この記事をまとめると
■3代目フィアット・パンダは2023年に日本国内で販売を終了している



■初代モデルはジョルジェット・ジウジアーロが手がけた



■欧州ではひとまわり大きなグランデパンダが発表されている



初代モデルは20年以上生産が続いた

フィアットというと多くの人がまず思い出すのは500だろう。歴史を辿れば1930年代生まれの「トポリーノ」に始まり、1957生まれのリヤエンジンのモデルは日本では「ルパン三世」の愛車としてもおなじみ。3代目は2007年にデビューしていまも販売が続いている(在庫がなくなり次第終了)し、2年前からは電気自動車の500eも加わった。



派生車種としてひとまわり大きなクロスオーバーの500Xもあり、その後継車として位置付けられたのは600eを名乗ってはいるものの、見た目は500eに似ている。フィアット=500とそのファミリーと捉える人がいても不思議じゃない。



その陰で、日本市場からひっそり姿を消したクルマがある。パンダだ。搭載していた900cc2気筒ターボのツインエアが生産終了となったことを受けての判断で、昨年の限定車パンダクロス4x4が最終モデルになった。500に負けない名車だと思っているひとりとしては、ずいぶんあっさりした幕引きだと感じたものだ。



巨匠ジウジアーロが「最高傑作」と自画自賛! 500に比べて影...の画像はこちら >>



なにしろ1980年にデビューした初代パンダは、カーデザイン界の巨匠、ジョルジェット・ジウジアーロ氏がバカンス返上で設計に没頭し、「私の最高傑作のひとつ」と公言しているからだ。このエピソードだけでも名車に値するのではないだろうか。



巨匠ジウジアーロが「最高傑作」と自画自賛! 500に比べて影薄だけどフィアット「パンダ」は偉大なり!!
フィアット・パンダ(初代)のフロントまわり



1970年代の後半、フィアットはリヤエンジンの500の跡を継いだ126に代わるベーシックカーが必要と感じ、ジウジアーロ氏にデザインを依頼した。シトロエン2CVやルノー4のような、安くて多目的に使えるクルマという要望もあった。



これに対してジウジアーロ氏は、スクエアな2ボックスで、ボディ下半分をグレーの樹脂で覆い、ガラスはすべて平面。内側にはハンモック構造のシート、カンガルーの袋のようなインパネを与えるなど、限られたコストのなかで最大限の楽しさを盛り込んだ。

これが多くの人に受け入れられ、20年以上にわたり作り続けられることになる。



偉大な初代モデルの個性を受け継いだ2代目モデル

フィアット自身もその偉大さは認めており、後継車にはジンゴという違う名前を与えた。デザインもノーズをスラントさせ、4枚に増えたドアの開口部をアーチ状にするなど違いは大きかった。しかし、ルノーからトゥインゴに名前が似ているとクレームが入り、フィアットはこれを2代目パンダとして売り出したのだった。



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フィアット・パンダ(2代目)の走行写真



最近まで販売していた3代目はこれの発展型だ。しかし、「スクワークル(スクエア+サークル)をコンセプトとしたデザインは2代目以上に凝っていて、インパネの助手席側をポケット状にするなど、初代を思わせるディテールも復活していた。



僕は自動車専門誌「ティーポ」の企画で、3世代のパンダを連ねて約1000kmを走破したことがある。飽きないデザインと回して楽しいエンジンに加えて、簡潔なのに素晴らしいシート、500よりマイルドな足まわりのおかげもあり、小さなボディからは想像できないくらい疲れなかった。



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フィアット・パンダ(3代目)の走行写真



パンダの系譜は完全に途絶えたわけではなく、欧州ではひとまわり大きなグランデパンダが発表されている。



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フィアット・グランデパンダのフロントまわり



初代を彷彿とさせるデザインは魅力的で、サイズは600eより小柄、価格もお手頃とのこと。日本導入を期待したい。

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