この記事をまとめると
■最近の新車は登場しても買えないことが多く、そこにつけ込んだ転売ヤーが増えている



■納期遅延の消化が優先されているのが新車がすぐ来ない原因にある



■メーカーは市場の分析をもっと緻密にする必要がある



最近はどのモデルも新車が全然買えない!

最近は受注を停止させる車種が増えた。需要に対して日本国内に供給できる台数が少ないためだ。



以前は新型コロナウイルスの影響で、半導体、ワイヤーハーネス、塗料などの供給が滞り、生産と納期が遅れて受注を停止させる車種が相次いだ。

メーカーによると、「最近は半導体などの供給状況は好転してきたが、以前の納期遅延で納車を待っているお客さまも多い。いまはその生産を行っているから、新車を買うときの納期はいまでも長い」と言う。



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ただし、納期の遅延をすべて新型コロナウイルスの影響としては片付けられない。たとえば2021年に発売されたランドクルーザー(300)は、発売直後には販売店で「納期が4年以上を要する」と案内された。その後に受注を止めている。開発者に納期遅延の理由を尋ねると、「中近東やオーストラリアへの供給が多く、日本市場への割り当てが10%以下と少ないため」と返答された。



転売ヤーが悪い……以前に転売ヤーが暗躍できない供給が大切! ほしい新車が受注停止だらけの現状は「コロナ禍の余波」だけじゃ片付けられない
トヨタ・ランドクルーザー



新型になったアルファードとヴェルファイアも受注を止めた。定額制カーリースのKINTOを使えば納車は可能だが、使用期間を満了したら返却せねばならない。したがって、ユーザーが買い取って自分の所有にすること、つまり購入はできない。



このほか日産ではフェアレディZ、GT-R、アリアの受注を停止している。フェアレディZは受注の停止中にNISMOを発売して、納車を待つユーザーを対象に販売した。納車待ちのユーザーに配慮したわけだが、NISMOの設定を見越して標準グレードを注文しなかった人は不満を感じている。



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日産フェアレディZ NISMO



ホンダではシビックタイプRの受注も停止した。スズキ・ジムニーとジムニーシエラは、受注を行っているが、2018年7月の発売以来、納期は1年以内に縮まらない。販売店では「いまでも納期は1年から1年半を要する」と言う。



売れ行きの予測をするのもメーカーの仕事

新型コロナウイルスではなく、メーカーの都合で購入しにくい車種の典型はトヨタ・センチュリーだ。1カ月の販売基準台数が30台と少ないこともあり、購入したいユーザーの希望に応えることが困難な状況に陥った。



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トヨタ新型センチュリー



販売会社の顧客対応もさまざまだ。ある販売会社は、「現在センチュリーを所有しているお客さまに限って販売する」と言う。「弊社で20台以上のトヨタ車を購入した経験のあるお客さまに販売する。必然的に法人のお客さまになる」という話も聞かれた。



「新型センチュリーはリースのみ(転売防止対策と思われる)。ウェブサイトで申し込んだ後、お客さまを審査して、センチュリーマイスターと面談する。審査の結果次第では、面談に進めない場合もある。

また、面談した結果、お断わりする場合もある」



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トヨタ新型センチュリーの車内



「お客さまの審査」については、販売店でも困惑していた。「センチュリーの購入を希望されるお客さまは、大半が経営のしっかりした法人です。せっかく購入を申し込まれたのにお断わりすると、気分を害されると思います」。



納期が遅延したり、受注を停止すると、どのメーカーも「ここまで人気が高まるとは思わなかった」と言うがこれは詭弁だ。この言葉をそのまま受け取ると、市場の分析に失敗したことになる。メーカーの市場分析力は当然ながら優秀だから、需要の読み間違いという初歩的なミスを犯すとは考えにくい。



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クルマの販売現場のイメージ



当たり前の話だが、クルマを気持ちよく買えることも、商品力の大切な要素だ。顧客を待たせて苛立たせたのでは優れた商品とはいえない。とくに受注を停止している車種は、ユーザーにとって存在しないのと同じだ。



納期の遅延や受注の停止によって生じる転売と中古車価格の高騰は、市場の混乱で好ましくないが、そもそも納期が適正であれば転売も発生しない。メーカーは商品を開発するときに、適正な納期も商品力の大切な要素として加えるべきだ。

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