この記事をまとめると
■先進安全技術の先駆けのスバル「ADA」は最上級グレード向けの特別な存在であった■先進安全技術に加え衝突被害軽減ブレーキの普及によりこれらのコストは大幅に下がった
■自動運転レベル2のADAS機能のコストは下がるが、自動運転レベル3ではまだ下がらない
最上級グレードのための特別な装備だった先進安全技術
クルマの先進安全技術という言葉は、ユーザーの間でもすっかりお馴染みなったのではないだろうか。日本では、スバルのアイサイトが先進安全技術の普及における大きなきっかけとなったと言えるだろう。
時計の針を少し戻せば、アイサイトの起源ともいえるアクティブ・ドライビング・アシスト(ADA)が1999年、当時の「レガシィランカスター」に採用された。
その後、ADAは技術進化していくが、自動車ユーザーの間では”知る人ぞ知る存在”といった特殊な装備という見方が強かった。
2000年代後半に入り、アイサイトという名称になり、レガシィへの装着が始まると「アイサイトが欲しいからスバル車を購入する」というトレンドが生まれた。

当時、新宿駅近くにあったスバル本社で、スバル関係者とアイサイトについて意見交換した際、「まさか、弊社のステレオカメラ技術がスバルブランドへの評価を一気に高めるとは想像もしていなかった」と本音を漏らしていたことを思い出す。
この時期、トヨタ、日産、ホンダなどでは、自社の顧客がアイサイトをきっかけにスバルに流れているという市場調査を受けていた。販売の現場から、「ウチもアイサイトのような先進安全技術を標準装備したモデルを早急に出して欲しい」という声が高まったという。
ADAS機能のコストは量産化によって大幅に下がっている
一方で、自動車アセスメントの観点で、それまでの衝突安全技術に加えて、予防安全技術に対する試験項目が加わるようになった。いわゆる、自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)について、歩行者や自転車、さらに夜間での対応など、予防安全技術の評価項目が段階的に引き上げられていったのだ。
こうして、自動車メーカー各社は、ADAS(先進運転支援システム)を高級車のみならず、軽自動車まで標準装備するようになる。さらには、高齢ドライバーによる”アクセルとブレーキの踏み間違い”が原因の事故増加が社会問題化したことも、多くのモデルでのADAS(先進運転支援システム)標準装備化を後押しすることになったと言えるだろう。

そんなADAS(先進運転支援システム)のコストについては、前述のスバルADAの時代と比べれば、かなり低減した。自動車メーカー各社が多様なセンサー技術や画像処理技術を用いて、量産効果によってコストが下がったからだ。
それでも軽自動車やコンパクトカーなど、そもそも新車価格が抑えられてきたモデルにとっては、ADAS(先進運転支援システム)装着コストはユーザーにとって割高に見えることもあるだろう。
たとえば、軽トラックのダイハツ「ハイゼットトラック」の場合、最廉価のスタンダード(スマートアシフト非装着車)が90万2000円で、スタンダードは96万8000円だ。これが、より高度なADAS機能を有するモデルになれば、ADAS機能の差分での価格差は大きくなる。

たとえば、自動運転レベル3量産車となった、ホンダ「レジェンド」の場合、2022年1月に国内販売を終了した通常モデルが724万9000円。対して、レベル3機能搭載車は、1100万円でリース販売となった。
国は、ADAS機能について当面、自動運転レベル2(ADASの領域)の普及を進めるとしており、アイサイトXや日産プロパイロット2.0などの量産効果が上がり、通常モデルとの価格差が縮小していくことになるだろう。

運転の主体をシステムが担う自動運転レベル3になると、ADASの領域を超えることから、通常モデルとの価格差が近年中に一気に縮小することは難しいかもしれない。