この記事をまとめると
■後席が主役のクルマをショーファーカーと呼ぶ■日本にも後席が主役となっているクルマがセダンやミニバンで存在する
■各モデルの快適度を比較した
リヤシートが凄すぎるクルマを徹底ジャッジ!
クルマを比較するときに「走りの違い」や「装備の違い」というのはよくありますが、そこがメインじゃなくて「後席」が主役のクルマも少しずつ増えています。これらはいわゆるショーファードリブン、ショーファーカーなどと呼ばれますが、運転手に運転を頼んで自分は後席でゆったりと過ごすためのクルマです。
日本では現在、トヨタ・センチュリーをはじめ、レクサスLS、LM、トヨタ・グランエースといったモデルがショーファーカーとして登場していますが、いったいどの後席がいちばんいいのでしょうか? シートや装備、乗降性などを比較しながら、後席日本一を考えてみたいと思います。
まずは、数々のVIPをもてなしてきた歴史を持ち、日本最高峰のショーファーカーとして進化し続けているトヨタ・センチュリー。現在、従来からあるセダンタイプは「センチュリー(セダン)」となり、新たに登場したクロスオーバータイプのボディが「センチュリー」としてラインアップされています。お値段はセダンが2008万円から、センチュリーは2500万円からで、こちらはほぼオーダーメイドとなっているため、値段の詳細はそのオーダー次第ということになっています。

今回は試乗したことのあるセダンで比較しますが、落ち着いたグレーと木目のインテリアは格調高く、最初は会社の応接室やお金持ちの自宅の客間に通されたような雰囲気を感じます。スペースについても、セダンなのでそれほど広大というほどではないのですが、ソファに身体を預けるようなゆったり感。一般的なS字バネだけでなくコイルバネも使っているシートは、肌触りがよくクッション性がたっぷりしているので、居心地のよさを感じます。

センチュリー(セダン)では、助手席の後ろの席がもっともくつろげるスペシャルシートとなっており、まず助手席が電動操作でスーッと前にスライドしつつ、ヘッドレストが前に倒れて後席からの見晴らしのよさを確保。
そして背もたれが電動オットマンとなっており、後席をリクライニングして足を伸ばせばマッサージチェアのようにリラックスできます。実際にマッサージ機能も付いており、センターアームレストに備わるタッチパネルでメニューを選択することができます。

最新のセンチュリーでは、後席が世界で初めてフルフラットになる機能が搭載されておりますが、センチュリー(セダン)ではどこか包まれるような空間が落ち着く、エレガントな後席が体感できました。
続いて同じセダンであるレクサスLSの後席は、オールレザーのインテリアがどこかデザイナーズホテルのお部屋にチェックインしたかのように出迎えてくれます。ステッチの模様も凝っていて、昔は自動車のシートに使うのは難しいとされていた最高級レザー、セミアニリン本革さえも凌ぐという「L-ANILINE本革」が使われているんです。

ふかっと柔らかく、しっとりと肌に吸い付くようで、思わず「ハァ~」っとため息が出そうな座り心地。シートバックとクッションには低反発ウレタンが使われていて、表皮とクッションの縫い合わせ位置を深くすることで、表皮をあえてたわみやすくしており、それによって体圧が分散して乗り心地のよさをアップしているのです。

スペースとしては、センチュリーよりもやや頭上の余裕がタイトなように感じますが、同じように助手席の後ろのシートが特等席となっていて、3つのプリセットポジションが設定されています。通常位置から、エンターテインモードにすると、足もとスペースが広がり、座面から連続するタイプのオットマンが伸びてきます。
さらにリラックスモードにすると、助手席がスーッと前に移動し、背もたれが深く倒れて眠りにつきたくなる姿勢に。夜間は、ほんのりとしたアンビエントイルミネーションが柔らかく光り、上品なムーディーさを演出します。
もちろんマッサージ機能も冷蔵庫もありますが、レクサスLSには「レクサスクライメイトコンシェルジュ」があって、各席それぞれを自動で快適な温度に調整してくれるという、なんとも贅沢な空調が魅力的。左右で日の当たり方が違ったりするなかで、これはありがたいですね。

また、マークレビンソンの超高性能なサウンドシステムが搭載されており、臨場感あふれる音楽が楽しめるのもLSのいいところ。セダンが好きで、移動しながら音楽を堪能することが多いという人は、LSがいいかもしれません。
ミニバンはやっぱり装備が凄い!
次に、2020年(実際には2021年開催)の東京オリンピックでのVIP送迎需要を見込んで登場したトヨタ・グランエース。先代アルファード並みの後席が3列シートすべてに備わっていると話題になりましたね。

ただ、ミニバンという見た目から想像するのとちょっと違うのは、そのスペース。じつはグランエースはベース車両となるハイエースの関係で、室内のフロアがかなりあげ底。乗り降りの際にも地上からヨイショと大きく足を上げて乗り込むことになります。もちろんステップは2段になっていますが、シートに座ってみるとあまり天井が高いという感じではなく、その代わりに窓からの見晴らしがいいところが特徴となっています。

シートの機能としては、リクライニングや電動オットマン、アームレストやテーブルといった基本的なおもてなし機能は付いていますが、冷蔵庫やマッサージなどはナシ。なので一般的なミニバンから見れば豪華なシートではありますが、あくまでグランエースは「3列目シートも同じように豪華でゆったり座れる」というところに魅力があると考えられます。たくさんのゲストをおもてなししたいときにいいですね。
さて最後は、中国ですでに富裕層から大人気となっており、ようやく日本でも販売されることになった、レクサスLM。こちらは巨体のミニバンなのに、当初は「たったの4人乗り?」と驚いてしまいましたが、のちに6座仕様も追加されました。でもやっぱりすごいのは4座仕様です。

室内は「きっとプライベートクルーザーってこんな感じ?」というような、モダンで洗練されたゴージャスなシートがふたつ。
そしてそのパーティションは後席側がドーンと48インチの大型ディスプレイになっていて、その下にはシャンパンボトルが3本入る冷蔵庫を完備。シートはもちろんオットマン、マッサージ、格納式テーブル付きで、見上げれば左右別々にガラスルーフがあり、電動サンシェードも各窓に付いています。

また、LSで紹介した「レクサスクライメイトコンシェルジュ」がさらにパワーアップ。パーティション上部中央に乗員と周辺温度を検知する「温熱感IRマトリクスセンサー」があり、エアコンやシートヒーターなどを一括コントロールして快適に保つほか、エアコン、シートポジション、サンシェード、照明などを統合制御する「リヤクライメイトコンシェルジュ」をレクサス初採用しています。

Dream、Relax、Focusといったプリセットモードと好みでカスタマイズできるモードがあり、気分やシーンによって室内空間までが思い通りになるというのも未来的。シート素材はやはり最高級レザーのL-ANILINEで、すべての機能が取り外し可能なリアマルチオペレーションパネルで操作可能となっています。
こうして比べてみると、センチュリーも捨てがたいですが、やはり天井が高く広い空間でゆったりできるという点も含めて、日本一の後席はレクサスLMといっていいのではないでしょうか。皆さんは、どの後席に乗りたいですか?