この記事をまとめると
■2013年にフォルクスワーゲンはXL1を欧州限定で250台販売した■800ccのディーゼルエンジンにモーターを組み合わせたPHEV
■空力性能の追求とカーボンFRPによる軽量化により、リッター100kmの燃費性能を実現
未来のクルマを感じさせるデザインと性能
フォルクスワーゲンの「XL1」というモデルを覚えている読者はどれだけいるだろうか。これは2013年のジュネーブショーで正式に発表された、当時もっとも高いエコ性能を持つモデルとして大きな話題を呼んだディーゼルPHEV。
だがその始まりとなるコンセプトカーは、それよりさらに10年以上前の2002年に「1Lカー」として発表されており、それから2009年にはプロトタイプの第2弾となる「L1」をフランクフルトショーで初公開。

これは、Cd値で0.195という驚異的な数字に象徴される優れたエアロダイナミクスや、CFRPなどの軽量素材を用いることで381kgにまで抑えられた乾燥重量などによる相乗効果によるところが大きい。
2011年のカタールショーでは、その性能をさらに高めた3作目のプロトタイプが披露されている。フォルクスワーゲンはこの時から「XL1」の車名を掲げ、またそれを物語るタイトルとして「Super Efficient Vehicle(超高効率車)」=SEVのブランド展開をスタートさせている。
2011年仕様のXL1に搭載されたパワーユニットは、前作のL1と同様に800ccの直列2気筒ターボディーゼル。最高出力&最大トルクは47馬力&121Nmの設定で、これに27馬力&100Nm仕様のエレクトリックモーター、そして7速のDSGを組み合わせたPHEVである。

フル充電から35kmまでならばエンジンをスタートさせずにエレクトリック・モーターからのパワーのみで走行も可能。CO2排出量も24g/kmへとさらに向上し、100kmの走行にはわずか0.9リットルの軽油が必要となるのみというエコ性能は世界を大いに驚かせた。
エコカーの歴史に名を刻むフォルクスワーゲンXL1
そして2012年2月、VWはついにXL1のシリーズ生産をスタートさせることを発表。実車は翌2013年のジュネーブショーで初公開された。搭載される800ccのディーゼルターボエンジンを始め、そのメカニズムは2011年に製作されたプロトタイプとほとんど変わるところはない。

エレクトリックモーターのアシストを加えたシステム全体の最高出力&最大トルクは68馬力&140Nm。

全長で3888mm、全幅と全高では1666mm、1153mmというコンパクトなサイズのXL1は、もちろん過去のプロトタイプと同様に、軽量化に関してはストイックなまでにその技術を追求したモデルだった。モノコックやすべてのボディパーツ、そしてロールバーなどはCFRPで作られており、これは通常のスチール比で20%程度の重量しか持たず、そして高い剛性と強度を持つ素材。
ちなみにXL1のボディパネルはわずか1.2mmの厚さしかなく、795kgという車重を実現するために大きく貢献している。このうちバッテリーを含むドライブユニット全体が227kg、サスペンションなどのランニングギアが153kg、装備品が80kg、電気系統が105kgなどとフォルクスワーゲンからは発表されていたが、総重量795kgのうちスチールが使用されているのはわずか184kgにすぎないことも明らかにされた。

実際にXL1が達成した燃費性能は0.9L/100km。CO2排出量も21g/kmと向上し、販売はユーロ市場でのみ250台の限定で行われることになった。価格は11万1000ユーロ(当時のレートで約1200万円)から。購入を希望するカスタマーには2万ユーロのデポジットが要求され、その後の抽選によってオーナーは決定したという。

現在でもエコカーの歴史にその名を残すフォルクスワーゲンのXL1、それは未来を先取りした究極の作にほかならなかったのである。