この記事をまとめると
■クルマのフロントガラスのコーティングにはいくつか種類が存在する



■メジャーである「親水」「疎水(滑水)」「撥水」のメリットとデメリットを紹介



■ボディ用コーティング剤をガラスに使うのはあまりオススメできない



フロントウインドウのコーティングにも種類があった!

みなさんはフロントガラスのコーティングはどうしていますか? おそらく半分以上の人はそのまま何もせずに使っているという印象ですが、たまに誰かのクルマに乗せて貰っていて雨が降ってきた際に、雨粒がコロコロと流れていくのを見ると「あ、ちゃんとコーティングしてる人なんだ」と感心させられます。その人への評価がちょっとアップする感じですね。



撥水・疎水・親水! フッ素系・シリコン系! クルマのガラスコ...の画像はこちら >>



そのコーティング剤ですが、あまりやらない人や、使ったことがない人にとっては、カー用品店で並んだ多くの商品を見ても、どれを選んだら良いのか迷ってしまうでしょう。

当たり前ですが、宣伝文句は魅力的な効果ばかり書いてあるので、どれも良く感じてしまい、余計に選べません。



ここでは、そんなコーティング剤の種類やその効果について話していきたいと思います。



■フロントウインドウ用コーティング剤の種類

フロントウインドウのコーティング剤にはいくつか種類があるのは知っていますか? コーティング剤にはその効果によって「親水」、「疎水(滑水)」、「撥水」の3つに分けられるようです。



親水系のコーティング剤はガラスの面に水が馴染んで薄く広がる性質を持っています。年齢を重ねるとシャワーの時に水を弾かなくなって……まあ、そんなたとえは置いておくとして、このタイプは雨水の粒が球にならず、すぐ広がるので、常に全体的に水の膜がある状態になっています。



疎水系のコーティング剤は、親水と撥水の中間的な特性を持っていて、撥水ほどクッキリとした球になりませんが、「そこそこ弾いているな」と感じるくらいには水を弾きます。



撥水系のコーティング剤は、冒頭で話したような、雨粒がガラス面に留まらずにコロコロと流れ落ちていくくらいに水を弾く特性があります。強力な製品をコーティングしてすぐにシャワーなどで水を掛けると、ほとんど粒が残らないくらいに流れてしまいます。



撥水・疎水・親水! フッ素系・シリコン系! クルマのガラスコーティングの正解はドレ?
用途に応じて選ぶべきウインドウコーティングの世界



ちなみにこの3種の区分ですが、水の粒を水平面に置いたときの、雨粒の表面とガラス面との接触部の角度で定義されています。親水は40度以下、疎水は40度から90度、撥水は90度以上となっています。



■撥水コーティングの○と×

では、その特性の違いが、フロントウインドウのコーティングとしてどう効くのかという点を見てみましょう。



まずもっとも販売されている製品の多い撥水タイプは、水を弾いてくれるので水滴がある部分以外は乾いているときとほとんど同じ状態の視界が確保されるのがいちばんの特徴であり、メリットです。



撥水・疎水・親水! フッ素系・シリコン系! クルマのガラスコーティングの正解はドレ?
撥水コーティングのイメージ写真



「パラパラ」という程度の雨だったらフロントウインドウに付着する数が少ないので、ワイパーを使わずにそのまま走るという人もいるでしょう。本降りになってきたらワイパーを作動させて拭き取ると、一気に視界がクリアになるので「コーティングして良かったなー」というのが実感できます。



性能もどんどん上がってきて、発売当初は「50km/h以上で雨粒が飛ぶ」、とアピールされていたのを覚えていますが、いまは「停止状態でも雨粒が落ちていく」となっていて、その進化に驚かされます。



一方で、撥水の悪いところです。水を弾く特性のために、雨が降ったあとでわずかに残った水滴の粒が乾燥し、不純物が固まって付着してしまいます。撥水効果が薄れてくると、この残った粒の割合が多くなるので、けっこう気になる、という人も多いと思います。



撥水・疎水・親水! フッ素系・シリコン系! クルマのガラスコーティングの正解はドレ?
水滴の跡が残ったフロントガラスのイメージ写真



また、雨粒がレンズの役割をして、その下のダッシュボード表面に焼け跡を残してしまうということも理屈上はあるのですが、実際はそれが跡になってしまったという話はあまり聞いたことがありません。



その場所ごとに決められたコーティング剤を使おう

■親水コーティングの○と×

一方で親水タイプはどうでしょうか。フロントウインドウに施工して雨に降られた場合、雨粒はすぐに馴染んで広がります。そのまま次々と付着しますが、当たったそばから広がるので、ガラス表面は薄い水の膜で覆われた状態になります。この状態は視界的に見るとあまり良いとは言えません。



撥水タイプは雨粒が残るため、降水量や外の明るさによってはその存在が気になって不快だ、という見方もありますが、親水タイプは言ってみれば薄いビニール越しに見ている状態に近いので、たとえば前走車のナンバーが読みづらい、という感じの視界になります。



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水滴の付いたフロントガラスのイメージ写真



このようにフロントガラスのような広い面ではデメリット寄りの特性と感じますが、それがドアミラーにとっては有効な特性となります。



ドアミラーは面積が狭いので雨粒とクリアな部分の比率が見えづらい方に傾きます。そして、フロントウインドウのように走行風が当たらず粒が残った状態のため、付いた雨粒はずっとそのままです。

これが親水タイプの場合、雨粒は残りません。少しぼやっとするのは避けられませんが、視界の認識性は格段に親水タイプのほうがいいという見方が多いようです。



撥水・疎水・親水! フッ素系・シリコン系! クルマのガラスコーティングの正解はドレ?
ドアミラーにコーティング剤を塗っている写真



ちなみに疎水タイプですが、これは両者の中間というか、効果がマイルドな撥水タイプという感じなので、フロントウインドウ用コーティング剤としてあまりアピールする点がなく、実際にその特性を謳った商品はほとんどないようです。



■撥水コーティング剤の種類、シリコン系とフッ素系の違い

ということで、フロントウインドウには撥水タイプのコーティング剤が多く販売されていますが、その組成を見てみると「シリコン系」と「フッ素系」の2種があって、それぞれ特性の違いがあるようです。



シリコン系のコーティング剤の特徴を箇条書きしてみると、



・手軽に施工できる



・撥水効果が(比較的)高い



・価格が控えめ



となります。



手軽で安いということは、興味が涌いた人に「お試しで買ってみよう」と思わせる効果も高いため、市販の商品の多くはこちらのシリコン系のようです。



一方のフッ素系の特徴は、



・効果が長持ちする



・施工に少し手間が掛かる



・価格が安くない



となります。



こちらは耐久性が高く長持ちするのがいちばんのメリットなので、「頻繁に塗り直しをするのが面倒」という人や、降水日が少ない地域や季節に向いていると思います。



撥水・疎水・親水! フッ素系・シリコン系! クルマのガラスコーティングの正解はドレ?
フッ素系コーティング剤を施工しているイメージ写真



また、シリコン系のコーティング剤は効果が切れかかると撥水状態のムラが起こるため、視界が悪くなるという傾向もあるようです。それを少しでも遠ざけたい、ということでフッ素系を選ぶ人もいるようです。



また、摩擦特性の違いも無視できません。フッ素系のコーティング剤の特性として、摩擦係数がシリコン系より高い傾向があり、ワイパーを作動させたときに、雨の降り始めなどの乾いた状態で「バババ……」とビビリが発生することもあるようです。シリコン系では起きないとは言えないのですが、その可能性が少し高いという点も知っておいて損はないと思います。



撥水・疎水・親水! フッ素系・シリコン系! クルマのガラスコーティングの正解はドレ?
フロントワイパーを作動させている写真



■ガラス用ではないコーティング剤の使用はNG?

いまどきはいろんな情報が飛び交っているので、裏ワザ的にイレギュラーな使い方を紹介しているものもよく見かけます。このフロントウインドウ用のコーティングもいくつかの裏ワザが出まわっているようです。



まず、つや出し系のシリコンスプレーを使うというもの。これは期待したほどの効果が見込めないようです。そもそもツヤを出すのが目的の商品なので、撥水用に開発された製品と同じ性能を求めるのは間違っています。



続いては、ボディ用のコーティング剤を施工するというもの。これは場合によっては効果があるものもあるかもしれませんが、やはり専用品を用途以外で使うと効果は減少すると思います。ボディ用のコーティング剤は、塗装面に定着しやすいように調整されていますので、ガラスとの相性はまったく保証されていません。これは推測ですが、施工してすぐは効果があっても、定着しきれず剥がれてしまう可能性が高いのではないでしょうか。



撥水・疎水・親水! フッ素系・シリコン系! クルマのガラスコーティングの正解はドレ?
ボディコーティング剤をフロントガラスに噴射している写真



こうしてさまざまな製品が販売されているフロントウインドウ用コーティング剤ですが、この記事である程度の知識を蓄えたあとで、余裕があればいろんな製品を自身で試してその違いを実感してみるのも楽しいと思います。

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