この記事をまとめると
■テスラのサイバートラックのデザインは「アリ」なのかカーデザインの専門家が評価



■強固な素材を採用している故に加工が難しく、直線的な見た目になったと予想される



■グッドデザインというよりは、インパクトや刺激の強さ優先の企画モノ感が漂っている



このとんでもないデザインで本当に出しちゃった!

2月15日に日本で初公開されたテスラの「サイバートラック」のスタイルが話題です。「これはどう見てもコンセプトカーでしょ?」というぶっ飛び具合に、もはや思考停止状態に陥っているクルマ好きも多いとか。では、果たしてこのデザインはアリなのか、あらためて検証してみましょう。



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全体のプロポーションをチェックしてみる

とにかく見る人を驚かせるスタイリングですが、じっくり見ていると決して理解不能ではないことがわかってきます。



たとえば「前のめり」な三角形のフォルム。もともとトラックはフロントのキャビンと長い荷台の組み合わせですから、その前後端とルーフの3点を直線で結べばこのカタチになるわけです。リヤに向けて下る長いルーフは意表を突いたものですが、これはSUVではないので水平に延ばす必要はありません。



ポリゴンかよ! 「オシャレ」にも「何も考えていないよう」にもみえる「テスラ・サイバートラック」はデザインのプロから見てアリなのか?
テスラ・サイバートラックのサイドビュー



5700mmに届かんとする全長の割に、約1790mmと比較的低いボディは、このクルマが何とポルシェ911より速い加速性能をウリにしていることが大きいでしょう。最高時速209km/hでの高速安定性を考えれば、広く低いボディは必須です。さらに、この低さには転倒リスクを下げる効果もあるとか。



また、EVであることを最大限に生かした超ショートオーバーハングは、車高調整型エアサスペンションとともに、トラックとしての余裕あるデパーチャーアングルを確保するもの。見た目にも強い躍動感を与えていますね。



使用する部材の都合をデザインで解決

銃弾も跳ね返す装甲性能をカタチにする

さて、キモはやっぱりほぼ平面だけで構成されたスタイルですが、これは素材の特徴が大きく影響しているようです。「ウルトラハードステンレススチールエクソスケルトン」と呼ばれるボディ素材は新規に開発された頑丈な合金で、なんと社内でのサブマシンガンによる耐久試験では1発の弾丸も貫通できなかったそう。



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テスラ・サイバートラックのボディにハンマーをぶつけている様子



ナゼそんな物騒な試験を……と思いますが、昨年米国外のテスラオーナーが武装襲撃を受けたそうで、先の転倒も含め、徹底した安全性こそがこのトラックの最優先事項だとか。そんな外板を使ったら流麗な面の加工などは相当困難な筈で、「じゃあいっそのことすべて平面で行こうとなったのでは?」と想像されます。



そうそう、フロントについては恐らく歩行者保護の要件もあってか、ある程度の曲面構成になっていますね。



革新性とデザイン性の両立は難しい?

ということで、この特異なスタイリングにはそれぞれ根拠となる理由が見つかるワケですが、じゃあそれは「いいデザイン」なのか? ここはふたつの対照的な見方があると思います。



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テスラ・サイバートラックのリヤスタイリング



ひとつは、EVとしての可能性を感じさせるスタイリングであること。他社はもちろん、テスラ自身のラインアップが「EVっぽくない」ものであるなか、コンパクトなモーターでなければできないパッケージを示した点で画期的だといえます。



一方、スタイリング自体についてはインパクトこそ大きいものの、いわゆるグッドデザインとはちょっと違うような……。まるでステルス戦闘機にタイヤを付けたような斬新さと驚き、刺激の強さは、あくまでも企画モノといえそうです。



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テスラ・サイバートラックの走行写真



また、弾丸を通さない合金やアーマーガラスで装甲されたこのトラックが、一体どんな道を走るのかわかりませんが、街なかの景色としては少々過激でしょう。

そこはデザインのあるべき役割と少々離れているかもしれませんね。