この記事をまとめると
■「一般社団法人・全国自動車無線連合会」が会員数減少のため解散することとなった■タクシーの配車アプリが爆発的に普及して無線の利用頻度が激減している
■配車アプリの普及はタクシー業界にとって産業革命級の出来事だ
配車アプリの進化が止まらない!
報道によると、2024年6月13日に開かれた一般社団法人・全国自動車無線連合会の第64回通常総会において、同連合会を解散するための特別決議が採択された。解散理由については、会員数の減少に伴う会費の減少により、同連合会運営が厳しくなったためとしている。
タクシー無線といえば、古くはタクシー会社の事務所から各車両へ「空車ありますか?」と無線が入り、「空車ですよ」と運転士が返事をすると、「●●町2丁目の●●さん宅お願いします」といったやりとりで、配車要請をした利用客の指定場所へタクシーが迎えに行くというやりとりが行われていた。
ここ最近は、タクシーの配車要請をしてもらいたい人がタクシー会社の無線センターへ電話をし、迎えに来て欲しい場所を指定すると、オペレーターの目の前にある画面の地図上でその場所に近いところにいる空車のタクシーへ自動や半自動で迎車指示を出せるようになり、さらには無線オペレーターを介さない自動音声タイプなど、タクシー無線のシステムも高度に進化を遂げていた。
報道のなかには、タクシー無線導入は、「タクシーの産業革命であった」と報じているところもあった。しかし、ここ最近はさらなる「業界の産業革命」が起きている。それが、爆発的に普及したスマホアプリによる、空車タクシーとのマッチングサービス導入である。ダウンロードしたアプリを介してタクシーを配車してもらいたい人と、空車のタクシーをマッチングさせるサービスが急速に普及していったのである。
このスマホアプリによるマッチングサービスは、タクシーの新規利用客の開拓へも効果を発揮。コロナ禍前には、そもそも稼ぎのいい運転士がさらにこの最新デジタルツールを活用することで、年収1000万円プレイヤーも続出していたほど。

その後、タクシー業界はコロナ禍となると、感染拡大がひどかったころに一気に利用客が減り、ほぼ稼働しない日々が続き、運転士の離職も相次いだ。新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着きを見せると、再びタクシーの需要も戻ってきたものの、一時的に深刻な働き手不足となり、都内でも流し営業(道路を流して利用客を見つけるスタイル)のタクシーなどはほとんどいなくなり、利用困難者が続出した。
そこで、アプリの活用による配車要請が急増していった。いまでは、タクシーの稼働台数もかなり増えてきたほか、アプリ配車の利便性に慣れてしまった人も多くなり、アプリサービス地域の拡充も進んでいる。
高齢者も問題なく活用中!
アプリによるマッチングサービスに加盟する事業者のなかには、いままでもっていた無線センターの廃止、つまり無線配車自体を取りやめる事業者も目立ってきた。24時間稼働するのがタクシー。無線センターも24時間稼働しなければならず、それなりの規模のタクシー事業者ならば、無線オペレーターの数も結構な人数を確保することが必要だ。そのほかにも、無線システムの更新費用などもかかるので、コスト負担は結構なものとなる。なので、昨今のスマホアプリサービスの導入とともに、経営のスリム化のため無線センターの廃止が目立ってきたのである。

無線配車の全面廃止はいままでの顧客喪失につながるのではないかとの話もあるが、大手スマホアプリによるマッチングサービスでは、個人のほか法人専用サービスも用意している。さらに、いままで特定事業者のタクシーしか呼んでいなかった人も、スマホアプリを使えば、事業者を特定せずに近くの同じサービスに加盟している事業者タクシーとマッチングされることになるので、空車の少ない効率的なタクシーの稼働ができるというメリットのほうが目立っているようにも見える。
ちなみに筆者がダウンロードしているのは業界最大手ともいえるスマホアプリサービス。当初は筆者自宅近辺では1社しか加盟していなかったが、いまでは4社が加盟しており、繁忙時間帯をはずせば、それほど待たずにタクシーが来るようになった。時間帯や事情(時間に結構追われている)があるときはスマホアプリで配車する一方で、それ以外のときは顔なじみの運転士さんも多いので、まず馴染みの事業者の無線センターへ電話して配車要請するなど、筆者は使いわけも行っている。

「スマホアプリ」などというと、スマホを使えない世代といった話題がのぼってくるが、いまどきの高齢のみなさんは、若者ほどではないものの、結構な頻度でスマホを使いこなしている。
ある運転士によると、「朝の通勤時間帯は駅から乗られるお客さまでも、交通系ICカードの利用に加え、スマホ決済(配車要請しなくても、スマホ決済可能)がほとんどとなりました。おかげでつり銭の用意もそれほど気にしなくなりました」と話してくれた。クレジットカード決済も可能なのだが、機器にもよるのだろうが通信速度が遅かったり、領収書をはじめとして紙ベースでの発行物(領収書以外にもきちんと交信して決済出来たというものが出ないと決済終了にはならない)に時間を要するので、それを面倒がる乗客の多くがICカードやスマホで料金決済をするようになっているようである。

筆者の最寄り駅につけている地元密着タイプの小規模事業者は、無線センターとやりとりをする無線配車システムをとりやめ、いきなりスマホアプリに一本化した。運転士の多くは昔かたぎの「ヤンチャ系」が目立つので反発も多いかなと思っていたら、「これはいいねえ」と意外なほど馴染んでいることにも驚かされた。
筆者の使っているアプリは、地方の都道府県庁所在地をはじめ、主要都市でも同じアプリサービスに加盟している事業者が目立つので、地方でも気軽にタクシーを呼ぶことが出来たり、キャッシュレス決済など便利に使えるので重宝している。目的地に着いたら、そのまま時間を置かずタクシーを降りるだけという便利さは一度味わうとやめられないものである。

何かと保守的な印象の強いタクシー会社が、満を持してはじめたスマホアプリによる空車タクシーマッチングサービスの導入は、ある意味タクシー無線団体の解散までを招いてしまった、産業革命級の出来事であったといってもいいだろう。