この記事をまとめると
■静粛性に優れるEVは車外の音が聞こえにくいのではないかとの声がある■しかし緊急車両の接近に気が付きにくかったなどということはない
■現在のクルマの開発では、遮音性の向上よりも音源の対策が必要だと考えられる
遮音性の向上よりも音源の対策が必要だと考えられる
電気自動車(EV)は静粛性に優れるので、車外の音が聞こえにくいのではないかとの声もあるようだ。しかし、これまでEVを運転してきた経験のなかで、たとえば緊急車両の接近に気が付きにくかったということはない。
逆に、エンジン車のほうが騒音は自ら出しているので、車内も車外も騒音対策には気を配っているのではないだろうか。
たとえば、サスペンションからの音だ。コイルスプリングが上下動するときに生じるガチャガチャという音や、ダンパーが上下動して減衰する際のシューシューという音なども耳に届くことがある。タイヤ騒音も、エンジン車に比べて気になってくるし、窓やドアミラー付近の風切り音も気づきやすくなる。
そうした騒音に対し、車内へ聞こえないように遮音材などを用いることも必要だが、それ以上に、音源を対策することの方が先だろう。ただ、サスペンションやタイヤまわりからの騒音は、簡単には消すことができない。対応策として、タイヤハウス内側に防音効果のある素材を張り付けるなどの手法がある。

タイヤ騒音は、接地面に溝があることによって、溝で区切られたブロックが路面と接する際に生じる音(パターンノイズ)と、タイヤが振動することでサスペンションが動き、その振動が車体に伝わる音(ロードノイズ)がある。パターンノイズを消すのは難しい。それでも、一つのブロックの大きさや形状を工夫することで、パターンノイズを小さくすることはできる。一方、ブロック形状を小さくしすぎるとグリップが低下する傾向になるので、兼ね合いが難しい。
音がしなければいいというわけではない
風切り音は、ドアミラーの形状や取り付け方の工夫で低減の道を探っている。
フロントウインドウのガラスに遮音機能を設けたものもすでに上級車を中心に使われている。高級車になると、サイドウインドウへも遮音機能を設ける例がある。その場合でも、緊急車両の警報音と、それ以外の騒音との周波数を検証し、不都合のない開発が行われている。

まったく音のしない無響室のような環境は、人間が不快になることが知られており、静かということと音が何も聞こえないということとには違いがありそうだ。また、ある種の騒音は聞こえていても、人間がそれほど意識しない周波数や音質もあるはずだ。車内の静粛性を、単に静かという言葉だけで評価するのは的外れになる場合もある。
快適な室内という商品性を高めるため、自動車メーカーは静粛性に力を注ぐが、走行中に外界との関係を遮断するほどの静かさは、混合交通のなかで危険だ。そこを自動車メーカーも意識しているはずだ。

静粛性に優れるEVは、音楽を聴く場としてもエンジン車に比べ、よい条件であるだろう。エンジン車を含め、上級車種では名のあるオーディオメーカーの機器を取り付ける車種が増えている。