この記事をまとめると
■2ストロークエンジンは4ストロークエンジンより高トルクかつ高出力だった



■初代と2代目のジムニーには2ストロークエンジンが搭載されていた



■高速巡航は苦手だがオフロードの走破性に優れていた



2ストロークエンジンとは

いまの軽自動車に搭載されているエンジンは、3気筒、4気筒など気筒数の違いや、NA(自然吸気)、ターボやスーパーチャージャーなどの加給かなどの仕様の違いはありますが、すべてのエンジンが4ストロークのレシプロエンジンです。



そう聞いてもエンジンに詳しくない人は「?」という感じかもしれません。詳しい解説は以下で行いますが、かつて乗用車に搭載されたエンジンは、過去に遡ると別の種類があったんです。



そのひとつが2ストロークエンジンです。前述のようにいまの主流は4ストロークというタイプのエンジンですが、その方式が異なる2ストロークというタイプのエンジンを搭載していた車両がありました。



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いまでは環境への対応が困難として廃れてしまいましたが、当時は4ストロークよりもパワーとトルクが優れるとして、4ストロークの上位に位置付けられていました。



そのため、搭載されていた車種もマツダスズキを中心に複数ありました。そのうちの1種がスズキのジムニーです。



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スズキ・ジムニー55(SJ10)のフロントまわり



起伏の大きいオフロードでの登坂性能に有利だということで、2代目まで主力エンジンとして採用されていました。



ここではその2ストロークエンジンを搭載していた初代のLJ10/20系&SJ10系と2代目初期のSJ30系をクローズアップして少し掘り下げてみたいと思います。



■2ストロークエンジンってなに?

現在主流の4ストロークタイプのエンジンは、吸気・圧縮・燃焼・排気という4つの工程を繰り返すことで燃料吐空気がミックスされた混合気の燃焼を完了する方式のエンジンです。ピストンは吸気と排気で1往復し、次の1往復で燃焼と排気を行います。なので、1セットの工程を行うのに2回転を要します。



その4ストロークに対して2ストロークタイプは半分の1往復で1セットの工程を完了できる方式のエンジンです。



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スバル360のエンジンルーム



流れを言語化すると、まずは燃焼の勢いでピストンが下がる途中で側面に空けられた穴(ポート)から排気をおこない、それから少し遅れたタイミングでその排気の勢いによる負圧を利用して排気とは反対側のポートから吸気をおこないます。下死点で上昇に転じたピストンが吸排気のポートを塞ぐと圧縮が始まり、上死点付近で点火されて燃焼が行われ、1セットの工程が完了します。



1セットの工程を半分の1回転で済ませられるために回転に対する出力の効率がよいことに加えて、カムシャフトやバルブなどの作動部品が不要なことでロスが少なく、4ストロークに対して最大で2倍くらい高いパワーが得られるのが最大の特徴です。



部品点数が少ないことはエンジンの軽さに貢献するので、車両全体の軽量化にも効果があります。



そのメリットがある反面、最大の欠点は燃費が悪いことです。燃焼室を密閉するバルブを備えた4ストロークは燃料のロスが少なくできるので燃費に有利ですが、圧縮と吸気をほぼ同時に行い、バルブを備えていない2ストロークでは、混合気が排気に引かれて排気ポートから出て行ってしまい、どうしてもロスが多くなってしまいます。



その燃焼されずに排気管に生ガスが漏れ出てしまうことから、排ガスの浄化には必須の触媒を稼働させることができず、環境の対応が困難ということで、排ガス規制が施行されたタイミングで4輪用の2ストロークエンジンは製造されなくなってしまいました。



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スバル360が白煙を出しながら走行している様子



いまこそ乗りたい2ストジムニー

■2ストロークエンジンが搭載されていたジムニーは?

スズキ・ジムニーには、1970年に発売された初代のLJ10/20系&SJ10系と、2代目初期のSJ30系にのみ2ストエンジンが搭載されていました。



初代のLJ10系に搭載されていたのは「FB型」で、360cc規格に合わせた359ccで25馬力を発生する空冷2気筒の2ストロークタイプです。



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スズキ・ジムニー(LJ10)のエンジンルーム



初代のマイナーチェンジ版であるLJ20型は、水冷化されて安定性が増した「L50型」を搭載。排気量は同じ359ccで出力が28馬力にアップしています。



そして、1976年に軽自動車の規格が変更されたことに合わせてもう一度マイナーチェンジが行われました。エンジンは550ccとなった規格に合わせて539ccに排気量アップされた「LJ50型」。2気筒から3気筒になりました。パワーは26馬力に留まっていますが、トルクが3.8kg-mから5.3kg-mへと大幅に向上し、オフロードでの戦闘力がアップしています。



1981年にはフルモデルチェンジが行われて2代目のSJ30系になりました。エンジンはSJ10系と同じ「LJ50型」が搭載されますが、パワーは28馬力へと少し向上しています。



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スズキ・ジムニー(SJ10)のエンジンルーム



2代目の中期(JA71系)からは4ストロークターボの「F5A型」エンジンへと切り替わり、2ストロークエンジンはラインアップから外れました。



■2ストロークエンジンの魅力

メーカーが2ストロークエンジンを採用したのは、上記のように同じ排気量なら出力とトルクに優れるという点です。



2代目の中期以降に搭載される「F5A型」はターボの採用で42馬力・トルク5.9kg-mへと大幅にアップしていますが、実際にオフロードコースでの登坂力や扱いやすさをクロスカントリーのマニアに聞くと、粘る特性のLJ50型2ストロークエンジンのほうが扱いやすくて数字以上に走破性がいいという意見がしばしば聞かれます。



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スズキ・ジムニー(LJ20)の悪路走行の様子



次いで人気のポイントは排気音です。バルブがない構造の2ストロークエンジンは、4ストロークエンジンとはかなり違う排気音が特徴のひとつです。



擬音化すると、4ストロークエンジンが「ブオーン」的な締まったオトナな音なのに対して、2ストロークエンジンは「ポロンポロン」という軽やかな印象の音です。この独特な排気音が好きで乗っているというオーナーも多いでことしょう。



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スズキ・ジムニー(LJ20)のエンジンルーム



この独特な排気音は2ストロークエンジンにしか奏でられないものなので、その希少性も魅力の要因になっているかもしれません。



社外マフラーに交換することで、まるでレーシングエンジンかのような爽快で力強い排気音にできるので、吸排気のチューニングを行う人も一定数います。



あとはエンジンが軽量なことによる車両重量の少なさです。4ストロークターボになった後継のJA71系と比較して40~50kgほど軽量です。

この点も走破性の高さに効いてくることでしょう。



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スズキ・ジムニー(LJ20)のリヤまわり



■しかしデメリットも多い

先にいいことばかりをお伝えしましたが、なにぶん旧い設計の車両とエンジンなので、欠点も複数挙げられます。



まずは巡航速度の上限が低いという点です。当時、パワーに優れた2ストロークエンジンとはいえ、技術力の限界というか、26馬力という出力でオフロードの走破性を優先させた低いギヤ比では、90km/hくらいが高速巡航の上限になってしまいます。いまの交通事情では左車線をときどき突つかれながら走ることを覚悟しないとなりません。



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スズキ・ジムニー(SJ10)のシフトレバーまわり



そして、次いでの欠点は燃費の悪さです。これもギヤ比の低さが絡んできますが、550ccという排気量に対して、燃費は平均9km/L以下という低さです。高速道路で長距離を移動するのはちょっと躊躇してしまう数値です。



また、2ストロークエンジンの宿命として、専用のオイルを燃料といっしょに消費しないとならないという点があります。このオイルの代金も燃費に加算されるため、燃費の数字は1~2kmほど下方修正しなくてはならないでしょう。さらに、いまは2輪も含めて2ストロークエンジンは生産されていないので、オイルの入手方法にも注意が必要です。ガソリンスタンドはアテにしないほうがいいかもしれません。

長距離を走る場合は余分に積むなどして備えが必要です。



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カー用品店でのオイル缶売り場の様子



あとは、先にパワーに優れるとお伝えしましたが、それはあくまでも当時の話で、2代目中期以降の世代からはNAの4ストロークエンジンに対するアドバンテージも保てなくなっていたようです。



この記事を見て2ストロークエンジン搭載のジムニーに興味をもったという人は、もし購入するなら早めに動くことをオススメします。いま現在でも残存する台数はかなり少ないうえに、エンジンを始めとする補修パーツもいつ入手困難になるかわかりません。



本気で探すなら、ジムニー専門店に相談するのが近道でしょう。

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