この記事をまとめると
■いま販売されるクルマの90%以上がAT車■このような状況下であえてMT車を設定する車種も
■マツダ6やカローラもそれに該当する車種だったが、MCの際にMT車は廃止されてしまった
MT車を設定することでスポーティなイメージに
1980年代の中盤までは、AT車とMT車の販売比率は各50%程度だった。それが1991年にATの限定免許が創設されると、AT車の販売比率も増え始めた。
とくに2000年以降はハイブリッドが普及を開始して、今では乗用車の約半数が電動車だ(マイルドハイブリッドを含む)。
ところが最近は、MTを選べる車種も散見されるようになった。とくにマツダは、運転の楽しさに重点を置くから、マツダ2からCX-5まで6速MTの設定が多い。トヨタも86やヤリスに6速MTが用意され、スープラにも加えた。ホンダはシビックのタイプRと1.5リッターターボ、N-ONEなどに6速MTがある。

このように今になってMT車を積極的に設定している理由は、スポーティな車種を中心に、趣味性の強いクルマを復権させるためだ。クルマ好きのユーザーには、シフトレバーとクラッチペダルを操作して、ギヤチェンジを楽しむニーズも見られる。近年は電動化もあってMT車が減りすぎたから、車種によっては改めて復活させている。

そしてMTを設定すると、それがスポーティな車種であることをアピールする効果も得られる。購入した人が最終的に選ぶのはATでも、MTを用意すると、その車種が一目置かれる場合がある。
マイナーチェンジでMT車が廃止されてしまうケースも
ただしすべてのMTが長く存続するわけではない。
ちなみにカローラセダン/ツーリング/スポーツのサスペンションは、以前はすべて4輪独立式だったが、2022年のマイナーチェンジで変更を受けた。カローラセダンとツーリングの2WDについては、ノーマルエンジン車のリヤサスペンションが、独立式から車軸式のトーションビームへ簡素化されている。

※写真はカローラクロスのリヤサスペンション
こういった変更の背景にあるのは、6速MTの廃止を含めて、設計の合理化だ。マツダ6の登録台数は、発売から約10年を経過して、1カ月平均が約180台まで下がった。MT比率は以前から10%以下だから、1カ月の売れ行きは10台少々だ。これでは6速MTの設定がコストアップに繋がるため、マツダ6はこれを廃止した。

カローラも、今ではシリーズ全体の約45%をSUVのカローラクロスが占める。この車種に6速MTは以前から設定されていない。なおかつ2WDのリヤサスペンションはハイブリッドを含めてトーションビームだ(4WDのリヤサスペンションはダブルウイッシュボーンの独立式)。

そこでカローラクロスよりも先に販売されていたカローラセダンとツーリングも、ノーマルエンジンのリヤサスペンションをトーションビームに変更した。

今になって振り返ると、せっかく6速MTを設定したのだから、もう少し宣伝に力を入れても良かったと思う。6速MTは駆動力を伝えるトランスミッションでありながら、嗜好品的な性格も併せ持つ。6速MTがあると、AT専用車とは異なる世界観を表現することも不可欠だ。