【大学駅伝】駒澤大の「新たなスタート」 下級生の層が厚くなり...の画像はこちら >>

11月1日に行なわれる全日本大学駅伝。昨季の主軸だった4年生の四本柱が抜け、新たなスタートを切った駒澤大は、出雲駅伝では7位に終わった。

エース格の谷中晴が大会直前のケガで欠場したこともあり、全体的な戦力の現状を反映した結果とも言える。一方で序盤2区間で快走を見せた鈴木大翔と上岡煌ら下級生が力をつけ、選手層は厚みを増しつつある。相性のいい大会で、勢いをつけられるか?

【出雲7位の結果に見る現在地】

 昨年度、全日本大学駅伝で歴代最多の17回目の優勝を圧勝で飾ったのが駒澤大学だった。令和の時代を迎えてからもすでに5回の優勝を数え、伊勢路を得意としている。

 前回は2位に2分超の大差をつける圧勝だったが、そのメンバーのうち、佐藤圭汰(NIKE)、山川拓馬(トヨタ自動車)、伊藤蒼唯(富士通)、帰山侑大(ヤクルト)と主力を担ってきた4人が卒業した。

「昨年強かった4年生の四本柱がごそっと抜けて、チームとしては新たなスタートの1年」と藤田敦史監督が言うように、今季は戦力ダウンが否めないのが実情だろう。

 実際、10月の出雲駅伝では7位と、昨年度よりもふたつ順位を落とした。

「どんな駅伝でも駒澤は3位以内が絶対だと思っているので、7位という結果は評価できません」

 指揮を執る藤田監督の言葉も厳しかった。

「あそこまで行ったら4位を獲りたかった。実質、4位は(アイビーリーグ選抜を除けば)関東の3番目。谷中(晴、3年)抜きでそこの位置に行けたら、"谷中がいたらもっと行ける"という感覚になったと思います。でも、7位だと、"谷中がいないと、やっぱ7位だよな"っていう意識になっちゃうんですよね。そこが痛かった」

 アンカーの桑田駿介(3年)に対しては、積極的にレースを進めながらも、結果的に2校を抜いて2校に抜かれてしまい、順位を上げられなかったことに厳しい注文を出していた。

 桑田とともにエース格を担う谷中が大会4日前にぎっくり腰になり、起用を見送ったのは痛手だった。

「"タラレバ"を言えば、谷中を3区に配置できれば植阪(嶺児、4年)を5区に回せたので、もうちょっとチームの順位、記録はよかったかなと思います。ただ、現実として谷中をスタートラインに立たせることができなかった。課題として残りました」

 ギリギリまで谷中の回復を待ったが、結局出走は叶わず、直前で配置転換をせざるをえなかった。

「谷中ひとりいなくなっただけでこうなるのが、現状のチーム力。本当に強いチームだったら、代わった選手も遜色ない走りをすると思うんです。でも、裏を返せば、いい機会だったかもしれません。桑田と谷中がうまく機能しなかった時に、ほかの子たちがどういう気持ちで走ればいいかがわかったので。そのふたりに頼ってばかりではダメだっていうのを経験できただけでも、チームが大人になる良いきっかけになったんじゃないですか」

 藤田監督は、7位という結果のなかにも、明るい材料を見出していた。

【収穫となった鈴木大翔と上岡煌の成長】

 また、レース内容を精査すれば、苦戦予想の声を振り払うには十分だったと見ることもできるのではないだろうか。

 課題を残した一方で、藤田監督が"絶対取らないと"という3位までの差は、昨年が22秒だったのに対して、今年は21秒と、昨年とほぼ同じ。アイビーリーグ選抜を除いた関東の3番手の順天堂大とは12秒の僅差だった。

 それに、収穫も大きかった。

前日会見で、藤田監督が注目選手に挙げていた1区の鈴木大翔(1年)と、2区の上岡煌(2年)の走りだ。

 藤田監督は、春先には鈴木について「能力は高いが、時間がかかる」と話していたが、その想定を超えて状態を上げてきた。

「だんだんよくなってきて、"これだったらやれる"というところまで来た。夏合宿の時点で、"1区でいくぞ"と話していました」

 出雲で鈴木を1区に起用することは、早々に決めていたという。

 そして、鈴木もその起用に見事に応えてみせた。

「最後のほうまで残っている選手が結構いたので、そのなかでスパートの効く選手をピックアップして、臨機応変に対応できた」 

 鈴木はこのようにレースを振り返っていたが、その冷静さとスパート力は、実力者ぞろいの1区のなかでも群を抜いていた。鈴木は、残り300m足らずで後続に一気に6秒もの差をつけて、見事区間賞で大学駅伝デビューを飾った。

「状況判断能力に優れているんですよね。どこで仕掛ければ、自分が勝てるかがわかっている」と藤田監督は鈴木の走りを高く評価する。

「1区の鈴木の目処が立った。鈴木を1区に起用すれば流れが作れる」と藤田監督。ということは、今後、鈴木は1区のスペシャリストになっていくのか......。

「だけど、あそこまでいくと、どうしても1区はもったいない。全日本では2区あたりを担ってくれないかなと思っているんですけど。1区は団子で来るから、2区もやれるんじゃないかと思いますけどね」

 藤田監督は頭を悩ませる。いずれにしても、鈴木は序盤で流れを作る役割を担うことになりそうだ。

 出雲で2区を走った上岡も、藤田監督は収穫に挙げる。

 区間順位こそ8位だが、早稲田大の本田桜二郎(1年)のスパートに離されながらも踏みとどまり、中央大の岡田開成と並ぶように2秒差の3位でタスキをつないだ。

「先頭でもらったので、猛追されるのは想定内。区間8位でしたが、(5.8kmを)16分ジャストでまとめて、トップと秒差でつないだのはよかった。先頭争いをできたことも、経験値としては大きいです」

 初めての大学駅伝での好走に、上岡のさらなる成長を期待していた。

 3区の植阪は区間10位だったが、今季の成長株のひとりで、4年目にして初の大学駅伝だった。急遽5区に起用された池谷陸斗(1年)も合わせると、実に4人が今回の出雲で初めて藤色のタスキをつないだ。

"新たなスタートの1年"と位置づけた今季、この先のふたつの駅伝を見据えると、彼らが経験を積んだことは、何よりもプラス材料と見ることができるだろう。

【勢いを増す下級生とエース谷中の状況】

 出雲駅伝の5日後の早大競技会10000mでも大きな収穫があった。

 全2組のうち1組目に、出雲を回避した駒大の1、2年生5人が出場した。

「5000mを14分半で入って、後半上がって、28分50秒から29分を切るぐらいのタイムが出ればいいかなと思っていた」と藤田監督。

 2年の牟田颯太、凜太兄弟らが交互に先頭を引っ張りながら、前半は想定どおりに進んだ。

 そして、後半にペースアップ。初めて10000mのレースに挑んだ土間董哉(1年)が28分36秒66の好記録で1着となり、2着に牟田凜太が28分38秒45で続いた。3着の牟田颯太が28分40秒72、4着の今村仁(1年)が28分58秒46と、ともに自己ベストを打ち立てた。

「こんなにいくとは思わなかった。自分たちで引っ張って出した記録ですから、自信になります。ある程度のペースでいって、後半上がるレースを、人の力を借りずに自分たちのチームだけでできるのが大事でした。これが駅伝の走りにつながる」

 指揮官の想像を上回る走りを見せた選手たちを、藤田監督は満面の笑みで迎えていた。

「牟田兄弟の調子がよくなったのは大きいですね。

凜太は強い。(ペースメーカーを務めなければ)もっと行けたと思いますし。颯太も、29分かかるかと思っていたが、成長しましたね」

 牟田兄弟は全日本に向けて、及第点を大きく超えてきたと言っていい。

 ビッグサプライズは1着の土間だろう。広島・世羅高時代に5000m13分39秒13をマークしている実力者だが、大学入学後はなかなかボリュームのある練習をこなせず、出雲、全日本と、指揮官の構想からは外れた。今後は11月末に5000mのレースを予定しており、今回の10000mはスタミナ面を確認するための出場だった。

 それにもかかわらず、28分36秒の好記録を叩き出し、先輩ふたりに先着したのだから、改めて光るものを感じさせた。

「自分の弱点はスタミナ面なので、終始余裕を持ってゴールすることができたのでよかったです。出雲と全日本は同級生4人がメンバーに入ったので、距離走などの練習でしっかりアピールして、箱根はメンバーに入りたい」

 伊勢路で土間の走りが見られないのは残念だが、土間自身は、その先の箱根を見据えている。

「やっぱり出雲での鈴木の活躍を見て、"自分らも"っていう気持ちになったと思います。土間だけではなく、今村も我慢して28分台を出したので、1年生はこれから面白いんじゃないですか」

 初の10000mだった後藤颯星(1年)は29分42秒37と今回は振るわなかったものの、今の1年生世代は、昨季の4年生世代に取って代わる頼もしい世代になっていきそうな予感がある。

 これで、チーム内で今季28分台をマークした選手は10人に到達した。

「今はいろんな取り組みをさせたほうがいいかなと柔軟に考えていて、それがいい方向に出ている」

依然として昨季の4年生が抜けた穴は大きいものの、着実に選手層に厚みが出てきた。

 全日本ではやはり谷中が連覇のカギを握ることになりそうだ。"エース頼みのままではいけない"と承知しつつも、谷中を起用できるか否かで、チームの順位が違ってくるのは、紛れもない事実だ。

「だいぶよくはなりましたけど、出雲から全日本まで時間がないので、間に合うかどうか。それに、ここで無理をして箱根を走れなかったら、それこそ、きついので、そこは慎重に考えないといけません」

 藤田監督は以前「谷中は7区にいかせるつもり」と話していたが、その起用について慎重を期している。

 全日本は、駒澤にとって最も相性のいい大会だ。

「自分たちの最大値を出せる組み方をしたい」

 伊勢路で勢いに乗り、前回総合6位に終わった箱根駅伝で巻き返しを図るつもりだ。

和田悟志●取材・文 text by Satoshi Wada

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