この記事をまとめると
■デコトラの発祥地は日本■日本独自の文化として認知されている
■東京パラリンピックの開会式にも登場した
日本の色を全面に押し出した改造が目を引いた
1975年から1979年にかけて公開された映画『トラック野郎』シリーズ。故・菅原文太さんと故・愛川欽也さんがタッグを組んで演じた星桃次郎とジョナサンの面白おかしく、また義理堅い人柄も功を奏し、日本中で大ヒットを記録した。
この映画の主人公は、日本を代表する名俳優だけではなく、彼らが劇中でハンドルを握った「一番星号」と「やもめのジョナサン号」。
改造車の多くは、海を渡って日本へとやってきたもの。そんななかで日本で生まれたデコトラは瞬く間に知れ渡り、いつのころからか日本が誇る独自の文化として、知られるようになったのだ。その理由として挙げられるのは、当然日本発祥の文化であるということ。そして、漢字や浮世絵などを大々的に採り入れたスタイルによるものが大きい。前述したとおり、日本の色を全面に押し出した改造車は少ないため、とかく目を引いたのだろう。

そんなデコトラは、映画やドラマなどさまざまな場面でも活躍してきた。それもまた、デコトラが日本の文化だと認知されていることの証明だとすることができる。1989年に公開された日米合作映画「ブラック・レイン」でも、デコトラが採り上げられた。この作品はリドリー・スコット監督の超大作で、マイケル・ダグラス、アンディ・ガルシア、そして日本からは高倉健や松田優作らが出演するという、豪華なキャスティングでも話題を集めた作品。そんな映画にも、デコトラが抜擢されたのである。
デコトラは日本の文化として認知されている
とはいえ『トラック野郎』のような内容ではなく、デコトラは物語の間をつなぐ程度のちょい役に過ぎなかった。

ちょうど東映京都撮影所で働いていた人物の周辺に、デコトラ愛好家たちのクラブ「ロンサムロード」に在籍していた人物が存在したため、クラブの会長車を含めた実在するデコトラたちが映画のロケに協力したのである。
とある工場の敷地内で追い詰められた主演のマイケル・ダグラス。拳銃を構えるそんな彼の背後から、クラクションとともにパッシングをしながら襲いかかってくる日野スーパードルフィンの大型ダンプ。映画の予告編にも抜粋されているシーンであるだけに、印象に残っている人は多いだろう。そのクルマこそが、デコトラクラブ「ロンサムロード」の会長(当時)をつとめた、三木清美さんの「鬼若丸」だった。

2021年に開催された東京パラリンピックの開会式では、日本を代表するギタリスト布袋寅泰さんとともに、デコトラを模倣したステージが全世界に公開された。改造車がモチーフでありながら、国を挙げた大きな舞台でデコトラが起用されるというにわかに信じがたいような展開となったのだ。それほどまでに、デコトラは日本が世界に誇る独自の文化として根付いているのである。
そんなデコトラに対する規制は年々厳しくなっていくばかりではあるが、世界に周知されているほどのデコトラ文化の灯を消すことなく、これからも変わらず維持し続けたいものである。