この記事をまとめると
■国産EVの納期遅延が続いており、いまだ満足な車種展開もままならない■電子制御部品に依存する割合が高いEVは半導体不足の影響をより受けやすい
■BYDやテスラは電子制御部品やバッテリーなどを自社生産する体制で効率化を図っている
半導体不足で国産EVの車種展開がなかなか広がらない
日産アリアやトヨタbZ4Xなど、電気自動車(EV)の納期遅れが続いたままだ。また、車種展開も広げられずにいる。コロナ禍を発端とした半導体の供給不足はもちろん、その他部品も滞っていた状況からまだ抜け出せずにいるからだろう。
たとえばアリアの場合、B6の前輪駆動車も注文を一時中止した状態が続いている。昨秋の納期遅れの告知において、B6のe-4ORCEやB9のリミテッドも納期遅れの告知があった。ことに4輪駆動では、前後のモーター制御を緻密に行うことで旋回性能をより高めるのが特徴となっており、電子制御部品が余計に必要になるだろう。
bZ4Xも、いまだに前輪駆動車の単一車種でのリース注文の状態が続いている。これも、前後のモーターを制御する4輪駆動ではより多くの部品を必要とするためであろう。

EVに限らず、一時は、アイドリングストップ機能を外した車種の販売や、輸入車のなかにはラジオさえ取り付けられない事例もあった。
こうした半導体不足の状況は、EVであるかエンジン車であるかを問わず、いかに現代のクルマが電気に依存した製品になっているかを、改めて認識させる出来事だ。
自社生産で電子制御部品を賄う海外EV専業メーカー
一方で、バッテリーメーカーとして創業した中国のBYDは、自社で半導体その他の電気部品を製造しているので、上記のような納期遅れの影響は限定的であるようだ。また、EVでもっとも原価の負担が大きいとされるリチウムイオンバッテリーを自社生産するうえ、電極にリン酸鉄を使うなど独自の原価低減に努めてきた成果が、競合他社に比べお得感のある値付けを実現している。
リン酸鉄の電極については、米国のテスラもモデル3で導入している。

EVに的を絞って開発・製造・販売するメーカーは、重要部品への備えがほかの自動車メーカーに比べ充実しているといえそうだ。

既存の自動車メーカーがEVメーカーへ転換を図るのは容易ではない。しかし、日本ではホンダが、欧州ではボルボが、EVメーカーを目指すことをすでに明らかにしている。メルセデス・ベンツも、乗用車に関してはEVが取るべき道だと、ドイツ本社の会長が語っている。
5年後か10年後か、いずれにしてもEVが新車販売の中核になると予想するなら、一刻も早くEVメーカーへの脱皮をはかることが、逆に、半導体や電気部品不足が起きた際の強みになる可能性もある。