この記事をまとめると
■中国におけるNEVの累計生産台数が2000万台を達成■充電器も2022年時点で約520万基を設置している
■日本の技術がヒントを与えていることもあるという
中国ではEVの普及が着々と進んでいる
中国国内におけるNEV(新エネルギー車/BEV[バッテリー電気自動車]、FCEV[燃料電池車]、PHEV[プラグインハイブリッド車])の累計生産台数が2000万台を達成したと中国メディアが報じた。中国国内では、2020年にNEVの累計生産台数500万台を達成、以後2022年に約2年かけて1000万台を達成、そして今回は1年ほどで2000万台を達成したことになる。
ちなみに一般社団法人 次世代自動車振興センターの統計によると、2021年における日本国内でのNEVの2021年の年間販売台数は5.5万台弱。
充電施設設置数では、中国全土では2022年に約520万基を設置しているのに対し、日本国内では2023年5月末時点で日本全国には1万9848拠点の充電スポットが整備されているとのこと。充電器の数と充電スポット数なのであまり比較にはならないが、その整備状況のスケール差は歴然となっているのは理解できる。もちろん、中国は世界一の新車販売市場で年間にトータルで2000万台超を販売するのに対し、日本国内は2022年ベースでは約420万台と市場規模に大きな開きはあるのだが、NEVの普及ではその関連施設も含めて中国が進んでいることはイメージできるはずだ。

中国も含む世界市場と日本市場での大きな差は、優秀なHEV(ハイブリッド車)を日本メーカー各社が豊富にラインアップし、諸外国に例を見ないほど普及していることである。一般社団法人 次世代自動車振興センターの統計では2021年の1年間に日本国内で販売されたHEVは140万7598台となり、2021年の年間総新車販売台数比で約31%となっている。さらに、日本メーカー各社の純粋なエンジンは燃費性能だけでなく、環境性能にも優れている。

つまり、自国ブランド車には優秀なICE車も多くNEVの必要性というものを多くのユーザーが強く感じることがないなか、自国ブランドでのNEVのラインアップが極端に少ないこともあるのがまずNEVの普及を鈍らせている。もちろん、メーカーやユーザーサイドの事情だけではない。将来へ向けての絵図面を描くことができないいまの政府では、NEVの普及を進めたくても限界がすぐに見えてしまうのである。

日本の技術は各国に“ヒント”を与えている!?
とはいっても、欧米でも一般量販車レベル、つまり大衆車レベルでのNEVの普及は、はかばかしいとは言えない。その分野では、中国国内での普及はめざましく、中国メーカーが世界市場で存在感を強めている。フットワークの軽い中国メーカーはスペックを抑え気味にして、買い得感を高めた「ローコストBEV」のラインアップに積極的となっている。この分野は日本メーカーに残された数少ない逆転攻勢を仕かけられたカテゴリーだったのだが、先手を打たれた印象が強い(その前に騒がれていた「45万円EV」などと言われた「マイクロEV」よりは使える)。
筆者は中国メーカーの動きには、日本国内における日産サクラの大ヒットも大きく影響を与えたものと考えている。航続距離などに制約があっても、マイクロEVまでスペックダウンさせなくとも、買い求めやすければそこに大きなマーケットがあると中国メーカーは確信したはずであり、それにより加速がついたものと考えている。

BEV以外でも似たようなことはいくつかある。中国ではいまでもセダンだけでなくSUVやミニバン、ハッチバックなど広いボディタイプでホイールベースを延長した「L」と名前につくモデルの人気が高い。火付け役はアウディなのだが、そのアウディがヒントを得たのは、日本では初代となるレクサスLSの460ベースのロングホイールベースモデルとなる「460L」だったとはよく聞く話。しかし、当のトヨタほか日本メーカーは「Lモデル」のラインアップには興味を示すことなく、欧米や中国メーカーの間で中国国内にて大ブレイクしてからしばらく後、日本メーカー車でも「Lモデル」が目立つようになってきた。

いまでは世界的には当たり前のように採用されている、液晶画面にデジタル表示する計器盤も、13代目トヨタ・クラウンで全面TFT液晶メーターが世界初採用されているが、いまだに日本メーカー車ではアナログ式メーターが幅を利かせている。

日本メーカーが優秀な自動車メーカーであることには変わりはないが、先走りすぎていることもあるのかもしれないが、自分たちが知らないうちに諸外国のライバルメーカーにヒットモデルや効果的な先進装備のヒントを与えてしまっているケースは意外に多いのである。