この記事をまとめると
トヨタがSDGsの観点から2025年以降に紙のカタログ制作を終了する



■そもそもカタログはメーカーが作成したものを販売会社が購入している



■データ確認だけならカタログは不要だが商談時にはユーザーを魅了する強力なツールにもなっている



メーカーと販売店にとって紙カタログの廃止はメリットが大きい

トヨタは2024年5月28日に、商品カタログの請求リクエストを終了した。2025年1月には、紙を使ったカタログ制作と印刷も終了する見込みだ。廃止の理由として、トヨタはSDGsやカーボンニュートラルへの取り組みを挙げている。



トヨタによると、商品カタログは1年間に約7000トンの紙資源を使い、森林資源に負担をかけている。カタログの制作、輸送、保管、廃棄の過程でも二酸化炭素を排出する。紙のカタログを廃止することで、二酸化炭素の排出削減効果は、1年間に約1万1000トンに達するという。



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そして、販売店にとっても、カタログの廃止にはメリットがある。コストの削減だ。カタログの制作はメーカー側が行うが、販売会社が販売促進のツールとして購入している。



カタログのページ数は、メーカーや車種によって異なるが、ほとんどが全ページカラーだ。印刷を美しくするために上質な紙を使い、表紙には光沢があって厚手になるPP(ポリプロピレン)加工を施すことも多い。一般的な雑誌よりも手間を費やして作られている。



クルマの紙カタログの廃止はアリorナシ? ディーラーの経済的負担は減るけれど「物理的なカタログ」の役目もまた大きい!
トヨタ・センチュリー(2代目)のカタログ



しかもカタログは全車をそろえるから、発行点数は多いのに、発行部数は雑誌などに比べて大幅に少ない。いわば多品種少量生産で、コスト面では効率が悪い。



さらにいえば、乗用車はマイナーチェンジや一部改良を行う。

頻繁な車種は毎年どこかが変更を受ける。そうなると、一部のページを差し替えるとしても、製本を改めて行わねばならない。メーカーの商品企画担当者から「カタログではマイナーチェンジなどの変更が面倒」という話を聞いたことがある。



いまでも紙カタログは商談時の大切なツールのひとつ

そこで、たとえばマツダのカタログでは、モノクロの諸元表や装備品表は、カラー刷りの車両カタログとは別冊にして差し込まれている。マツダに理由を尋ねると、「細かな改良によって一部の数値だけが変更されたとき、差し込んでいる諸元表や装備品表だけを刷り直せばいいから」と返答された。



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マツダCX-60のカタログ



そして車両が改良されると、販売店は古いカタログを廃棄、あるいは返品して、新しいカタログを購入しなければならない。ときどき、改良前のカタログを改良後も配り続けていることがあるが、購入しておきながらムダになっているカタログも多数あるようだ。



以上のような理由でカタログは廃棄されるが、紙に印刷された写真は、ウェブサイトとは比較にならないほど美しい。データをチェックするだけならカタログは不要だが、ユーザーを魅了するためには大切なツールになる。



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スポーツカーの紙カタログたち



とくに納期の長い車種を契約して納車を待っている間は、カタログをときどき眺めて、納車した後のドライブの計画を立てるといった楽しみ方もするだろう。クルマは趣味の対象になり得る商品だから、美しいカタログの果たす役割も大きい。

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