この記事をまとめると
■悪路走破性能の高いSUVには4WDと2WDを切り替える副変速機が備わっている■副変速機のことをトランスファーと呼ぶ人もいるが本質的には異なる機能だ
■走る路面に応じて副変速機を操るのはクロカン4WDオーナーの楽しみのひとつ
2WDと4WDを切り替えて市街地走行を快適に
ひとくちに「SUV」といっても、さまざまなモデルが存在している。大径タイヤを履き、スタイルはオフロード風味だが、メカニズム的にはFFハッチバックのそれと同じパワートレインで、さほど走破性の期待できない「なんちゃってSUV」と呼ばれるモデルもあったりする。
2WDはSUVカテゴリーにおいて軟弱な存在……というのは誤解のもとだ。
たとえば、現行ラインアップにおけるもっともハードコアなクロカン性能を持つといえるトヨタ・ランドクルーザー70の場合、6速ATの脇にあるレバー操作によって2WDと4WDを切り替えることができ、さらに4WDモードではハイ/ローと2種類のギヤ比を選ぶことができる。
ローギヤを選択するとタイヤをまわす駆動力が増し、それによりハードなシチュエーションであっても走破できる。そして、この機能を実現しているメカニズムのことを「副変速機」などと呼んでいる。ちなみに、例にあげているランドクルーザー70でいえば、6速ATのほうが「主変速機」となる。
また、副変速機はクロカン4WDだけのメカニズムではない。大型トラックなどに採用されていることもあるし、少し前の軽自動車用CVTには副変速機を搭載しているものもあった。ただし、副変速機付きCVTの場合は、ハイ/ローの切り替えが自動制御となっているのでユーザーが副変速機能を意識することは、ほとんどない。

冒頭の話題に戻ると、ランドクルーザー70であればハイ/ローを切り替えるレバーによって、2WD(FR)と4WDを切り替えるようになっている。駆動方式でいえば「パートタイム4WD」と分類されるものだが、一部では副変速機が2WDと4WDの切り替え機能をもっていると思っている人もいるようだ。
同じレバーで操作しているので、そう捉えてしまうのも仕方ないが、2WDと4WDの切り替えを担っているのは「トランスファー」機能になる。例にあげたランドクルーザー70の場合、エンジン縦置きでリヤタイヤを駆動するのがパワートレインの基本的な構造となっている。

つまり、副変速機とトランスファーは本質的には異なる機能といえる。
クロカン4WDの多くで、このふたつを同じレバーやスイッチで操作するために「副変速機=トランスファー」と認識されがちだが、厳密にいえばそれは誤解だ。もっとも専門用語にこだわるより、その使い方を覚え、クロカン4WDの性能を発揮できることのほうが重要だろう。
路面状況に応じてモード切り替えをするのも醍醐味
パートタイム4WD機構において2WDモードが用意されている理由は、本格的なクロカン4WDになるほど市街地の舗装路を4WDモードで走ることが難しいからだ。なぜなら、ランドクルーザー70のようなクロカン4WDの場合、4WDを選ぶと直結4WDといって前後の回転差が同じになってしまう。まっすぐ走っているぶんには問題ないが、Uターンのように大きくハンドルを切るシチュエーションでは直結4WDはブレーキがかかったような状態になり、異音が発生したり、エンジンストップしてしまったりする。

これは「タイトコーナーブレーキング現象」と呼ばれるが、この乗りづらさを解決するために、また舗装路での燃費性能を少しでもよくするために、クロカン4WDでは2WDに切り替えられるようになっている。
スタイリッシュなピックアップトラックとして話題の三菱トライトンの場合は、タイトコーナーブレーキング現象を起こさないようにセンターデフが備わり、舗装路でも4WDを選べるようになっている。そんなトライトンでもフルタイム4WDモードとは別に直結4WDモードを用意しているのは、本当に滑りやすい路面では前後のタイヤ回転を同じにできる直結4WDのほうが駆動力を伝えることができるからだ。

個人的なエピソードとして、先日トライトンでオフロードコースを走ったときの経験をお伝えしよう。
オフロード走行なので2WDという選択はなく、まずはセンターデフを活かしたフルタイム4WDモードで走行をはじめた。

このように、走るシチュエーションのハードさに応じて、駆動方式の切り替えや、副変速機によるハイ/ローの選択を適切にするのはクロカン4WDオーナーの楽しみであろう。