この記事をまとめると
■近年はペット用の火葬車両が増えている■ベース車両は軽バンやワンボックスバンが多い
■ペット用火葬車両の仕組みについて解説
動物の埋葬には決まりがない
近年、ペットを飼う人が増えているという。ペットとともに過ごす生活には充実感があり、動物というより家族の一員といっても過言ではないだろう。「ペット飼育可」の賃貸物件が増加傾向にあることも、こういった流れを後押ししているようだ。
人間が亡くなった場合、埋葬法に基づいて処置しなければならないが、動物に関してはそれにあたる法律がない。なので、現行法では動物が生きているときには「物」、亡くなれば「廃棄物」という扱いになっている。いいかえれば、ペットの葬儀、火葬事業は参入障壁が低いということだ。こういった背景の下、注目を浴びているのがペット用火葬車両(移動火葬車)である。1990年ごろから登場し、当初は葬儀事業者、宗教関連施設の付帯サービス的な位置づけにあった。その後、専門事業者が現れるなどして市場が形成されていったといわれる。
現在のペット火葬車は、軽バンやワンボックスバン、小型トラックのアルミバンといった車両をベースに、専用火葬炉を据え付けるような形態のものが多い。車両の大きさは基本的に据え付ける火葬炉の大きさに比例し、処理が可能なペットの大きさと関連する。車両に対して大きな改造を行うわけではないが、炉の構造上天井部には煙突を設置しなければならない。
湯灌ができる車両も製造されている
火葬炉の製造は、さまざまなメーカーがあってそれぞれ特徴をもっているが、灯油を燃料として使用するタイプがほとんどだ。
実際に、ペット火葬車の登場以降には、利用者との間でさまざまなトラブルが発生したことが報じられている。法的規制が追い付いていないことや、無店舗サービスで開業資金が少なくて済むことなどから、一部の心無い事業者が無責任な運営を行っている例もあるようだ。ペット葬儀業界でもこのことを憂慮し、業界団体を設立してサービス基準の均一化と、モラル向上を目指している。

また、行政も国の法整備の遅れをカバーするために、各自治体が地域事情に合わせた条例による規制を進めている。自治体条例の場合、営業の許可基準や申請方法が統一されないために、広域で営業を行う事業者にとっては煩雑になるが、消費者が安心して利用できるサービスとして定着するためには、ある程度やむを得ないことといえるだろう。
現在はペット火葬車だけではなく、ペット葬儀の一環としてペットの湯灌ができる車両も製造されている。これは小型トラックに作業場として拡張型(作業をする際にボックスを上に伸ばす)のボックスを搭載し、そのなかで湯灌作業が行えるようになっているものだ。ボックス内にはシンク型の作業台があり、電動ポンプでシャワーを扱えるようになっている。

火葬・湯灌の作業員にペットロスをケアする民間資格を取らせている事業者も多く、ペットの葬儀がパッケージ化されてひとつの市場を確立しつつあるようだ。大切な家族の一員であるペットの供養をしたいという思いと、経済的な負担軽減を両立させるためには、このような移動式ペット火葬・湯灌車輌を利用した事業が、有効であることは間違いないだろう。