この記事をまとめると
■スイスのジュネーブモーターショーが2025年以降開催されないことが発表された■2010年代に入ってから世界各地のモーターショーに変化が起き始めている
■モーターショーも時代の変化対応した新しいことにチャレンジすることが必須だ
100年以上の歴史を持つモーターショーが廃止
世界の大規模モーターショーとして長年親しまれてきたスイスのジュネーブショーがついに消える。主催する財団が6月上旬に公表した。2025年以降の開催計画は現在ない、と。
1980年代から世界各地のモーターショーの現場取材を定常的にしてきた身としては、悲しい気持ちと同時に、「致しかたない」という思いがある。
時計の針を少し戻すと、2010年代に入ってから世界各地のモーターショーに変化が起き始めていた。
ひとつは、いわゆるBRICsと呼ばれる新興国である、ブラジル、ロシア、インド、中国などのモーターショーが2000年代のようなドタバタした雰囲気ではなく、大手モーターショーのような落ち着きをもち始めたこと。とくに、その傾向は中国で強かった。

もうひとつは、米ネバダ州ラスベガスで毎年開催されるCES(コンシューマ・エレクトロニクス・ショー)の台頭だ。本来、CESは世界最大の家電見本市であったが、2000年以降はIT系産業の情報発信拠点という位置付けが強まった。
そのなかに、CASE(コネクテッド・自動運転・シェアリングなどの新サービス・電動化)という大きな時代変化に直面した自動車産業が徐々に組み込まれていった。

さらには、自動車メーカーがオンラインやSNS上で新車の情報を流したり、また新車発表を行うことも珍しくなくなっていった。
いまは変化を恐れずにチャレンジしていくことが重要
そうしたなか、2010年代初頭のCES開催時、筆者は当時のパリモーターショー主催企業の経営者と意見交換をした。
その際に彼は、「現在のようなモーターショーはあと10年、いや5年ももたない」という見解を示した。大きな自動車ディーラーショールームのような発想のモーターショーの必要性が一気になくなってきたという実感があるというのだ。

実際、それからほどなくしてフランス・パリサロンやドイツ・フランクフルトショーでは自動車メーカーの不参加が増加し、観客動員数も減少していった。

さらに強烈なインパクトがあったのが、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)である。コロナ禍では、オンラインやSNSでの新車発表や将来事業の公開が当たり前となった。
モーターショーでは、2020年のジュネーブショー開催直前のドタキャンと、史上初のオンライン開催オンリーという形式となった。こうした時代の流れのなかで、1905年からという歴史を誇るジュネーブショーが事実上、消滅する。
一方、日本では東京モーターショー改め、ジャパンモビリティショーとなり100万人を超える集客があった。

ただし、時代の変化は今後もさらに加速することが予想され、ジャパンモビリティショーを持続させるためには、主催者や展示企業が変化を恐れずに新しい物事に常にチャレンジしていくことが必須だと感じる。