この記事をまとめると
■地域の事情や状況によって車名が日本と海外で異なるクルマが存在する■クルマのグローバル化により日本で馴染みのある車名がグローバルネームに変更する例が増えた
■クルマづくりにおいてもグローバル化が進み、どこかにそれぞれ不自由な点が生じている
クルマのグローバル化は日本専用車が存在しづらくなったことの証
クルマの名前は、地域の事情で別の名称を使わざるを得ないことが起こる。商標登録の問題があるからだ。あるいは、地域やその言語に馴染む名前を付けることもあるだろう。
身近な例では、トヨタのヴィッツがグローバルネームのヤリスに車名変更した。マツダのデミオもマツダ2へ変更されている。かつては、国内でセリカXX(ダブルエックス)と呼ばれていたのが、スープラに統一されたこともあった。XXという表記が、米国で問題があったためだ。

国内においても、海外での車名へ変更する動きは、クルマづくりがグローバル化したことが大きいのではないか。逆いうと、国内専用車の存在が難しくなったということでもあるだろう。
それだけ、新車販売の価格競争が世界で厳しさを増していることにもなる。その背景には、自動車メーカーの規模が大きくなり、国内販売だけで儲けを出すのが難しくなったともいえる。世界でより数多くの新車を販売しようとすれば、国内における競合との関りだけでなく、いっそう価格競争にさらされる。
車両の統一化でコストは下がるも不自由さは増す?
グローバル化の影響は車名や価格だけでなく、車体寸法に顕著に表れている。ことに衝突安全基準が世界的に高まることによる大型化だ。
道幅がそれほど広くない欧州でも、日本と同様に車幅に不便があるように思うのだが、路上駐車が許される欧州では、車幅より全長を気にする傾向にあるという。現行のルノー・ルーテシアは、あえて新車で全長を縮めてきた。

このように地域によって交通事情は異なり、グローバルカーではどこかにそれぞれ不自由な点が生じているはずだ。
背景にあるのは、人口増だろう。1900年に16億人だった世界人口が、いまは80億人に達している。それらの人々が職を得て給料を手にし暮らしていくには、企業が規模を大きくしていくしかない。自動車メーカーであれば、より多くの新車を販売しなければならず、結果、国内専用車や地域専用車では、なかなか採算に合わないということだろう。
最終的には、車名のバッジという部品にも及ぶはずだ。車名が違えば部品点数がひとつ増える。そして、クルマに愛着を持つことが難しくなり、所有から利用の時代へ移ろうとしている。

そうしたなか、たとえばポルシェは「買ってもらうブランドから選んでもらうブランド」への転換をはかろうとしている。ポルシェのような知名度の高いクルマであっても、時代の変化に適合しなければ生き残れないということではないか。
クルマの価値は、今後さらに変化していくはずだ。そこでどう生き残るかは、車名にとどまらず、企業価値の有無も問われていくことになる。