この記事をまとめると
■エンジンのかけ始めはアイドリングが高い傾向にある■これは「ファーストアイドル」と呼ばれるもので、エンジンを保護するために行われる
■放っておいてもあまり効果がないので暖気走行をしてクルマを温めるのがベストだ
エンジンをかけた瞬間はなぜアイドリングが高い?
夏場は厳冬期より気にならないかもしれないが、どのクルマも一度エンジン(水温)が冷えた状態からエンジンをかけると、普段よりもアイドリングの回転数が高くなるように設定されている。
これは「ファーストアイドル」と呼ばれるもの。アイドリングストップ機能のクルマも多いのに、ファーストアイドルだけは回転数が高まるのはなぜなのか。
それはざっくり3つの理由がある。
暖機増量
エンジン全体が冷えているときはガソリンも気化しづらく、低いアイドリングでは止まりやすい。そこでエンジンが温まるまで燃料を濃くして、点火を助長するする暖機増量のプログラムが働く。
触媒を温めるため
エンジンから排出される、NOx・HC・COなどの有害物質は、三元触媒の働きで酸化・還元され浄化される。しかしこの三元触媒は、冷えていると働きが悪いという欠点がある。

三元触媒の活性温度(浄化率95%)はおよそ350度なので、排ガスをクリーンするためには、触媒を排気ガスで温める必要があり、できるだけ速く触媒を活性化させるために冷間始動後のアイドリングを高めているわけだ。ファーストアイドルが高い大きな理由のひとつはこれ。
また触媒を速く温めるため、ファーストアイドル中は点火リタードも入って、排ガスの温度を上げるので、エンジンの回転がバラつきやすくなってしまう。それを防ぐためにも回転数が高めになるという面もある。
回転が高いのはエンジンを守るため!
エンジン本体を保護するため
エンジンの主要部品、ピストン、シリンダーなどは、熱で膨張することを前提に設計しているので、温まるまでは各部のクリアランスが適切ではない。また、エンジンオイルも冷えているときは攪拌抵抗が大きく、フリクションも大きい。

プラグも中心電極の温度が500℃以下だときれいな燃焼が難しく、燃料が完全燃焼しない(プラグの自己浄化温度は約500~950℃)。これらの部品やオイルを早く温め、適温に持っていき、各部のクリアランスを最適化し、フリクションを減らすのも目的。
メタルにオイルを送るため
エンジン内部のクランクシャフトやピストンなどの金属部品は、じつは金属同士が直接接触していることはない。金属と金属の間にはつねにオイルが入り込み、フルフロートの非接触状態で作動している。

その「境界潤滑」の時間を短縮するためには、早くオイルを届けてやる必要があるので、オイルポンプを早くまわす=エンジンの回転数を上げる=ファーストアイドルが高くなるという流れになるわけだ。
ファーストアイドルが高い主な理由は以上だが、エンジン始動後、各部の温めはクルマに任せておけば大丈夫。夏でも冬でもエンジンをかけて10秒もすれば走り出してOK。というより、むしろ停車したままアイドリングをキープしても、温めるべき部品のごく一部しか温まらないので、いわゆる暖機運転ではなく、走り出して4~5分ほどゆっくり丁寧に走る「暖気走行」をするのがベスト(水温ランプ「緑」が消灯するまでが目安)。

もうひとつ注意して欲しいのは、始動時に「アクセルペダルを踏み込んだままセルモーターをまわさないこと」
これをやると始動性が悪くなったり、かぶり気味になる可能性があるので、エンジン始動時はアクセルペダルにノータッチで、ECUにお任せしよう。