちの仕上がりに注目したい。

生島 淳●取材・文 text by Jun Ikushima

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