この記事をまとめると
■日本で行われたフォーミュラE第5戦「Tokyo E-Prix」に岸田首相がサプライズ登場した



■岸田首相のフォーミュラEに対するコメントはとてもシンプルでダイレクトだった



■EVの普及で国や地域が社会環境に応じて「エネルギーの統括的な管理」ができるようになれば世の中のためになる



日本でEVを理解してもらうためにフォーミュラEに岸田首相が登場

世の中でこれからどんどんEV(電気自動車)が普及したら、何がどういいのだろうか? そんな観点で、日本初開催になった「フォーミュラE」世界選手権2023-2024年シリーズ10第5戦「Tokyo E-Prix」(2024年3月30日決勝)をコース各所でじっくり観ていた。



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オープニングセレモニーでは、岸田首相がサプライズで登場。



「二酸化炭素が出ない、エンジン音が出ない、だからこそ、東京での開催が実現をしました。

日本での初めての公道レースです。今日は東京の街で、未来が、そして夢が猛スピードで駆け抜けます。国も東京都も、環境に優しいモーターレースをしっかりと盛り上げてまいります」と挨拶した。



このように、EVは排気ガスが出ないので、温暖化効果ガスの一種である二酸化炭素が出ない。だから、地球温暖化に対する効果がある、という解釈だ。



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スバル・ソルテラの走行シーン



また、大きなエンジン音はレース好きの人にとっては魅力のひとつだが、街なかでは騒音になりかねない。

だから、EVは騒音に対する効果がある、という解釈である。



じつにシンプルな考え方である一方で、「電池を製造する過程で材料の採掘や輸送、そして電池加工や車両製造の段階で二酸化炭素は出ている」というライフサイクルアセスメント(LCA)の観点で反論する人もいるだろう。



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BYDのブレードバッテリー工場



また、「フォーミュラEで使っている電力が、太陽光や風力などの再生可能エネルギー100%ではないじゃないか」という声があるのも当然だ。



それでも、岸田首相のEVを象徴するフォーミュラEに対するコメントは、日本で広くEVを理解してもらうためには、とてもシンプルでダイレクトな方法だったのではないだろうか。むろん、岸田首相はLCAなど、EVに対する課題を十分理解しているはずだ。



EV社会の実現で電力の総括的な管理がしやすくなる

その上で、EVが普及することで「本当に世の中のためになる」ことについて私見を交えて補足する。

それは、国や地域がそれぞれの社会環境に応じて「エネルギーの統括的な管理」ができることだ。再生可能エネルギーを使えば、エネルギーの地産地消が可能となる、という理想論がある。



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再生可能エネルギーによる発電



また、電力はEV以外にも家庭や企業で使用する標準的なエネルギーなので、国や地域のエネルギーの需給を考慮しやすくなる。こちらも、理想論である。



だが、現実的には再生可能エネルギーのみでは、EV全数など日本全体の電力を賄うことは、現在の技術では難しい。だから、発電所で発電するためのエネルギー源は、天然ガス、石油、石炭、そして原子力、水力、地熱などを社会情勢や技術の進捗を見ながらバランスさせていく、というのが日本の方針だ。



それでも、電力を社会でどう分配するべきかという方法のなかで、EVでならば国として電力の総括的な管理がしやすくなるともいえる。



ガソリンやディーゼル燃料に比べて、外的要因による価格変動の幅を抑えることができる可能性もあるだろう。そのほか、EVを災害時の電源として利用できるという「いいこと」もあるが、災害時にEVで移動することと電源を供給することをどうバランスさせるのか、という根本的な課題もある。



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日産の災害復旧支援コンセプトカー「RE-LEAF」



EVが普及すると何がどういいのか?



本格的な普及期前のいまだからこそ、自動車メーカー、販売店、そしてユーザーは改めて自分なりに考えてみるべきだと思う。